食の研究所

なぜおいしくなるのか?「熟成」という魔法の正体~いまだに謎も多い“寝かせる”効果のメカニズム

佐藤 成美(サイエンスライター)  2016年11月24日

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熟成はさまざまな食品のおいしさと結びついており、「熟成」と聞くだけでおいしそうに感じる。まさしく「熟成」は食品のおいしさを表すキーワードなのだ。熟成させると、なぜ食品はおいしくなるのだろうか。

おいしさの決め手は「寝かせる」こと

このコラムでも昨年「なぜ『寝かせた肉』はおいしいのか?」という記事で報じたとおり、「熟成肉」がブームになった。そのブームのせいか、「熟成」という言葉をよく耳にする。

ブームの前から、お酒や調味料などには「熟成」を売りにしている食品はたくさんあった。熟成とは、簡単にいえば「食品を寝かせておいしくすること」だ。

たとえば、お酒やチーズなどを発酵後に寝かせるのも熟成のひとつ。風味がまろやかになり、色や香りが生まれておいしくなる。つまり、熟成とは、食品を長くおいておくことで、食品の色や味、香り、歯触りなどを変化させ、好ましい状態にすることなのである。

食品の熟成を研究する日本食品包装協会理事長の石谷孝佑氏は「人によっておいしさの感じ方は違うし、食品の種類によって熟成のメカニズムも多様です。そのため、熟成を定義したり、評価したりするのは簡単ではない」と話す。

複雑で不明な点も多いが、石谷氏によれば食品が熟成する要因は、(1)微生物の酵素作用によるもの(発酵)、(2)食品自体がもつ酵素作用によるもの、(3)食品や容器などの成分どうしの化学反応によるもの、(4)食品成分の物理的な変化によるもの、に大別することができるという。これらの要因が同時に絡み合って熟成は起こる。

ただし、食品を寝かせて風味が変化しても、品質が向上しなければそれは「熟成」とはいわず、「変質」である。熟成させる上では、風味の変化を品質の向上につなげるために、温度や時間などの条件を課すなどのさまざまな工夫がほどこされているのだ。

味噌、うどん、干し柿・・・身のまわりにはさまざまな熟成食品が

食品中のタンパク質は、微生物や食品そのものがもつ酵素で分解されると、アミノ酸やアミノ酸が少数結合したペプチドになり、うま味が増す。そのため、味噌や醤油などの調味料、ハムやソーセージ、チーズなどは長期間熟成させるものが多い。また、熟成肉のうま味が増すのも肉のタンパク質が分解されるからである。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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