企業インタビュー
2017年12月27日
一握りの大手が売上シェアの約半数を占め、約1300社ものメーカーがひしめく醤油市場。広島県福山市に本社を置く株式会社アサムラサキも、あまたある中小醤油メーカーの1社で、年商は約20億円と決して大きくはない。
しかし、同社の売上の6割を占める主力商品の『かき醤油』は近年、大手メーカーが続々とコラボ商品を販売。かき醤油カテゴリでは圧倒的な差をつけての国内シェアナンバーワンである。“アサムラサキのかき醤油”がどのように誕生し、ヒットしていったのか。営業部部長 小林秀則さんに伺った。
明治時代に広島県で創業したアサムラサキ。日本が高度経済成長の中にあった1971年には、当時はまだ珍しかった麺つゆをいち早く製造販売している。かき醤油の発売開始は1992年。地元広島では、2年後に42の国と地域が参加するアジア競技大会開催を、4年後には第51回国民体育大会開催を控えていた。“お土産用に、広島をアピールできる、これまでにない商品を作ろう”それがかき醤油誕生のきっかけだった。
“広島産かきを入れただし醤油”というコンセプトはすんなりと決まった。広島は当時も現在も養殖かきの生産量は日本一だ。かつお節、昆布、乾しいたけからとった“だし”と、醤油に砂糖やみりんを加えて作る“かえし”をあわせて濃厚つゆを作る製法は、麺つゆの製造でノウハウがある。とはいえ、これにかきを加えればかき醤油、と、簡単にはいかなかった。
「かきは味もにおいもクセがあります。だいぶ試行錯誤しました。苦味やえぐみの少ない品種を選んだり、どの工程でいれるか考えたり。ナマで醤油に入れるわけにはいかないので、どのような形で加えるかも苦労しました」
商品開発から1年。試作を繰り返した結果、かきエキスを加える製法で商品化に漕ぎつける。アジア大会にも間に合った。ところが、これがまったく売れない。
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