食の研究所

この食事の方法で認知機能低下リスクは4割減少する~科学研究から見る、食と脳・こころ(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2018年08月20日

【Q】穀類と認知機能低下リスクの関係を調べた結果から、何か他に気づいたことはあったでしょうか?

大塚 はい。データを見ていると、穀類を摂取する方々の中でも、特に「うどんのみ」とか「冷や麦のみ」とか、ほぼ単品しか摂らないような食生活だと、認知機能低下リスクが高まるのではないかと考えるようになりました。そこで今度は、「食事がバラエティに富んでいるかどうか」といった観点で、改めて解析することにしました。

いろいろなものを食べるほど、認知機能は保てる

【Q】つまり、「摂取する食品の多様性」と「認知機能低下のリスク」の関係について調べたわけですね。どう調べていったのですか?

大塚 まず、協力者たちの摂取する食品がどのくらい多様かを数値にして表す必要があります。そこで、国立がん研究センターのチームが開発した「食事多様性指標」という指標を使いました。食事で仮にコメならコメだけといった具合に1品目しか摂らないとすれば、その人のスコアは限りなく「0」に近づき、また、仮に各食品群からの摂取量の割合が均等だとすれば、その人のスコアは「1」に近づく指標です。

協力者に摂った食事を記録してもらい、スコアを出していきます。こうして出したスコアと、10年間の認知機能低下リスクの関係を調べました。

【Q】結果はどうでしたか?

大塚 協力者の中で食事多様性指標の最も高かったスコア0.95から、最も低かったスコア0.69までの全570人を、ほぼ均等の人数で高いほうから「高い群」「やや高い群」「やや低い群」「低い群」に分けたところ、「低い群」の認知機能低下リスクを1とすると、「やや高い群」のリスクは0.68倍、「高い群」のリスクは0.56倍に抑えられたのです。

いろいろなものを食べるほど、認知機能低下リスクを低く抑えられるということです。

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食品摂取の多様性と認知機能低下リスクの関係。認知機能はMMSE(Mini-MentalStateExamination)
という方法で判定。(出典:大塚氏らの論文“Dietary diversity decreases the risk of cognitive
decline among Japanese older adults.”Geriatr Gerontol Int. 2017 Jun;17(6):937-944 の
情報を参考に作成)

【Q】スコアの低い人の食事や、高い人の食事とは、たとえばどんなものでしょうか?

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事多様性指標が低い群、やや高い群、高い群それぞれに該当する人における、ある1日の食事例。
実際の調査では3日分の食事内容を記録。(図版提供:国立長寿医療研究センターNILS-LSA活用研究室)

食事多様性指標のスコアが「低い」人の食事例は、朝食にメロンパンとアイスコーヒー、昼食にレトルトのカレーライスと緑茶、夕食に焼きそばとビールといったものでした。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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