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味覚地図は昔の話、ここまで分かった味覚の仕組み~うま味受容体で「甘味」を感じるハチドリの謎

佐藤 成美(サイエンスライター)  2018年01月17日

そのきっかけになったのが、2000年に味物質を検出する受容体が同定されたことだ。受容体とは細胞膜や細胞内にあり、ホルモンや化学物質などと結合して細胞内に反応を起こすタンパク質のことをいう。それ以来、味覚のメカニズムの解明が急速に進んでいる。

味を識別する受容体をもとに「味センサー」を開発

味蕾には50~100個の「味細胞」が集まっている。紡錘型の味細胞は、一方の端を舌の表面に伸ばして味物質を受容し、もう一方の端で神経につながり味情報を脳に伝えている。味細胞の寿命は2週間ほどで、次々に新しい細胞に入れ替わっている。

受容体は味細胞の表面にあり、異なる受容体が異なる味物質を受容することで味を区別している。人間では、甘味やうま味に対する受容体はそれぞれわずか1種類だが、苦味に対する受容体は25種類も見つかっている。塩味や酸味に対する受容体も複数あると考えられている。

面白いことに、塩味は低濃度では受け入れられ、高濃度になると避けられる。ただし、科学が進んだ今になっても、高濃度の塩味を避ける仕組みはまだ見つかっていない。

東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の三坂巧(みさか・たくみ)さんは、解明された味覚のメカニズムを応用し、味覚受容体を使った「甘味センサー」を開発した。ヒトの培養細胞に、甘味を感じ取る甘味受容体と、甘味のシグナルを伝えるタンパク質を発現させたもので、この細胞が甘味物質を認識するかどうかを検出する。

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ヒトの培養細胞による「甘味センサー」。人間が甘いと感じる物質を検出することができる。各物質に対する2秒後と30秒後の応答。センサーに甘味物質が結合すると、センサーが反応する。赤みを帯びた部分はセンサーが反応したところ。(画像提供:三坂巧氏)

「果物のラベルに糖度が示されているように、甘味を表す指標には糖度がよく使われます。糖度は、濃度が高いと溶液の屈折率が高くなることを利用して測定されていますが、実際には糖以外の成分も測定されているので、必ずしも人が感じる甘みと一致するわけではありません。私たちが開発した方法では、実際に感じる甘味に近い数値を示すことができます」と三坂さんは説明する。三坂さんたちは、甘味受容体を発現した細胞やこの測定システムを利用して、生物が味を感じる仕組みを研究している。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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