企業インタビュー

青島でパン食文化を普及!九州の製パン企業(法蘭索亜(青島)有限公司)

2013年12月24日

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福岡県の老舗製パン企業として、九州を中心に展開している、株式会社フランソア様。元々、日本輸出向けの弁当用食材を製造するため、中国青島へ進出し法兰索亚(青岛)有限公司を設立されました。その後、中国でのパン食ニーズにいち早く気づき、今では青島で8店舗を展開されるほどに。今回は中国進出後の苦労話や、今後の中国ビジネスの可能性について伺いました。

【Q】日本での事業概要をお教えください

1951年に創業した株式会社フランソアの中国法人です。日本国内では九州を中心にパンやスイーツ、弁当、惣菜、麺の製造(5工場)・販売(7営業所)、直営店(46店舗)を展開しています。

【Q】現在の中国事業の概要をお教えください

2004年より、山東省青島地区にて、約300のパン・ケーキ・洋菓子などを製造販売しています。現在は1工場、8店舗を展開していますが、2014年上期までには11店舗まで増やす予定です。また、2014年6月頃には新工場も稼働予定で、現在の約2.5倍の製造が可能になります。

【Q】元々、中国ではパン事業を展開されるご予定だったのですか?

最初は日本へ弁当の食材を輸出するため、青島に事務所を構えました。ところがある時、当時のジャスコ青島店様の総経理と弊社現地事務所の駐在員が小学校の父兄参観で出会い、その際、おいしいベーカリーを探しているというお話を伺いました。そこから話が急展開で進み、弊社直営のパン屋1号店がジャスコ青島店様の中に誕生したんです。

【Q】進出当初で多かった苦労は、どういったことですか?

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店内はいつも大混雑!

中国ならではという意味では、法制度の部分で苦労しました。中国では関係当局より製造許可証を取得しないと食品を製造及び出荷が出来ないのですが、最初弊社はそれすら知らずに事業をスタートさせようとしていました。製造許可証は調べれば調べる程、手続きを進めれば進める程、簡単に取れるものではないことがわかり、当時は大変苦労しました。

独資で進出したので頼れるビジネスパートナーもいなくて、情報収集量が極端に少なかったです。その後は関係当局の担当者と細かくコミュニケーションを取り、1から中国の規定を学ぶ所から進め、現在ではずいぶん詳しくなりました。
中国でビジネスを進めていく上では必ず必要なやりとりであり知識だなと学びました。

また中国の経済発展は日々すごいスピードで進んでいます。新しい法律、条例が日々公布され、そのため法解釈が追いつかず、理解が難しい場合があります。その場合も担当者とのコミュニケーションにて解決していきます。ですので担当者とのお付き合いはとても重要になるので、担当者が交代すると本当に大変なんです。

【Q】その他、食の法制度で困られたことをお教えください

店舗を展開する上でも法律の解釈が違ったりします。例えば、2009年頃に食品安全法が改正され、現場で製造して現場で販売するという事業に関しては、「レストラン許可証」を取って運営するという内容へ変更されました。中国の食に関する許可証は「製造許可証」、「レストラン許可証」、「流通許可証」の3種類があるのですが、この時パン屋がどれにも当てはまらないという状況になってしまいました。その結果、路面店展開は断念することになったのです。

これに類似することはいろいろなところであるようで、現は各地方・担当者の方が経済の実情に合うように解釈を工夫しているという状況です。

【Q】中国では従業員の管理が難しいという話をよく聞きますが、気をつけられていることはありますか?

どうやって、従業員のモラルを上げるかが一番難しいと思います。弊社でも、モラルが欠如しているスタッフに至っては、商品を持って帰ってしまうということがあります。持って帰ること自体が悪いのは、誰でもわかっていますから、なぜ持って帰ってしまうのかを考えました。

そこで弊社では、「良いモノ作りをする」という気持ちを高く持ってもらえるように、コミュニケーションを積極的にとるようにしています。良いことはちゃんと褒める、悪いことがあったら指摘をするという、日々のやりとりを大切にするのです。コミュニケーションが積み重なってくれば、従業員の仕事に対する気持ちも前向きになり、「良いモノ作りをする」ということも理解してもらえるようになってくると感じています。もちろん、意識の問題だけではなく、日々の在庫管理をしっかりすることや、日常業務のルールもちゃんと決めておくことも大切です。

【Q】中国でのパン作りにおいて、一番難しいと思うことは何でしょうか?

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日本の味の再現にこだわります

弊社は、「日本のパンを中国の方にお届けする」というコンセプトでパン作りをしています。日本の味がうまく再現できない場合は、トコトンこだわり、なんとしてでも再現するというのが方針です。

クリームやジャムなどは、中国で販売されている既製品では日本と同じ味が再現できない場合も多いです。例えばイチゴジャムであれば、原料の仕入れからジャム作りまで、すべて自社で行っています。結果、日本の商品よりおいしいんじゃないかな、と思ってしまうこともあるぐらいですよ。

【Q】貴社が進出した当時、中国でパン屋さんというもの自体には馴染みがあったのでしょうか?

中国には面包(ミエンバオ)というパンに似た食べ物が昔からありますが、弊社が提供しているパンとは全く違い、食事というより、おやつの延長で食べるような、お菓子に近いものです。パン自体に馴染みはなかったのですが、弊社はあえて面包(ミエンバオ)とは一線を画し、製造技術や商品開発に力を入れてきました。お陰さまで、食べてもらえれば中国の方にもおいしさをわかってもらうことができました。1号店から好調なスタートを切ることができ、青島を中心に我々のパンを徐々に広めることができていると思っています。

全体的には順調に伸びていますが、苦戦している店舗もあります。中国の場合、特に少し地方に入ったりすると、パンを食べるということが根付いていません。そういった地域での販売は、まだまだこれからです。

【Q】中国人の消費行動について、特徴的なことはありますか?

特徴は2つあります。1つはまとめ買いが多いことです。一度に家族全員分を買っていくようで、弊社のパンの場合、トレーに3段も4段も積んで購入されていく方も、たくさんいらっしゃいます。

また、二つ目の特徴としては、商品自体を認知すると簡単には他の商品に浮気をしないということです。最近の青島では、パンを取り扱う店舗も増えてきていますが、近くに競合店が出来ても弊社の売上が落ちることはほとんどありません。味をちゃんとご理解いただけているのだと思います。

【Q】中国山東省のビジネスの特徴はございますか?

中国も北部と南部ではお金の使い方が違うという話をよく聞きます。北部と比較すると、南部の方がお金を使うことを楽しんでいるように感じます。例えば、週末は朝から家族でレストランで飲茶をして、そのまま昼食ということも普通のようです。また、北部に位置する山東省は、これまで製造基地として日系企業の進出が多かった地域ですが、最近では消費マーケットとして進出して、飲食店などのサービス業の出店が増えてきています。

しかし、まだまだサービスの部分が欠けていて、レジで店員がお釣りを投げつけてくるというようなこともあるようです。中国では接客業という業種自体、なかなか人が集まらないため、接客術を教えていくことには難しさがあるのかもしれません。

【Q】日系外食企業の進出についてはどうお考えですか?

流行的な感覚で中国に進出することにはあまり賛成しません。食生活というのは、簡単に変えられるというものではないと考えているからです。流行にのって、2・3年だけ売るということであれば、できるのかもしれませんが、本当に中国でやっていこうと思うのであれば、その土地の食文化・食生活をよく研究する必要があります。

中国では、麺を食べる地域もあれば、米を食べる地域もあるように、地域によって食生活が異なります。地域ごとにどういう食文化があり、どんな味が好まれるのかということを、しっかり分析していけば、5年・10年と事業を続けていくことも可能だと思いますよ。

【Q】中国で仕事するにあたり、大変な点や良い点はありますか?

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お話をお伺いした伊名岡様

一番大変なのは体調管理だと思います。外国なので、食べ物も日本ほど高品質ではないですし、ストレスも非常に大きいです。スポーツをしたり、趣味を持つなど、ストレス発散は大切だと思います。周りを見ても5年以上駐在している人は、どこかしら身体にガタが来ています。それに、体調を崩しても頼りになる病院もないので大変です。

また、逆に良いなと思っているのは、大きい仕事ができることです。私は今年35才になりましたが、200名もの会社を率いて、新工場の建設や店舗展開を任せていただいているので、非常にやりがいを感じています。

法蘭索亜(青島)有限公司

1951年より、佐賀県にてパンの製造販売をスタートした食品メーカー。
2004年に中国・青島へ進出し、現在は中国にて工場1件と路面店8店舗を運営中。
2014年もさらなる多店舗展開を目指している。

業種:パンの製造・販売 店舗数:1工場・8店舗 従業員数:200名
本社所在地:青岛市四方区清江路6号外贸工业园2单园5楼
お話: 総経理 伊名岡 氏

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