業界動向

食品卸・物流業界が抱える2024年問題の解説と解決策

2022年04月22日

食品卸・物流業界が抱える2024年問題の解説と解決策

働き方改革関連法の施行により、2024年4月から車の運転業務については残業時間を取り締まる「時間外労働の上限規制」が適用される。物流業界はドライバー不足が問題視される中、制度の適用により生じる様々な問題のことを「2024年問題」といい、多くの企業では従来の仕事のやり方やルール、労務管理などを改善する必要が出てきている。

具体的にどんな問題があり、どのような対応策に取り組むべきだろうか。食品卸売業の2024年問題について、解説や対応策を紹介する。

2024年問題とは

2024年問題とは、「働き方改革関連法」によって同年から運送業で発生するいくつかの問題のことを指している。また、「働き方改革関連法」とは2018年6月に成立した労働関係の法律についての改善案のことである。主に改正された関連法の一部は下記となる。

・労働基準法
・労働時間等設定改善法
・労働安全衛生法
・じん肺法
・パートタイム労働法
・労働者派遣法
・労働契約法
・雇用対策法

この中でも2024年問題の原因となっているのが、労働基準法などの改正による「時間外労働の上限規制」である。

自動車運転業務に関する「時間外労働の上限規制」の概要

「時間外労働の上限規制」では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く場合、原則として月45時間かつ年間360時間以内と定められている。これを上回る残業が認められるのは、特別な事情などで労使が特別条項に合意した場合に限られる。大企業で2019年4月、中小企業では2020年4月からすでに施行されている。

ただし、自動車運転業務に関しては5年の猶予期間が設けられていた。この猶予期間が終わる2024年4月1日から、これまで上限を決めていなかった自動車運転業務の「時間外労働(残業)の上限規制」が適用され、「年960時間(休日労働含まず)」となる。もちろん、食品卸のトラックドライバーもこの法令改正の適用を受ける。

改正労働基準法などによる「時間外労働の上限規制」。原則として月45時間かつ年間360時間以内、自動車運転業務で「年960時間(休日労働含まず)」が上限になる。

厚生労働省「建設事業及び自動車運転業務の上限規制の適用について」

食品の配送業は、『手荷役作業が多い、小ロット多頻度輸送が多い、受注から納入までのリードタイムが短い』などの事情から、高効率な配車計画ができない事例もある。このため食品配送業に携わるドライバーの平均拘束時間は他の業種に比べて長く、労働時間の削減や人材確保といった対応が求められる。

食品卸・物流業界が抱える2024年問題の解説と解決策

軽工業品:加工食品、飲料・酒、紙・パルプ、糸・反物などの繊維素材
参考:農林水産省・経済産業省・国土交通省「農産品物流の改善・効率化に向けて」平成29年3月

月に20日労働する場合、1日4時間の残業で年960時間になるため、平均値から毎日2時間ほどプラスして残業すると違反となる可能性が出てくる。

残業時間の合計が年960時間を超えてしまうと、罰則として6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が課される可能性がある。自動車の運転業務をする企業は、早いうちから2024年問題に向けた対策を講じていくべきだ。

2024年問題で食品卸が実施すべき対策

特にほかの産業より拘束時間が長い食品配送業が2024年問題に対応するには、今までの労働環境を見直すなどの「働き方改革」が重要といえる。主な取り組みについて紹介していくので、ぜひ自社に合った方法を見つけてほしい。

労働生産性の向上

配送業務において、いくつかの作業工程の見直しを図ることも重要である。例えば、荷物の積み込みや荷下ろしにかかる時間の削減、荷待ち時間の短縮などだ。特に食品卸の場合、小ロットでの納品や商品の種類が多くなるケースもある。

それらの荷物を手作業で荷役するのは重労働かつ時間がかかる。そこでパレットやカゴ車を導入すれば、一度に多くの荷物を運ぶことができ荷役時間の削減につながる。

またバーコードやQRコードを活用した配送品の確認、出荷情報などのIT管理で検品作業自体を減らし、荷待ち時間を短縮する方法などもある。トラックドライバーが検品に立ち合う工程を省くことで、現地での滞在時間を減らしやすくなるはずだ。

運転時間の短縮

食品配送業のトラックドライバーは、車の運転業務が労働時間の中で最も長く、半分ほどを占めている。運転時間の削減が労働時間削減の大きなカギとなる。

そこで実施できる対策としては、配送ルートの見直しが挙げられる。特に昔と比べて新たな道路や橋が開通している地域もあるため、長年使用している既存の運行ルートは定期的に見直し、距離や時間が短縮できるかを再検討するべきだ。

また中長距離の運送を行う場合、貨物の積み替えやドライバー交代による中継輸送を導入するのも有効である。1つの行程を何人かで分担することで、従業員1人あたりの労働時間を削減することが狙いだ。

国土交通省の資料「中継輸送の取組事例集」には、中継輸送の取り組み内容や事例、導入効果などをまとめたものもあるので参考にしてほしい。同資料では、味の素やカゴメなどの食品メーカー6社による「F-LINEプロジェクト」で、物流体制の強化として中継輸送を検討している取り組み事例も紹介されている。

職場環境の整備

時間外労働の上限規制が適用されると、以前よりも従業員の労働時間をより厳しく管理する必要が出てくる。既存の物流量を残業で対応していた場合は捌けなくなる懸念もあるため、新たな人材確保が急務といえるだろう。

しかし厳しい労働環境や低賃金といったイメージがある物流業では、なかなか人が集まりにくい状況に置かれている。そこで労働環境を改善することで、従業員が働きやすい職場づくりが求められる。例えば、より良い労働条件や休暇制度などを取り入れ、早出や遅番などの交代制勤務や時短勤務などの制度を取り入れる対応策も挙げられる。

M&Aへの取り組み

2024年問題を前にして大々的な基盤強化や再編、事業の安定化を図るために、企業の合併や買収、売却(M&A)を実施する企業も少なくない。

食品卸は企業間で共通した顧客を持つため、配送ルートが重なることが多い。ひとつの車で効率的に配送ることで、事業拡大を目指せる点も大きいだろう。

顧客層の近い企業同士がM&Aを行う場合、市場シェアの拡大や新たな地域の進出などを期待できる。一方で取り扱う商品の種類や顧客層が異なる場合、販路の拡大や複数の事業展開によるリスク軽減を図ることが可能だ。

また大企業の子会社になることで、ブランドイメージの強化や労働環境の改善に繋げられる。それにより、新たな人材の確保を有利に進めやすくなるというケースもあるのだ。他業種とのM&Aで新たなITシステムを獲得できれば、業務の効率化や生産性向上に繋げることも可能になるだろう。

紙伝票の計算などアナログ業務の改善

FAX注文書の内容を販売管理システムに再入力したり、伝票用に印刷したりで、紙の作業に多くの時間を取られている配送業者は多い。しかし近年、食品流通の受発注や配送業務、在庫管理など、様々な業務で活用できるシステム・ツールが多種展開されている。ITツールの導入によって非効率な業務の改善を図ることも労働時間の削減に繋がる。

例えば、大型トラックへの搭載義務があるデジタコ(デジタルタコグラフ)では、運行データをもとにその日の業務日報を作れるため、これまで手書きで作成していた日報業務を削減できる。トラック予約受付システムでは、リアルタイムでバース(荷物の積み下ろしで駐車するスペース)の空き時間や進捗状況などが把握でき、入出庫の効率化に繋がる。

また食品卸では、FAXや電話による受発注業務を行っている企業が多い。この場合、FAXの送受信ミスや不確かな商品の確認、口頭での聞き取りミスなども起こりやすい。紙の伝票管理だと計算に時間がかかることや紛失などの問題もある。受発注システムを利用することで解決できるだろう。システムによっては、注文受付からピッキングリストの作成までを一括で行え、配送中や倉庫内でもスマホから受注内容を速やかに確認できるものもある。

今後を見据え労働環境の改善に早めの対応を

働き方改革関連法の施行により、「時間外労働の上限規制」以外にも「同一労働同一賃金の施行」や「月60時間超の時間外労働の割増賃金引き上げ」なども企業が対応すべき制度となる。

労働環境の改善や新たな人材の確保・育成、M&Aなどすぐに実施できない対応策も多いため、「2024年問題」に早めに対応できるよう早めに準備しておこう。

[参考]
国土交通省:「食品に係る物流効率化実施の手引き
厚生労働省:「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント
厚生労働省:「建設事業及び自動車運転業務の上限規制の適用について
国土交通省:「中継輸送の取組事例集
農林水産省・経済産業省・国土交通省「農産品物流の改善・効率化に向けて(PDF)


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