業界動向
山崎督(株式会社朝日広告社 国際部) 2015年02月20日
ベトナムでは次々と大型商業施設が建設され、国内には現在、ショッピングモール約150店舗、スーパーマーケット約800店舗、コンビニエンスストア約1,200店舗が展開されています。
その一方で、市場がまだまだ庶民の台所としても機能している一面もあります。その理由として、スーパーより「市場や小規模店舗」のほうが、値段が安いことが多いことが挙げられます。しかし一方では、共働きの多いベトナム家族が、週に一回大量購入するという用途でスーパーを活用するケースも増えてきています。
また、現在ベトナムは物価急上昇中であり、スーパーマーケットも大衆食堂も路上のバインミー屋も、年々どころか数ヶ月単位で値段の変更をしている印象をうけます。
品揃えに関していえば、生鮮食品に関しても豊富で、最近は日本の調味料、酒類、菓子類も、簡単にスーパーマーケットで入手できるようになっています。
今後は、価格差の収れんや品揃えの違いなどから、ショッピングモールやスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの活用が、割合として大きくなっていくことが予測されます。当然、小売業者の争いは苛烈なものになっていくでしょう。
日本のイオンは数年がかりの準備の末に1号店を開業しましたが、現在ベトナムのスーパーマーケット業界を牽引するのは、「コープマート」(ベトナム)、「ビッグC」(フランス)、「メトロ」(ドイツ)の3社となります。この3社を中心に、20社程度の外資企業と多数の現地企業がしのぎを削っている形になります。
今回は、こちらの3社とイオン、市場、地場小型店の特長についてまとめてみます。
コープマート
現地資本の「コープマート」
現地資本のスーパー「コープマート」はチェーン店なので、ホーチミンのいたるところで見ることができます。国産スーパーとあって、ローカル色が濃いのが特徴です。
店舗によってはフードコートが設置されており、フォー、バインセオ、生春巻きなどベトナム料理の定番が食べられます、値段もレストランよりも割安です。
コープマートで買い物をする場合は、持ち物預けカウンターでバッグやリュックは預けなければなりません。番号札を貰えるので、なくさないようにしてください。これは盗難防止用であり、ベトナムでは盗難に対してこうした対策をとるチェーンが多いです。
また、余談ですが、レジ前で順番に並んでいると、ベトナム人が横入りしてきます。庶民派スーパーならではの光景ですが、混雑時はいつまでたっても買えなくなってしまうので、注意しましょう。
ビッグC
フランスのカジノ・グループとタイのセントラル・グループの合弁企業が経営しており、品揃えも多く低価格であることから、特に若者に人気があります。ここ数年で出店ペースが加速しています。商品の包装も近代的で衛生状態が高く保たれているためか、カットフルーツなどの賞味期限が1週間以上あることもあります。
メトロ
Metro Groupはドイツ最大の小売業者です。2002年に初出店と、ベトナムに進出するのも非常に早かったです。しかし、2014年にベトナム事業をタイの商社、ベルリ・ユッカーに売却すると発表し、ベトナム小売業界を驚かせました。
イオン
2014年1月に1号店が、11月に2号店がオープンした
「イオン」
日本のショッピングモールとしてアジア事業を推し進めているイオンですが、ベトナムにおいては、まだ上記3社には及ばず、韓国の「ロッテマート」、マレーシアの「GIANT(デイリーファーム)」と競う形になっています。
ロッテマートは「現地化」のため、ハイパーマーケットでも、入口は生鮮食品からスタートせず、あえて雑貨からスタートしています。これは、「コープマート」のレイアウトによく似ています。
現地のスーパーマーケットをよく研究して、「コモディティ型(非差別化)」を選択したのではないかと推測されます。
一方のイオンは、日本に見られるスーパーマーケットと同じレイアウトをしています。どちらの戦略が功を奏するかに関しても要注目といえるでしょう。
ペンタイン市場
2,000坪もあるような大型市場のレイアウトは、四分の一が生鮮食品、残りが乾物、雑貨、衣料品、化粧品、みやげ物という構成になっております。こちらが市場の黄金比率と呼ばれるもので、前述のコープマートやメトロ、ジャイアントもこの「黄金比率」に近いレイアウトを取り入れているようです。
また、カニ専門店、内臓専門店などが存在し、独特の雰囲気を生み出しています。
シティマート
最後に、ベトナムの地場企業で、都市型小型ショッピングモールである「CITIMART」をご紹介します。都市型小型ショッピングモールチェ―ンではナンバーワン企業です。
日本の都市型小型ショッピングモールである「まいばすけっと」「マルエツプチ」などもベトナム参入を決めており、この業態の今後にも注目です。
(※イオンは2015年1月27日、地場スーパーマーケットチェーンのフィビマートとシティマートとの間で、資本・業務提携に合意したことを発表しました。2社との資本・業務提携は、ベトナムにおけるイオングループの強固な事業基盤構築を目的とするものとしており、ベトナムをマレーシアに次ぐ大きな海外拠点へと成長させていく戦略の表れとなっています)
矢野経済研究所、グレイワールドワイド(米国系広告会社)、DDBジャパン(米国系広告会社)、アサツーDKなどを経て、2005年より朝日広告社にてマーケティングディレクターを担当。2011年より国際部 部長を務める。
調査と独自取材に基づき、ベトナムの食生活について執筆する。
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