企業インタビュー
2015年12月07日
パッケージには、一筆で描いたようなゆるい魚のキャラクター。クスッと笑ってしまう漫画が、ひと際目を引く。明治創業の水産加工メーカー、シーラック株式会社が販売するかつお節のスナック菓子「バリ勝男クン。」が、発売から5年で500万袋以上を売り上げている。
贈答品を主力としてきた老舗が、なぜコンセプトも戦略も違う量販品を手掛け、成功をおさめることができたのか。ヒットの裏側を探るべく静岡県焼津市にある同社を訪ね、業務部・企画次長として商品開発に携わる長谷川英則さんに話を聞いた。
シーラック株式会社 業務部 企画次長 長谷川英則さん
全国有数の水揚げ高を誇る静岡県焼津市の焼津港。江戸時代よりかつお漁が盛んで、現在、南方かつおの漁獲量は日本一を誇る。焼津では水揚げされた大量のかつおを保存するためかつお節に加工する技術が発達し、食文化として根付いてきた。明治年間に創業したシーラック株式会社も、ここ焼津に本社を構える。
同社の主力商品は、冠婚葬祭用の贈答品。かつお節は、戦国時代に「勝男武士」に通じる縁起物として広がったことから、夫婦円満や元気な子どもの象徴として祝い事に必ず用意されてきた。しかし、昨今ではその風習すら忘れられるようになり、さらに少子化によって結婚式を挙げる人が減少。かつお節を縁起物として用意するニーズは、年々減り続けている。
かつお節の老舗による贈答品の数々
「当社の売り上げの95%は冠婚葬祭用のギフトが占めています。これまで量販品はほとんど手がけておらず、ほんの一部のOEMを請け負うくらいでした。ただ、少子化問題もあり、このままギフト品のみでやっていくのは限界があると思っていました。また、ブライダルフェアなどでかつお節のサンプルはお客様に手に取ってもらいづらく、その場で試食していただけるようなものを作りたいという思いもあったのです」
そんな時、付き合いのある仕入れ先からひとつの提案があった。それが、「バリ勝男クン。」の原型となるかつおチップだ。
「バリ勝男クン。」のルーツとなった
かつおチップ「バリ鰹」
「かつおの削り節にショウガ醤油味をつけたチップでしたが、ひと口食べておいしいと思いました。何よりも、ブライダルフェアの会場で試食しやすいことも魅力でしたね。それで商品化することを決意し、当社が商標登録を取りギフト用の『バリ鰹』を誕生させたのが2010年のことです」
伝統的な製法で作る「枯れ節」を使用した同社の商品は、もともと味の良さが評判だったが、そこにかつおチップというアレンジを加えたことで話題性もアップ。ブライダルフェアをきっかけに、ギフト用の市場はどんどん広がっていった。そして、発売から半年ほど経った頃、予想外の反響が。
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