企業インタビュー

3年で10店舗、はなまるうどんの中国展開を聞く(はなまるうどん~中国)

2014年07月08日

今回は、中国で直営店10店を運営するうどんチェーン大手「はなまるうどん」に伺いました。従業員教育やローカライズメニューについて話を伺いました。

【Q】中国で事業を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

2010年上海万博に出展したことがきっかけです。お誘いを受け「中国でうどんが喜ばれるのか?」というリサーチの意味も含めて出展しました。上海万博でのお客様の反応を見る限り、うどんが中国で受け入れられる可能性は十分にあると感じ、本格的に出店を決めました。

【Q】注文の仕方など日本の仕組みと変えているところはありますか?

セルフサービス業態の仕組みは基本的に日本と同じです。しかし、日本のモデルをそのまま中国でやろうとしたことも反省すべきポイントの一つだと考えており、客席で注文を受けるフルサービス業態の店舗も最近オープンさせました。

「我々がセルフ業態の強みだと考えていたことが、中国で本当に強みになっているのか?」という前提すらも疑う必要があると考えています。例えば、セルフサービス業態の強みの一つとして、提供スピードの速さが挙げられますが、「中国のお客様は速さを求めて我々の店舗に来られているのか?」「本当はゆっくり食事をしたいというニーズの方が強いのであれば、セルフサービス業態の持つ速さは中国では強みにはなっていないのではないだろうか?」こういった仮説を検証することも、新しい業態にチャレンジする目的の一つです。

この広大で多様な中国市場は、単一業態で多店舗化に成功するほど甘くはないと考えています。テーブルサービスのノウハウを社内の経験知として蓄積し、メニューも変えて、今後の市場のニーズに対応できるようにしていきたいです。

【Q】中国で人気のメニューはなんですか?

今、一番売れている「特製酸辣牛肉うどん」

今、一番売れているのは「特製酸辣牛肉うどん」です。2番目が「特製豚骨うどん」であり、いずれも豚骨スープがベースのだしを使用しています。あっさりした「かけだし」だけでは中国人のニーズに対応しきれてないのでは?日本から持ち込んだ「かけだし」や「つけだし」以外に現地の嗜好によりマッチしただしが必要なのでは?という仮説を基に開発した商品です。日本人的にはうどん屋としてありえないメニューだと思いますが、中国では一番うけがよいです。

現在では「豚骨だし」カテゴリの販売構成比は50を超えていますので、来店されたお客様の二人に一人は「豚骨だし」を召し上がられています。今後も現地の嗜好を捉えるという意味でメニューの現地化を進めていきたいと考えていますが、「かけだし」や「つけだし」、「麺」は日本品質を目指します。守るべきものと現地化を進めるものの2本立てで進めます。

【Q】これまでの中国での店舗展開で苦労されたことを教えてください。

2011年に1号店をオープンし現在直営のみで10店舗ですが、実はこれまでに5店舗(上海2、寧波1、成都2)の閉店も行っています。「中国は地域ごとに嗜好も違えば、客層も非常に幅広い」ということは頭ではわかっていたつもりですが、認識が甘かったです。ついつい、日本と同じような感覚で出店の意思決定を行ってしまいました。日本では全体を把握しようとする際に平均値を用いる場合が多いですが、平均値が必ずしも実態を正しく示さないという認識に欠けていました。所得の平均値などはその典型であり、ちょっとした地域の違いで消費力に歴然とした差があることを痛感させられました。平均値=多数派という思い込みが強かったことは大きな反省点です。

また、全店同じ品質で運営することに難しさを感じています。お店を増やすにつれ、店舗ごとの従業員の教育レベルに差が生まれてしまい、サービスや商品の品質にばらつきが出てしまいました。お客様は自身の経験された一番低いレベルの状態を基準にして店舗の評価を決められることが多いです。また、同様に一番低いレベルの店舗を基準にしてチェーンを評価しがちです。多店舗化に成功するかどうかは、このブレをいかにして減らせるかだと考えています。そのために、現在従業員教育には力を入れています。企業価値の向上には理念浸透を軸とした人材育成が必要不可欠であると考え取り組んでいます。

【Q】従業員教育について教えてください。

はなまるうどんの中国での従業員はほぼ100%社員です。とくにサービス面の、日本のおもてなしの精神を含め、研修、OJTで徹底的に教えます。

幹部候補として年に1-2回、選抜メンバーを日本で研修させています。本場の讃岐うどんを体験してもらうため、香川県高松市にうどんツアーに行くこともあります。店舗実習では、日本語ができなくても「仕事がよくできる」と日本人スタッフからの評価が高いですね。

【Q】2012年に起きた反日デモの影響を感じることはありましたか?

日本ではテレビなどで連日報道されていたようでしたが、実際のところ店で破壊被害などはなかったです。半年ほど10%程度売上げが落ち込みましたが、今はもうまったく影響はありません。

【Q】中国での商習慣について教えてください。

人と人との繋がりが強く、人脈の重要性が日本より高いように感じますね。例えば一緒に食事するなど普段から交流を深めていかないと、キーマンと交渉できないし、家賃なども高い条件で提示されてしまいます。契約社会ではありますが、交渉でどうにかなることも多いです。

【Q】食材・機材はどのように調達していますか?

1号店オープン時は材料の日本輸入比率が高かったのですが、現在はほぼ中国国内で調達しています。機材も製麺機を除いて中国国内で調達しています。

【Q】今後の出展計画について教えてください。

はなまるうどん上海虹橋尚嘉中心店

はなまるうどんは2016年度までの3カ年で海外50店舗展開を目指しています。現在海外で店舗展開しているのは中国だけですので、中国の成功なくして海外50店舗は達成できないとも考えており、中国の目標は2016年度30店舗以上です。今年は出店を抑え、新しい出店形態の開発や、既存店のブラッシュアップを進めて、来年度以後の出店再加速への下地を作っています。

【Q】中国市場についてどのような可能性を感じていますか?中国進出の魅力を教えてください。

中国市場の成長は鈍化すると言われていますが、今後世界の中での影響力が小さくなることはおそらくないでしょう。また、鈍化しつつも中国市場の成長は続くでしょうし、日本の市場縮小が避けられないのも事実です。もはや、中国の消費市場を無視することはできません。中国で事業を拡大していくことは容易ではありませんが、グローバル化に対応して生き残れるだけの資質があるかどうかを問われている気がします

はなまるうどん

中国でのうどん店「はなまるうどん」の展開を手がける。現在直営で10店。

企業名(中国語):花丸餐饮管理(上海)有限公司
本社所在地:上海市闸北区梅园路228号企业广场1210室
業種:外食 店舗数:10(2014年6月末時点) 従業員数: 130名
取材担当者様氏名:浅野節也 副総経理様

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