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テナント出店に失敗しない3つのポイント-中国・上海の商業モール事情

川添 英起(株式会社リバーサイドシンク)  2016年04月12日

近年、景気減速が心配されている中国ですが、依然、約13億人という世界最大の人口を抱える巨大市場であることは変わりません。その巨大市場を狙い、2016年以降も多くの商業モールの建設が予定されています。日本企業の中にも、中国への進出・出店を検討されているところも多いのではないでしょうか。

しかし、中国と日本の商業モールでは、集客や運営方針に大きな違いがあるため、日本の感覚で出店を決めてしまうと、期待した売上や効果が見込めない場合もあります。そこで、中国の商業モール事情を解説するとともに、その特徴を考察していきます。

上海最大の商業モール

中世ヨーロッパ風のデザインで人気のある「月星?球港」

中世ヨーロッパ風のデザインで人気のある
「月星环球港」

中国の商業モールは「建物先行」であり、オープン時に100%テナントが決まっているケースは多くありません。いわゆる「見切り発車」の状態で、オープン後、半年以上経っても区画が空いている場合もあります。

そんな中、テナントが100%近く決定した状態でオープンした商業モールがあります。2013年7月に、上海北西部の金沙江路駅前にオープンした、上海最大規模の商業モール「月星环球港」です。その規模は、48万㎡にもおよび、中世ヨーロッパ風の荘厳な建物と、美術館を思わせるような壁画、豪奢な内装は目を見張ります。このモールはオープン前から注目を集め、今でも非常に盛り上がっています。

中国のモールに出店する際の3つのポイント

月星环球港は、成功するだろうと予測していましたが、私が日本企業の中国出店の支援を始めた2008年頃は、モールの良し悪しの判断がまったくつきませんでした。集客は期待できないと判断したモールが、数年経つと上海でも屈指のモールになっていたり、逆に期待していたモールが思いもよらず不調であったりということもあります。

試行錯誤を経て、ようやく中国・上海のモールに出店する上で留意するポイントがわかるようになりました。今回は、3つのポイントを上げて、解説したいと思います。

ポイント1 モールの成否判断には時間が必要

上海浦東地区で集客力がある「正大広場」

上海浦東地区で集客力がある「正大広場」

私が一番初めにテナント誘致でかかわった商業施設は、上海最大のオフィス街、浦東・陸家嘴地区に位置する「正大広場」です。タイ資本のCPグループが運営するモールで、日本でも有名な東方明珠テレビタワーの真向かいにあります。地下に大型スーパーマーケットが入る、地下3階、地上10階の総面積24万㎡の大型商業モールです。

オープン当初はまったく人の流れがなく、薄暗く、ところどころ未入居の店舗が散見される状況でした。私は日本の商業モールでの経験から、このようなモールは失敗だと思い、誘致話が来てもすべて断っていました。しかし、1~2年経過した時点で、同地区の開発とも相まって徐々に集客力を伸ばし、今は上海・浦東地区では最も人が入る商業モールになりました。

日本の場合は、オープンして少なくとも1~2カ月の間に集客ができないと、モールとして失敗のレッテルが貼られると思いますが、中国のモールはそうではありません。モールの成否判断には、長い期間が必要です。したがって、新規で開業するモールへの出店を考える際には、かなり綿密な分析と予見性が必要です。

執筆者プロフィール

川添 英起(株式会社リバーサイドシンク) 

中央三井信託銀行で法人融資業務を中心に担当。退職後、株式会社三機サービスに取締役として入社し、株式上場および営業本部業務を担当する。その後、同社の中国法人の設立、運営に従事。並行して、株式会社リバーサイドシンクの代表取締役に就任し、経営戦略、中国進出コンサルティングを手がける。

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