食の研究所

障害者が地域農業の担い手、売り上げ拡大の農園も~広がりつつある「農業」と「福祉」の連携(後篇)

白田 茜(フリーランス記者)  2016年10月25日

ピアファームは障害者の賃金を2008年の月額2万3000円から2014年には約4万3000円に上昇させた。それだけでなく、地域での雇用の場の創出、耕作放棄地の活用、地域の農作物を直売所で販売し販路を拡大するなど、いまや重要な地域の農業の担い手となっているのだ。

「農福連携」の道も最初の一歩から

「障害者に農業はできるのか」という疑問を覆す事例が数多く現れ始めた。吉田氏によると、「当初は疑問を抱いていたプロの農業者も、まず草刈りから任せてみて、できることが分かってくると、収穫作業や剪定作業も頼むようになり、いまは戦力と認識するようになっている例もある」という。「(1人で全作業をやるのでなく)農作業を切り分け、複数の障害者が、それぞれ得意な作業を行うチームとしての対応は可能」だという。

上述した2つの農福連携の事例は、単に障害者の居場所づくりや賃金向上だけにとどまらず、周辺の耕作放棄地を引き受けたり、新たな商品を開発したり、地域の農作物の販路拡大に貢献するなどして、障害者が地域の重要な担い手になっていることが分かる。農福連携は大きな可能性を秘めているのだ。

ただし、一足飛びに農家で障害者の雇用を進めたり、障害者施設が農業活動を本格化させようとするのはハードルが高いかもしれない。「京丸園」の事例では、障害者の農業体験から開始して、作業内容を見直しながら少しずつ雇用人数を増やしている。まずは農業体験から始めて、繁忙期などに障害者施設に農作業を委託してみるという方法もある。上述した香川県や群馬県では農作業の委託のマッチング制度がある。

一方、農業に参入しようとする障害者施設にとっては、農業技術の習得が課題となる。農業に参入した障害者施設の中には、もともと農業経験者がいたり、農業経験者を雇ったりしている例もあるようだ。農業経験がいない場合は、自治体に専門家派遣の制度がないかを確認したり、地域の農家に指導をお願いするという方法もある。

まずは、職員が農作業の委託などを通じて農業技術を習得する必要があるだろう。農業分野に本格的に進出する場合は、これら人材の確保に加えて、農地を借りたり、農業関係の補助金を活用するなど設備投資を行う必要も出てくるかもしれない。

千里の道も一歩から。周囲のサポート体制があれば、障害者は新しい価値を生み出していける存在なのだ。障害者が地域の農家を助け、地域住民と関わっていくことで地域の理解が進んでいく。そんな好循環が生み出されることを期待したい。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ

『BtoBプラットフォーム』とのID統合について
クレディセゾンの支払代行サービス
フーズチャネルコンテンツガイド