食の研究所

神事にしきたり、ワカメと絡み合う日本人の食生活~日本の縁深き海藻、その歴史と現在(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2019年03月14日

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四方を海で囲まれた日本は「海の幸」に恵まれてきた。魚介類だけでなく、海の中に茂る海藻もまた、日本人の食を支えてきた。

とりわけ私たちに縁の深い海藻といえば「ワカメ」だ。主産地は日本列島周辺で、海外では天然ものは朝鮮半島や遼東半島周辺に限られる。海藻を意味する「布(め)」という語は、同時にワカメのことも指していたという。味噌汁、酢の物、煮物の具と、今も食べる機会は多く、「海の野菜」が食を彩っている。

今回は、そんなワカメをテーマにその歴史と現状を迫ってみたい。前篇では、漁や食の歩みを追いながら、日本人が「ワカメの価値」をいかに大切にしてきたかをあらためて感じたい。後篇では、そのワカメにさらなる価値を与えるような、先端科学を用いた養殖技術の開発に目を向けてみる。

神事やしきたりの対象となってきた

日本人がワカメの価値を大切にしてきたことは、神事や漁のしきたりなどからうかがえる。

現在も北九州から山陰地方にかけての神社で執り行われている「和布刈神事(めかりしんじ)」はその代表例だ。ワカメは旧暦正月の頃、自然に芽を出しては茂っていくため、幸福を招くとして神聖視されてきた。福岡県北九州市門司区の和布刈神社では、旧暦の元日が開けると雅楽を奏で、豊年神楽を舞う。その後、神職たちが松明の灯りを頼りに海でワカメを刈り、神前に供える。今年も先日2月5日未明に神事が営まれた。

醍醐天皇の皇子の重明親王が書いた『吏部王記(りほうおうき)』の「和銅三年、豊前国隼友神主和布刈神事之和布奉」という記述から、少なくとも710(和銅3)年には当地で和布刈神事が行われていたことが分かる。1300年以上の歴史ある神事だ。対岸の住吉神社(山口県下関市)や、出雲大社の北西にある日御碕神社(島根県出雲市)でも、それぞれ和布刈神事が行われている。

ワカメは「磯の口開け」の対象となってきた。これは、海藻や貝類などの「磯もの」の採取を解禁すること。漁をする人びとは口開けを待つ。海の資源が限られているがゆえに、持続的に利用しようという、人びとの生きる知恵ないし自制心からくるしきたりだ。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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