食の研究所

食品ロスの解決にも! 新技術が食の世界を開く 食の専門展に技術革新と創意工夫を見る

漆原 次郎(フリーランス記者)  2019年10月23日

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9月11日から13日、東京・青海の東京ビッグサイト青海展示棟で、「食」関連の6つの専門展が同時開催された。食品メーカーや飲食店など企業向けの展示ブースが揃い、さながら「業界」の雰囲気が漂う。

そうした中、「かゆいところに手が届く」ような製品を、技術力などで世に出していることがうかがえる展示ブースがあった。3つほど紹介したい。

エタノールで一気に冷凍し「生」を保つ

この展示会は「フードシステムソリューション」(同実行委員会主催)、「フードセーフティジャパン」「フードファクトリー」(いずれも食品産業センターと日本食品衛生協会主催)、「フードディストリビューション」(食品産業センターと日本加工食品卸協会主催)、「フードeコマース」(食品イーコマース普及協会主催)、「SOUZAI JAPAN」(日本食品衛生協会主催)の6つの専門展で構成されるもの。出展者数は350社超にのぼった。

情報通信技術を駆使した製品も多く展示される中、いまも装置、材料、道具といった素手で扱う製品が、食の業界を支えている。

(上)パック内に入った水。
(中)これを「凍眠ミニ」の氷点下30度ほどの
エタノール液に浸す。
(下)1分ほどでパック内の水が凍結した。

冷凍システムなどの製品を手がけるテクニカン(横浜市)と、酒類・食品卸売業の伊藤忠食品(大阪市)が共同で展示していたのが、「液体急速凍結機 凍眠(とうみん)ミニ」。

テクニカン代表の山田義夫氏と、パティシエの辻口博啓氏が立ち上げたティーカンパニーから2019年6月に発売された。肉や魚からケーキクリームまで、さまざまな食材を急速冷凍させる。

タンクには透明の液体が入っている。そこにパック詰された水を入れて浸すと、1分ほどでかちかちの氷になった。

「凍結させるための液体にはエタノールを使っています。凝固点が低いため、多くの食品で凍結の適温となる氷点下30度ほどで急速凍結することができます」と、テクニカンの三浦憲二氏が説明する。

左は「凍眠ミニ」で凍結させたこんにゃくゼリーの断面。
右は凍結庫で凍結させたもの。

「凍眠ミニ」で一気に凍らせたゼリーと凍結庫で凍らせたゼリーの断面を見比べると、明らかに前者のほうがきめ細かい。食材をゆるく凍らせていくと、氷の結晶が大きく育ってしまうため、食材の組織が傷ついたり、ドリップとよばれる味の成分の液体が抜けでてしまう。「凍眠ミニ」ではこれを抑えられるために、生に近い鮮度で食材を凍結させることができる。

三浦氏によれば、エタノールを急冷の液体に使うアイデアは山田氏が1980年代、食肉業を営んでいた時代に思いついたもの。以来、大きめの「凍眠」を開発・販売してきたが、このたび飲食店などが使いやすい「ミニ」の発売となった。すでに築地の料理店などで使われはじめているという。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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