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外食企業が狙うASEAN進出-現地採用に欠かせない各国の賃金比較

2018年02月19日

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飲食店の海外進出は年々拡大傾向にある。海外進出の課題としてよく話題にのぼってくるのが、現地での雇用に関することだ。なかでも、近年注目の高いASEAN諸国では、2010年ごろから進出企業が経営上の問題点として「従業員の賃金上昇」を首位に挙げている。そこで今回は現地でのスタッフ雇用に欠かせない、飲食業の賃金や伸び率をまとめてみた。

ASEAN諸国の賃金推移は全体的に上昇傾向

まずは、世界的にみても高いといわれる日本の飲食店の賃金と、ASEAN諸国の賃金の比較を行ってみたい。以下のグラフは各国主要都市で日系企業の運営する飲食店の、平均的な月額賃金の推移である。参考として、近年経済成長の著しい中国(北京)の賃金も示した。

日本の賃金は近年減少傾向、ASEAN全体は上昇傾向にあることがわかる。突出した高さをみせているのはシンガポールだ。毎年800~900ドル前後で推移している。また、中国は国全体の急激な経済成長にあわせて、5年で倍増している。 マレーシアが2012~2013年で極端な増減をみせているが、これは2012年に政府が最低賃金を定めたことで、飲食業の賃金も大幅な見直しが図られたためだ。

賃金の上昇は経済成長とともにあり

次に国別の1人当たり国内総生産(GDP)見通しをみてみると、2016年の各国の平均賃金ともおよそ呼応しており、賃金の上昇は、経済成長に伴うものであることがうかがえる。

国別の1人当たり国内総生産

現在1万ドルに届かないマレーシアの1人当たりGDPでも、2025年には1万7000ドルを超えると見込まれている。これら右肩上りの上昇傾向はバンコク(タイ)、ジャカルタ(インドネシア)、マニラ(フィリピン)などでもみられ、2025年には現在の日本の経済規模を超える国も出てくる見込みだ。

拡大するASEANの外食産業

外食産業の市場規模と成長見通し

さらにASEAN各国の外食産業の市場規模と成長見通しを比較してみると、注目されるのは、各国の年換算成長率の高さだ。最も高い水準にあるフィリピンは、今後も毎年8.3%の成長が見込まれている。

上昇傾向とはいえ、それでもASEAN各国の賃金は低い

最後に法定最低賃金とあわせて、日系企業が運営する他業種の平均的な月額賃金とも比較してみよう。

職業別賃金比較

ベトナムとラオスでは飲食業は法定最低賃金とほぼ同額であり、インドネシアでは法定最低賃金を下回っている。日本で飲食業の賃金が法定最低額を下回っているのは、時給を月額に換算したためだが、それでも飲食業の賃金はその他業種と比べて低い。しかしASEANと比較すれば依然として高額だ。最も賃金が低いミャンマーと日本では、単純に計算すると約17倍以上の開きがある。

ASEAN各国では、今後もさらなる賃金上昇の傾向は続くとみられるが、市場規模の成長を見込めば進出のメリットは十分あるといえるだろう。進出先や進出形態をじっくり検討し、最適な進出をはたしてもらいたい。

※記事中の表はジェトロ資料よりインフォマートが作成

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