食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2018年04月11日
ここ数年、恵方巻の大量廃棄が問題になっており、兵庫県のスーパーマーケットがこの現状に一石を投じた広告が反響をよんだ。さて、大量に廃棄された恵方巻はどうなるのだろうか。
兵庫県のスーパーマーケットが「もうやめにしよう」というキャッチコピーのもと、恵方巻を「今年は全店、昨年実績で作ります」とする広告を出し、反響を呼んだ。節分の食べ物として定着しつつある恵方巻の大量廃棄が問題視される中、一石を投じることになった。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、恵方巻などのイベント商品は、前年の売り上げ実績より多くの数を用意し、売り上げ増加を狙うことが多い。しかし、店頭にたくさん並べたものの売れ残った恵方巻は、賞味期限が短いため廃棄せざるを得ない。ここ数年、恵方巻の売り上げが伸びるに従い、大量廃棄が問題になっていた。食品事業者が廃棄した食品は産廃業者に引き取られることが多い。
食品の産廃と言えば、2016年に産廃業者が廃棄を依頼されたカツを食用として横流しした事件が思い出される。このとき、まだ食べられる食品が大量に廃棄されている事実を知って、驚いた人も多いのではないだろうか。このような、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことを「食品ロス」という。
環境省及び農林水産省が公表した「食品ロスを含む食品廃棄物等の利用状況等」では、2014年の食品廃棄物は約2775万トン。このうち、食品ロスは約621万トンと20パーセント以上を占めている。この量は、日本国民が1人あたり毎日茶碗1杯のご飯を廃棄していることに相当する。
2015年の国連世界食糧計画(WFP)の食糧援助量は約320万トンなので、日本人はその2倍近くの食料を廃棄していることになる。世界の栄養不足人口は減少傾向にあるものの8億人と推定され、依然として高水準だ。
食品ロスに対する国際的な関心も高まっており、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも、食料の損失や廃棄の削減が目標として設定された。農林水産省は食品ロス削減に向けた「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)」を展開している。
食品廃棄物には、加工食品の製造や流通などの過程で生じる売れ残りの食品や、消費段階での食べ残し、調理くずなどがある。以前はこうした廃棄物を焼却や埋め立て処理をしていたが、廃棄物処分場の不足や処理コストの増大から、2000年に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」という法律を制定し、食品廃棄物の発生や削減を目指している。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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