アンケートでわかった進出のヒント
鷲澤 圭(株式会社Resorz) 2016年06月28日
13億人強という世界第一位の人口を抱え、世界の工場から世界最大規模のマーケットに変容しつつある中国。その市場の大きさは日本企業にとって魅力的です。
一方で、世界同時株安を引き起こした上海株式市場の暴落など、経済的なリスクも挙げられています。中国に進出する日本企業は、何を求め、市場へ飛び込んでいくのでしょうか。本コラムでは、海外進出企業へのインタビューとアンケートをもとに、中国への進出を成功させるための条件を浮き彫りにします。
中国へ進出した理由について、各企業へのインタビューを見ていきます。
国内外で物流事業を手掛けるインターナショナル エクスプレス株式会社は、1994年に中国・上海へ進出しました。当時、世界の工場になりつつあった中国では、現地日系工場から日本への輸出量が増え、日系物流会社の需要が高まっていました。同社では、上海への進出後、青島、大連と事務所の数を増やしていったと言います。
近年では、中国国内の人件費と物価が上昇しており、日系企業の工場もより安価な内陸部や第三国へ移ってきています。その影響で「中国は世界の工場から世界の市場へと変化しつつあり、今後は輸入も増えてくると予想されます」(尾木茂男経理)と、中国進出の魅力が、製造拠点から市場に変わったと答えています。
また、漬物・福神漬のしんしんで知られる株式会社新進は、日本国内の市場縮小から海外の市場開拓を目指したと答えています。日本向けの製品の生産拠点があった中国を市場ととらえ、「2010年3月に中国での販売会社・青島新進三通商貿有限公司を設立し、同年9月から中国での販売を始めています」(渡辺将康営業部部長)と、生産から販路拡大へと中国でのビジネスを発展させています。
このように中国へ進出する理由は、生産拠点としてではなく、販売を見込んだ市場として近年大きく変化しています。それを補足するデータとして、海外進出支援サイト「Digima~出島~」が相談を受けた企業に行った「海外進出を検討した主な理由」についての調査データがあります。
出典:『Digima~出島~ 海外進出白書』(2015-2016年版)
海外進出の目的として、半数が「販路を拡大するため」を挙げています。「自社商品(サービス)の需要が高いため(12%)」と合わせると6割を占める企業が、販路拡大先の市場として海外進出を検討したこととなります。
一方で、これまで海外進出の理由として上げられることが多かった「コスト削減」という観点では「人件費の削減のため」及び「生産コストの削減のため」の回答を合わせても14%に留まりました。これは、日本企業の海外進出の流れが大きく変化していることを感じさせる結果です。近年、中国では人件費や土地代が上昇を続けており、この傾向は更に顕著と言えます。
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株式会社Resorzのメディア事業編集長。同社が運営する海外進出・海外ビジネス支援サイト「Digima~出島~」の記事執筆から編集、運営までを担当する。大学卒業後、株式会社PHP研究所にてビジネス本の編集に携わる。日本企業の海外進出に興味を持ち、海外進出支援事業を行う株式会社Resorzへ入社した。
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