食の研究所
小暮 実(食品衛生アドバイザー) 2017年07月26日
鶏肉などを「生食」で食べるなどのブームを背景に、カンピロバクターという細菌を原因とする食中毒が増加している。
筆者は、東京都中央区保健所の元職員で、食品衛生監視員を長らく担当してきた。近年の食中毒発生状況の傾向を見るとともに、カンピロバクターによる食中毒の実態と対処法を述べてみたい。
厚生労働省のHPには、1996年から2016年までの食中毒発生状況が掲載されている。この統計から主な原因物質をグラフにすると図1のようになり、約20年間の食中毒の変遷を知ることができる。
図1:1996年から2016年までの原因物質別の食中毒発生状況。(参考:厚生労働省「食中毒統計資料」を参考に作成)
1998年頃には、サルモネラと腸炎ビブリオによる事件が年間800件を超えるなど流行していたが、2016年には、サルモネラ31件、腸炎ビブリオ12件と激減している。
サルモネラについては、鶏卵による事件が多発していたが、生産段階でのワクチン投与などにより汚染率が下がったこと、また、腸炎ビブリオについては、魚市場で使用する海水が清浄化されたことと、発泡スチロールと氷によるコールドチェーンが確立したことが激減の主な原因である。
これに反して、ノロウイルスとカンピロバクターによる事件数が増加していることがよく分かる。カンピロバクターは、生食ブームにより鶏刺し、鶏タタキなどの生食が増加したことがあり、1996年頃から原因物質として計上されるようになった。
1955(昭和30)年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒、雪印乳業(株)を経て、中央区保健所にて39年間食品衛生監視員として勤務。銀座、日本橋、築地などの飲食店や食品輸入業者の監視指導にあたり、多数の食中毒事件や違反食品の調査措置経験あり。現在、食品衛生アドバイザーとして活動中。
<記事提供:食の研究所>
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