食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2018年06月22日
イタリア生まれのパスタは、今では日本人の食生活にすっかり定着した。パスタの魅力は、形状や調理法などバラエティに富んでいることや、弾力のあるしこしことした歯触りにある。どうしてそのような食感になるのか、理由を探ってみた。
4月4日、「ニューズウィーク」に「パスタは食べても太らない」というニュースが掲載され、話題になった。カナダの研究による試験の結果を伝えるもので、パスタがGI(グリセミック指数)の値が低い食品であるためだという。
GI値とは、食品に含まれる糖質の吸収の度合いを示したもの。GI値が低い食品ほど、糖質がゆっくりと吸収されるため腹持ちがよく、ダイエットに向いた食品だという。そういえば、腹持ちのよいパスタは、マラソンなど持久性運動の前の食事にも向いているといわれる。
パスタとは、スパゲティやマカロニなどイタリアの麺類全般を指し、小麦粉に水などを加えて練って作る。日本でも、パスタと同じように小麦粉から作ったうどんがあるが、色や食感などがだいぶ違う。
その理由は、小麦粉の原料である小麦の種類が異なるからだ。パスタのパッケージを見てみると、原料は「デュラム小麦のセモリナ」と書いてある。「デュラム」とは小麦の種類で、「セモリナ」は「粗びき」という意味である。
実は、小麦の種類はとても多い。大きくは、「普通小麦」と「デュラム小麦」に分類でき、私たち日本人が普段よく食べている小麦は普通小麦である。普通小麦は、その中でも種をまく時期や色、粒の硬さなどで特性が異なるため、さらに分けられている。たとえば、粒の硬い「硬質小麦」はタンパク質の含有量が多く、粒の軟かい「軟質小麦」はタンパク質の含有量が低いものが多い。
そのため、製粉会社は品質の異なる産地や銘柄など数種類の小麦を配合して、強力粉や薄力粉などの種類の小麦粉を製造している。タンパク質を多く含む強力粉は、こねたときの粘りや弾力が強く、製パンなどに使われる。タンパク質含有量の少ないのは薄力粉で、ケーキやクッキーなどに使われる。うどんは、その中間の性質を持つ中力粉が使われている。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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