業界動向
2017年12月13日
食品を扱う業種において、安心・安全をいかに担保するかは永遠のテーマだ。特に近年はフードセーフティへの取組みだけでなく、フードディフェンスへの対応が強く求められている。そこで期待されているのはAI・人工知能の活用だ。今回は食品メーカーの「食の安心・安全」への課題と取り組みについて、専門家の話を交えながら紹介する。
まず、異物混入など食品安全における企業が抱える課題について見てみると、大手企業ではX線検査機や金属探知機、監視カメラの設置といったハード面の整備にコストをかけることで対応している。一方、中小企業では、コストの問題からハード面は限定的な整備にならざるを得ない。ただし大手、中小を問わず課題となるのは、導入したハードに対するソフト面の徹底だという。食品施設の衛生・品質調査の実施や、食品関連企業向けの各種セミナーなども行っている一般財団法人 JFIC日本食品検査で執行役員を務める岡本繁臣氏は、こう話す。
一般財団法人 JFIC日本食品検査
執行役員 岡本繁臣氏
「ソフト面の課題とは、金属探知機やX線検査機、監視カメラなどのハードに対して、機器の設定やメンテナンスといった運用、維持管理ができていないことです。ハードを導入しても、結局それを使いこなすのは人であり、メンテナンスも人が行います。ところが、このソフト面、つまり人材の教育が非常に難しくなっています」
その原因には、食品業界に蔓延する人手不足があるという。多くの企業では社員の入れ替わりが激しく、また人材の確保にも苦労している。さらに、日本人従業員の確保が難しく、外国人への教育の徹底、外国語のマニュアル作成など、現場への落とし込みがうまくいかないのだ。岡本氏は、こうした問題によって、せっかく導入したハードがその性能を十分に発揮できない現状に食品安全への不安の根本があると指摘する。
さらに、岡本氏は食品安全を脅かすもう1つの大きな課題があると続ける。
次のページ: 食品メーカーが対策すべき「大きな課題」
>> もっとみる