食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2018年04月11日
食品リサイクル法では、食品製造業や卸売業や小売業、外食産業などの食品関連事業者を対象にし、まず発生を抑えることを基本にするが、発生した廃棄物はリサイクルが優先される。
食品廃棄物は有機物が多く、栄養価が高いことを特徴とする。その栄養価を有効に活用できるのは、畜産や水産養殖用などの飼料にすることだ。食品関連事業者から出された食品廃棄物は、産廃業者などの飼料化施設に運ばれ、飼料の中間製品や飼料にする。
一方、初期投資が少なくて済み、技術のハードルがあまり高くないのが肥料化だ。学校給食センターなどの公共施設、集合住宅、スーパーやデパート、ホテル、レストランなど生ごみがたくさん集まるところでは、生ごみ処理機を設置して堆肥にしたり、機器を設置せずに、生ごみをそのまま堆肥メーカーや農家などに引き渡していたりしている例がある。スターバックスコーヒージャパンは複数の業者と共同で、大量に出るコーヒーの豆かすを飼料や肥料にし、さらにそれを自社で使う牛乳や野菜の生産に用いるという、リサイクルループを完成させている。
近郊の農園などでは、生ごみ処理機により堆肥をつくる様子も。
食品リサイクルで古くから行われているのは、てんぷら油やサラダ油など食用廃油を回収し、飼料や工業用油脂として利用する仕組みだ。工業用油脂は塗料や石鹸、燃料の一部として利用されている。
食品廃棄物のリサイクルの難点は、廃棄物につまようじや紙、プラスチック容器などが混じることだ。食品製造工程の廃棄物や調理クズでは、このような夾雑物が混じることがないので肥料や飼料にしやすいが、売れ残りや食べ残しなどの廃棄物には、夾雑物が混じることが多い。分別もかなりの手間で、大量の廃棄物の中に混じったつまようじを取り除くことなど、不可能に近いだろう。
しかし、メタン化なら飼料化や肥料化に比べて、比較的分別が粗くても行える。
メタン化とは、動植物性残渣(ざんさ)など有機性廃棄物を、嫌気性細菌によってメタン発酵させることである。メタン発酵により発生するバイオガスは、メタンを約60パーセント含み、熱源や発電用の燃料として利用できる。また、バイオガスで発電した電気は、2012年度から開始された再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)を利用して、売電できるようになったこともあり、メタン化に対する注目が高まっている。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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