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味覚地図は昔の話、ここまで分かった味覚の仕組み~うま味受容体で「甘味」を感じるハチドリの謎

佐藤 成美(サイエンスライター)  2018年01月17日

また、複数の甘味料を組み合わせると甘味が強くなったり、弱くなったりすることも知られるが、受容体の研究から甘味を変化させる甘味料の組み合わせも分かってきた。「甘味を増強させる物質は、甘さは同じでも砂糖や甘味料の量を減らすことができます。たとえば、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)やシクラメートという甘味物質を少量加えるだけで、砂糖の主成分であるスクロースの甘みが強くなるのです。カロリーを抑えたり、後味の残る人工甘味料の量を減らしたりするなど、食品産業に応用できると思います」と三坂さんは言う。

うま味受容体で甘味を感じるハチドリ

動物の種類によって味の感じ方が異なることも分かってきた。猫が甘いものを好まないのは、甘味受容体の遺伝子の一部が欠損していて、甘味に関する感受性を失っているためだ。このことは猫に限らず肉食動物に広く見られる。イルカは甘味受容体ばかりか、うま味受容体も失っていることが知られている。

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ハチドリ。空中に静止して細長いくちばしで蜜を吸う。

三坂さんたちはハーバード大学との共同研究で、ハチドリが甘味を感じる仕組みを解明した。鳥類は、猫と同様に甘味受容体の遺伝子を失っていて、一般には甘味を感じない。しかし、甘い蜜を好むハチドリはうま味の受容体を進化させ、甘味に対する感受性を獲得していた。「味覚は生物の食行動を左右する大切な感覚です。進化に伴い食生活も変化し、必要のなくなった感覚は退化し、必要になれば新しい感覚を獲得しているのでしょう」

生物は、受容体を巧みに活用し、味覚を発達させてきたことが分かった。「おいしい」と感じる感覚は、個人の嗜好や生理状態に左右されるため、客観的に評価することは難しかったが、受容体の仕組みを使えば新たなおいしさの評価ができるようになるかもしれない。さらに受容体の研究から、新しい味物質が発見されており、食品メーカーもこの研究成果を商品開発などに応用できると期待している。

味覚のメカニズムがどこまで解き明かされるのか、今後の研究の行方が楽しみだ。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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