業界動向

もう手抜きとは言わせない!ここまで進化した冷凍食品。メーカーによる商品開発最前線

2022年05月18日

ここまで進化した冷凍食品。メーカーによる商品開発最前線

2020年8月に「冷凍食品は手抜きなのか」という論争がSNSで勃発した。

以前から、冷凍食品を食卓に並べることに抵抗がある消費者は少なくない。しかし、コロナ禍をきっかけに冷凍食品の購入者は増えている。自宅で過ごす時間が増え、調理の時短目的で冷凍食品が重宝されているかと思いきや、それだけが理由ではないようだ。冷凍食品の市場動向とともに、進化し続ける冷凍食品の魅力について紹介していく。

冷凍食品は手抜き?手間抜き?論争について

冷凍食品の手抜き論争は、2020年8月4日にツイッター上に投稿された、ある女性の嘆きが発端となっている。夕食に冷凍餃子を出したところ、「おいしい」とよろこぶ子どもを尻目に夫が「手抜きだよ。これは冷凍食品っていうの」と発言したというのだ。

この女性の投稿には、さまざまなコメントが寄せられ、一躍話題になった。中でも味の素冷凍食品株式会社の公式ツイッターアカウントが「冷凍食品を使うことは、手抜きではなく、“手間抜き”です」と投稿したものには44万いいね!がつき、注目を集めた。

毎日の献立を考え、家族に料理を振る舞う主婦の中には、食卓に冷凍食品を並べることに対して後ろめたさを感じる人も珍しくないだろう。レンジでチンするだけで食べられる冷凍食品はお手軽だからこそ、「手抜きしたのではないか」という罪悪感を抱くのだ。そこで、同社では「冷凍食品は手抜きではない」ということをPRする動画を作成した。

おいしい冷凍餃子の作り方~大きな台所篇~

動画では冷凍餃子に使用されるキャベツを契約農家から運ぶところから、肉のブロックをミンチにしてほかの具材と合わせていくといった144の工程を紹介。複数の従業員や、食材の生産者の手が加わって餃子が作られる過程を見せて、手間を可視化したのだ。

冷凍餃子論争の一カ月前には、スーパーの総菜コーナーでポテトサラダを手にした主婦に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言った老人がいたというツイートも注目を集めた。こうした「手作りじゃないと、食卓に並べてはいけない」という無言の重圧が根強く残っている日本社会だが、メーカーの商品開発とコロナ禍の巣ごもり需要で冷凍食品の市場は拡大しているという。次の章で詳しく紹介していこう。

巣ごもり需要による冷凍食品市場の拡大。多くの人が美味しさで冷凍食品を選択

一般社団法人 日本冷凍食品協会は、令和4年2月に冷凍食品の利用状況を全国の25 歳以上の男女 1,250人を対象に調査した。その結果、コロナ禍で冷凍食品を利用し始めた人が大幅に増加し、継続して利用していることが明らかになった。

同協会によると冷凍食品の利用頻度が 1 年前より増えたと回答したのが女性 25.1%、男性は 19.7%となり、ともに利用頻度が減った割合(同順3.0%、2.9%)を大きく上回った。さらに冷凍食品の魅力は、味のおいしさと回答したのは女性 55.0%、男性 58.1%で、男女とも4年前より11ポイント増加した。冷凍食品がおいしいと答えた割合は、増加傾向にあることがわかる。

冷凍食品を購入する理由は、男女とも「調理のしやすさ」に次いで「おいしさ」が挙がっている。

従来の冷凍技術だと解凍時に鮮度や栄養素が損なわれ、味にも少なからず影響があったが、各メーカーの技術の進化により長期保存が難しい魚介類や肉類などの新鮮さが保たれて、作りたてかのような料理を提供できるようになったことも影響しているのかもしれない。

また、昨今の環境配慮への意識の高まりから、冷凍食品のパッケージも紙製品にしようとする取り組みも行われていて、従来の冷凍食品が持つイメージが徐々に変容していると考えられる。

鮮度や栄養を損なわない「プロトン凍結」とは?

コロナ禍で冷凍食品の需要が増加したことから、食品業界では従来の冷凍食品のイメージを大きく覆すような商品が展開されている。冷凍食品というと普段の食卓におかずを一品プラスするような使われ方が一般的だったが、最近では1食分を丸ごと冷凍したものが販売されていて、さらに、栄養面も考えられた商品も多数あるためバランスの良い食事がまかなえる。

一流シェフが作ったかのような味を再現した冷凍食品には、最新の冷凍技術「プロトン凍結」が使われているものがあり、大手百貨店などでは人気商品として扱われている。従来の冷凍方法だと、細胞内の水分が凍結するときにできる氷の結晶が細胞組織を破壊してしまうため、解凍時に旨みや、栄養素を逃してしまうのが懸念点だった。そこで、「磁力」「電磁波」「冷風」の3つの力を駆使して、食品を冷凍する「プロトン凍結」が開発された。食品を凍らせるときには専用の機器が必要だが、消費者は冷凍食品をいつも通り冷凍庫で保管・手軽に解凍ができる。

プロトン凍結は、食品機械メーカーの株式会社菱豊フリーズシステムズ(本社:奈良市)が開発した技術である。これにより柿の葉寿司やおせちの冷凍化に成功し、日本全国に冷凍食品を販売できるようになった。同社で水産や畜産、お寿司、おせち料理などを通常の冷凍技術とプロトン凍結で保存した場合を比較した。その結果、痛みやすく鮮度が長持ちしない魚でも、プロトン凍結をした場合だと解凍後も新鮮さが落ちず、とれたてのみずみずしさが再現できたという。

大手百貨店の三越伊勢丹は、プロトン冷凍食品の販売に力を入れていて、菱豊フリーズシステムズが経営する「プロトンダイニング」のメニューの中から厳選した冷凍食品を販売している。最近では、食品企業が自社内でプロトン凍結フリーザーを導入するケースも増えている。

紙製パッケージの研究開発も進んでいる

コロナ禍で冷凍食品の需要が拡大する反面、家庭内のごみが急増していることもメディアなどでたびたび報道されてきた。社会全体で環境配慮への関心が高まる中、プラスチック製品のごみの減量化が食品業界でも進められている。一方、冷凍食品に使用するパッケージは、電子レンジで加熱可能なものしか対応できないため、これまで水に弱い紙素材はパッケージに不向きとされてきた。

こうした問題に取り組もうとパッケージメーカーのザ・パック株式会社(本社:大阪市)は、長年にわたって、紙製パッケージを研究・開発している。これまでに複数の仕切りをつけて1食分が冷凍できるワンプレート型のパッケージや、流通時に商品に穴が空いて異物が混入しないよう完全密閉できるフタ材を開発。全て紙製にすることで温かみのある風合いになり、従来の冷凍食品が持つネガティブなイメージに対してもパッケージを通して解決するアイディアを提供してきた。

冷凍食品は消費者の“手抜き”意識をどこまで払拭できるかがポイント

日本の消費者に根深く残る「冷凍食品は手作り感がなく、どこか味気ないし、栄養の偏りも気になる」といった潜在的な課題に対して、食品メーカーや素材メーカー各社によって技術を駆使した開発が進み、より安心して、美味しいものを手軽に食べられる時代になっている。

冷凍食品に対するイメージが社会全体で大きく変化すれば、冷凍食品が「手抜き」か「手間抜き」かといった論争はなくなるのかもしれない。

[参照]
◼️【メーカー公式】トップ|菱豊フリーズシステムズ|プロトン凍結
◼️ 拡大する冷凍食品市場と変化するニーズ|つつむを知る
◼️ 令和4年 “冷凍食品の利用状況”実態調査について | 一般社団法人 日本冷凍食品協会


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