企業インタビュー
2018年11月06日
食品メーカー各社から新商品が続々と登場し、近年盛り上がりを見せる鍋つゆ市場。そのなかで存在感を増しているのが、家庭用焼肉のたれ調味料でトップシェアをもつエバラ食品だ。成熟市場と言われていた鍋つゆジャンルに、2013年、ガムシロップに使われるようなポーション容器に入れた濃縮タイプの鍋の素『プチッと鍋』を発売し、初年度は9億円を売り上げた。以来、鍋つゆ以外にもポーション容器入り調味料を展開し、2017年度は32.7億円と拡大。同社鍋つゆ調味料の『すき焼のたれ』『キムチ鍋の素』に続く、第3の柱へと成長している。
発売から5年、家庭の食卓に定着しつつあるポーションタイプの調味料。“あったらいいな”を具現化した市場戦略や商品開発について、マーケティング部 家庭用マーケティング課の伊藤史子氏に伺った。
家庭向けの鍋つゆ商品といえば、パウチ包装に入ったストレートタイプや、びんやペットボトルなどのボトル容器に入った濃縮タイプが定番だ。エバラ食品でも様々な鍋つゆ商品を展開しているが、2013年8月、ポーション容器に1人分の鍋つゆを入れた『プチッと鍋』を発売。“1プチッと1人前!”をキャッチフレーズに、発売当初から注目を集めた。当時について、伊藤氏は“家庭におけるお悩みの解決が商品開発の原点”と振り返る。
ポーションタイプの『プチッと鍋』
「『プチッと鍋』の開発は、鍋を平日にも楽しめるメニューにしたいという思いからスタートしました。はじめに消費者を対象としたグループインタビューを複数回実施し、家庭で鍋料理を作る際に感じていることや困っていることを調査していったのです」
グループインタビューから分かったことは、肉や野菜をバランスよく取り入れられる鍋料理は、『作る回数を増やしたい』と思われていたこと。また、『作るのは簡単だけれど、家族みんなが揃わないとできない』といった不満があることだった。
マーケティング部家庭用マーケティング課
伊藤 史子 氏
「以前は、鍋料理=休日の家族団らんメニューだと考えるご家庭が主流でした。現在ではライフスタイルが多様化し、家族全員が一緒に食卓を囲む機会が減っています。平日に鍋料理をすると、帰宅の遅いお父さんにはクタクタに煮詰まった具材を食べてもらうことになります。新しい具材や鍋つゆを足しても、味の調整が難しく、作り立てのおいしい状態には及びません。
また、単身世帯の方からは『鍋を作ると、一度に食べきれず連日鍋になってしまう』といった声も聞かれました。これらの問題点の解決策を考えたときに、『1人分ずつ小分けになった鍋つゆ』という、アイデアが見えてきました」
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