企業インタビュー
2016年10月17日
九州・博多と聞いて多くの人が想像する名物といえば、やはり明太子ではないだろうか。主要駅や空港などの売店で、明太子や明太子関連の商品が所狭しと並ぶ光景を見ると、この地に訪れた実感が増す。
そんな数ある明太子関連商品の中でも抜群の人気と知名度を誇るのが、株式会社山口油屋福太郎の「めんべい」だ。馬鈴薯でんぷんの生地に明太子を練り込んだせんべいで、今や年間売上30億円を誇るヒット商品となっている。2014年にめんべいの専用工場を新設した製造元に、みやげ商品としてどのように定着させていったかを伺った。
1909年、株式会社山口油屋福太郎は食用油の製造から始まった。現在は4代目の山口毅氏が社長に就き、食品の総合卸や自社による明太子の製造など事業を広げている。
「1990年代の後半くらいから、食品業界全体として『減塩』がトレンドになってきました。その反面、塩を減らすということは食品の日持ちを悪くするというデメリットがあります。そう考えますと、当社の主力製品であるお土産用の生の明太子は、この先伸びないのではないかと心配するようになったのです」
株式会社山口油屋福太郎 山口 勝子専務
こう語るのは、社長夫人で専務取締役の山口勝子氏。めんべいの生みの親である。
現代においては食品の保存技術が向上してはいるが、多くの消費者は明太子のような生鮮品を持って長時間移動することに不安を感じるのも事実だ。
「開発のきっかけは、自慢の明太子を、どんな形でもいいからもっと多くの人に食べてもらいたい、気軽に持ち運んでもらいたい…。そんな想いからでした」
明太子を使った新商品の開発にあたり、山口専務は人気みやげの三大要素と言われる『安い、軽い、美味しい』を兼ね備えるせんべいに目を付けた。これなら、賞味期限も長く常温で持ち運べる。
「めんべいの発想は、『博多っ子気質』ですね。博多は早い時代から海外との交流が盛んで、良い物を真似するのではなく、その良さを上手に生かして、新しい商品づくりを行う気質が根付いています」
とはいえ、せんべいを製造するノウハウを持たない同社にとって、めんべいの開発は手探り状態だった。
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