食の研究所

漁獲量が激減! 大阪湾のアナゴの隆盛はどこに?~ウナギと比べられてきた魚の過去・未来(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年10月24日

江戸の文献では「ウナギと比べて」が並ぶ

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『和漢三才図会』巻第51にある「阿名呉」
の記述。(所蔵:国立国会図書館)

アナゴがいつごろから日本人に食べられてきたかは、大きな謎となっている。江戸時代にならないと、アナゴについて記述された書物が出てこないからだ。ウナギはというと、奈良時代末期に成立したとされる「万葉集」で詠まれている。やはり日本人は昔からウナギに関心を持ち、アナゴにはさほどの関心を持たなかったのか。

その江戸時代の文献をたどると、やはりアナゴはウナギと比較されて登場する。

1709(宝永6)年に貝原益軒が著した本草書『大和本草』には「アナゴ」の記述があり、「鰻鱺(まんれい)に似て食べることができる。味はウナギに及ばず。海ウナギとも云う」としている。鰻鱺とはウナギのことだ。

1712(正徳2)年に寺島良安が作った図入り百科事典『和漢三才図会』には、「阿名呉(あなご)」という項目があり、「海鰻(はむ)」に似ているが、色は浅くて潤いがないといった体の特徴を示したあとで「其の味は甘平で脂ら少なく美ならず。漁人はこれを炙り鰻鱺に偽る」としている。ウナギの偽としてのアナゴという意味合いだ。

さらに、1803(享和3)年に杉野駁華が著した料理書『新撰庖丁梯(しんせんほうちょうかけはし)』では、「気味又諸書にのせずといえど病人いむべし。調烹蒲焼の余をいまだ知らず」とある。味は諸々の本に載っていないものの病人は避けるべきで、また調理法として蒲焼以外は知られていない、ということだ。なお、同書では「鰻鱺」については「気味甘くして毒なし」とよりよく書かれている。

これらの文献から、かつての日本人は、アナゴをウナギのほどのものではないと捉えてきたことがうかがえる。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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