食の研究所

食の世界でも勢力拡大の人工知能、その活用法とは?~作物を仕分け、加工作業を代替、レシピを開発

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年08月18日

「おすすめ」をどう捉えるか――家庭での食生活

家庭での食生活でも、新たな技術に敏感な「イノベーター層」や「アーリーアダプター層」では、人工知能との接点が生まれている。

人工知能「ワトソン」で知られるIBMはすでに2014年、「シェフ・ワトソン」に料理のレシピを創作させている。医療分野で膨大な論文データをもとに最適な治療法を医師に助言する実力があるのだから、レシピ創作もできて当然ともいえる。米国ではレシピ集が書籍化された。日本では「クックパッド」のプレミアム会員と共同でレシピを考案している。

調理器具では、シャープが2016年7月、家族の嗜好を学習する人工知能が搭載されたオーブンレンジ1機種を発表した。人の「さっと作れるメニューは何?」といった話しかけに、人工知能が気象情報や調理履歴などを考えながら、クラウド上に用意されたメニューを選んで提案する。豚肉メニューの利用が多い家では、豚肉メニューを優先的に提案するようになるなど、家族の嗜好を自動的に学習してく点が、人工知能ならではの能力といえよう。

人工知能による「おすすめ」機能が発展していくと、人間に「今日、○○さんはランチにブリの切り身を含む刺身定食を食べるとよいでしょう」などと言ってくるだろう。賢い提案者と捉えるか、思考停止の助長者と捉えるかは、人間次第だ。

「何がどう変わったんですか」と聞いてみる

食の分野に限らないが、「人工知能による」や「人工知能を搭載」が今後、製品やサービスの訴求フレーズになりそうだ。

利用者側が注意しておきたいのは「人工知能」には、厳密な定義がないということ。本格普及期になると、表示基準などがない限り企業は拡大解釈に走って、あれもこれも「人工知能搭載」と標榜するおそれはある。かつて、家電製品で「ファジー」を濫用したように。

人工知能技術の歩みや、社会の人工知能に対するイメージからすると、今後の「人工知能搭載」を謳う製品・サービスに対しては当面、人工知能自身が知識を獲得する「機械学習」の能力があるかを確認事項の1つにするとよさそうだ。「自分で賢くなるか」と言い換えてもよい。技術提供者に率直に「人工知能が入っていなかったときと、何がどう変わったんですか」と尋ねてみるのも手だろう。

人間の食習慣が、一気に変化するようなことは今後もおそらくない。だが「食べる」に至るまでの過程は、人工知能が状況を変える可能性は高い。幅広い「食」の分野において、課題や需要が明確にあれば、人工知能は活動の場を増やしていくだろう。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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