食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2018年09月25日
東南アジアにある世界最大の島国インドネシアは、発酵食品の宝庫だ。人びとは大豆からドリアンまで、あらゆるものを発酵させて食べていた。その一端を紹介する。
アジア最大のスポーツ競技会であるアジア競技大会が開催され、今年の夏は開催地「ジャカルタ」の地名をよく耳にした。ジャカルタはインドネシアの首都である。
インドネシアは、インドシナ半島とオーストラリアの間にあり、赤道をはさんで約1万8000もの島々からなる、総面積で世界最大の島国だ。島によって多様な自然があり、言葉も習慣も異なる多くの民族が暮らしている。もちろん食事も地域によってバラエティーに富んでいる。
今回、ジャカルタの郊外にあるボゴールに行く機会を得た。ボゴールは、ジャカルタより標高が高いため避暑地として知られるそうだが、街の中心部はそんな様子もなく、多くの車や人がひしめいていた。
ジャカルタやボゴールのあるジャワ島は、稲作が盛んだ。野菜や果物も豊富で、市場やスーパーマーケットを覗くと見慣れないものばかりが並んでいる。肉や魚もよく食べられる。ここでの食事は、米を中心に揚げものや炒めものなどさまざまな料理と、サンバルというスパイシーな調味料からなる。
中でも、「インドネシアの納豆」とも呼ばれる大豆を発酵させた食材「テンペ」をよく見かけた。日本の納豆は納豆菌で発酵させるが、テンペはクモノスカビで発酵させてある。そのままでは食べず、細長く切って油で揚げたり、トウガラシなど
奥の白い食品がテンペ。
手前の色のついた食品がオンチョム。
(吉江由美子氏撮影)
日本でもテンペは健康食材として注目され、たまにスーパーマーケ
伝統的なテンペの作り方は、ゆでた大豆をバナナの葉に包んで発酵させるというもの。バナナの葉にもともといるクモノスカビを利用していたそうで、日本の納豆の「わらづと」に似ている。
「テンペに似たオレンジ色や黒いものは『オンチョム』というのですよ」と、私たちを市場に案内してくれたボゴール在住のジョコさんが説明してくれた。ジョコさんはボゴール農科大学で水産学を教える先生だ。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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