業界動向
ヘレン 2015年03月19日
2014年12月16日、「くら寿司」が台北市にプレオープンしました。以前のレポートでも紹介したとおり、寿司は台湾の日本統治時代から受け継がれた食文化で、大衆化しています。現地の回転寿司チェーンもあるのですが、日本の寿司チェーン店ではオープン第一号となります。そして、それに合わせるように台湾の最大手寿司チェーン「争鮮(ゼンシェン)」は、数ヶ月前から主要な店舗を改装していました。
リニューアルオープンした争鮮のチラシと、
キャンペーン価格のサーモン
台北市の中心地にある争鮮の伊通店は、12月12日の寒い中、改装オープン。旗を立て、出店を出し、ハッピを着た店員が大きな声で呼び込みをしていました。店内での接客も良く、大きな声が飛び交い活気がありました。
「争鮮」は玉子でもウニでもイクラでも一律2貫30元(約112円)という価格設定のお店ですが、その日は特別にサーモン握りを3貫30元で提供。翌週は貝柱、その次はイクラとネタを変えてプロモーションを続けるとのことでした。専用のチラシまで作り、なんだか今までと意気込みが違う様子です。
「争鮮」の売上高は、年間約40億元(約150億円)といわれています。中国や米国、シンガポール、香港にも進出しており、台湾には約200店舗ほどを広げています。地下鉄駅出入口、地下街、駅周辺の繁華街などの良い立地に出店しており、向かうところ敵なしでした。
こんなことを言っては失礼かもしれませんが、そのためか、お店の中に緊張感がないように感じました。「いらっしゃいませ」の声も飛ばない、笑顔のサービスもなし、お勧めもなし。態度が悪いわけではありませんが、接客されている感が乏しかったです。しかし、ここにきて、並々ならぬ緊張感を抱き始めている、というように感じました。
実は、「争鮮」の伊通店と「くら寿司」1号店となる松江南京店は300mと離れていないのです。今まで「争鮮」に行っていたお客様は、必ず「くら寿司」に足を運ぶでしょう。そして味、値段、サービスなどあらゆることを比較されることになります。そんな競争に勝ち抜こうとする台湾の寿司チェーン店の新たな決意が、店舗改装やサービス向上、お得感強調に感じられるのでした。1代で回転寿司事業を大きくした陳津秋社長は、日本からの大手寿司チェーン店の台湾進出をかなり敏感に感じ取っているようです。
対する「くら寿司」は、台湾で一挙に3店舗展開とのこと。投資額も大きいが、回収も早いと見たのでしょう。考えることが合理的で規模が大きいです。オープン前の店の暖簾には、1皿「45元(約167円」と書かれており、オープンを心待ちにしていました。
一階の待合室では順番待ちのディスプレイに順番が示される
12月17日、お昼時12時半にはすでに満席。待つこと1時間、ようやく入店。繁体字、日本語、英語の三ヶ国語でくら寿司のシステムをわかりやすく紹介する「ご利用ガイド」を渡されました。驚いたことに、価格が1皿「40元(約150円)」に変更されていました! 短期間によくパンフレットなどを変更したという思いと、現地の価格設定は非常に難しく、最後の最後まで悩みに悩んで決断されたのかもしれないと思いました。外国でお店を出すのは、本当に大変です。
お店の中に入ると、広いフロアに日本さながらの『くら寿司ワールド』が広がっていていました。タッチパネル式のオーダーシステム、列車デリバリー、食べ終わったお皿5枚につき1回挑戦できるガシャポン「ビッくらポン」(当たりが出ればくら寿司特製のストラップがもらえます)もちゃんと用意されています。このようなアミューズメント感(娯楽感)のあるお店は台湾では珍しいから、皆、好きだろうなーと感心。
席に着くと、お店の方が、お皿の取り方から、オーダーの仕方を懇切丁寧に説明してくれました。40元、80元のネタが回り、目移りしながらいだきました。1日目から目の回るような忙しさの中、皆、声が出ており、日本語が飛び交い、よく教育されている印象を受けました。経験に基づいた自信と確固たる勝組方程式が組まれている「くら寿司」でした。
プレオープンした松江南京店は12月30日に正式オープンとなり、残る2店舗も2015年に順次オープンとのことです。台湾寿司チェーン店との競争はまだ始まったばかり。2015年2月現在毎日満席で、予約はいっぱい、外には長蛇の列ができています。予約なしでは入れるようになるのは半年先でしょうか。今後の動向に、目が離せません。
東京生まれの日本人。日本で会社員生活を経たのち、台湾人の夫と結婚して、1997年より台湾生活を開始。
子育ての傍ら、日本と台湾に関連するビジネスを起業し、「ビジネスセンター」設立準備にも従事。現在、日本語対応の強みを生かし、台湾における会社設立の相談をはじめ、企業の台湾進出をサポートする。
本コラムでは、16年間に及ぶ台湾生活で経験した台湾の変遷、商習慣、生活情報などを現地目線で紹介予定。
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