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TPPが食品、外食業界に与える影響(前編)~大筋合意の概要

進藤勇治(産業評論家)  2015年11月20日

TPPが食品、外食業界に与える影響(前編)~大筋合意の概要

日本政府は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP:Trans-Pacific Partnership)参加12カ国と長年にわたる交渉の結果、2015年10月に大筋合意に達しました。今後はそれぞれの国の国会で批准手続きが完了されれば正式な発効となります。

TPPに対する業界の反応は様々で、工業製品の輸出促進が期待される一方、日本の農業の衰退などが叫ばれる面もあります。また合意内容については日本国内に限らず、ニュージーランドや今回から参加を表明した米国などでも賛否の反応が分かれました。

本稿では農業のほか外食、小売、卸売、食品製造業などのフードビジネスに的を絞り、前編ではTPP大筋合意の概要を、後編ではその影響と企業が取るべき対策を解説していきます。

TPPの目的

TPP経済圏

TPP参加12カ国(内閣官房資料)

第一次世界大戦や世界恐慌、第二次世界大戦を経て、国際社会は世界貿易機関(WTO)創設、ガット・ウルグアイラウンド交渉と自由貿易の推進に努めてきました。自由貿易の推進は世界の大潮流であり、TPPはその通過点のひとつです。

日本は様々な国と自由貿易協定や経済連携協定の締結を進めています。16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP:アールセップ)、日本・EUとの自由貿易協定(FTA)、日中韓FTA構想、APECなどです。この中でもTPP経済圏は大きく、GDPは約3千100兆円で世界全体の4割、総人口は約8億人で世界全体の1割を占めるほどとなっています。

ここで改めてTPPの特徴と目的をおさらいしましょう。そもそも自由貿易とは規制を緩和し、取引のルールを明確にして貿易を促進することにあります。TPPは自由化レベルが高い包括的な協定で、貿易や経済活動に国境をなくし国どうしが共に豊かになることを目的としています。モノやサービスの貿易自由化だけでなく、政府調達、貿易円滑化、競争政策などの幅広い分野が対象で、物品の関税は将来的には例外なくほぼ100%撤廃することが原則です。

日本の関税の現状とTPP大筋合意の概要

それでは現在の日本の関税は、どのような状況にあるでしょうか。TPP参加国を例にあげて、自動車や電気製品などの非農産物と、コメや小麦などの農産物に分けて見てみます。

(表1)各国の関税状況
国名非農産物農産物
日本 1.2% 14.7%
米国 2.1% 4.1%
カナダ 2.8% 11.9%
オーストラリア 5.4% 2.8%
マレーシア 3.9% 19.9%
ベトナム 11.7% 15.9%
※貿易量加重平均関税率

表1の通り、非農産物では、実は世界的にも低いレベルです。輸入量を加味した全体の平均関税率では1.2%です。細かく見ていきますと電気製品は0.2%、自動車は関税なしの0%となっています。

これに対して農産物は14.7%にのぼります。日本の農業を守るために、コメは778%、小麦は252%、粗糖は328%の関税がかけられています。しかし、農産物に対する関税は日本だけが高いわけではありません。多くの国は自国の農業を守るために農産物に高い関税をかけています。マレーシアやベトナム、カナダなども10%を越えています。

TPP大筋合意の結果、日本は全農産物の81%にあたる1885品目で関税を撤廃することになりました。今回の交渉において日本は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物を重要5品目と定め、これらを守る方針で臨みました。この結果は表2の通りです。重要5品目全体では約3割の174品目の関税が今後なくなりますが、他の品目に比べるとかなり守られた結果となっています。

(表2)TPPにおける重要5品目の合意内容
品目合意内容
コメ 米国・オーストラリア向けに関税341円/kgの非課税輸入枠、計7万8400トンを設置する。他国の関税は従来通り

(小麦、大麦)
現行の国家貿易制度を維持するも、マークアップ(売買差益)は9年目までに45%削減したり、特別輸入枠を新設する
牛肉
豚肉
38.5%の関税を段階的に引き下げて、16年目以降は9%にする
10年目以降に高価格帯の関税4.3%を撤廃し、低・中価格帯の大半の関税(最大482円/kg)は50円にする
乳製品 TPP参加国にバターなどの低関税輸入枠(計7万トン)設定する
甘味資源作物
(砂糖、でん粉)
現行の糖価調整制度を維持するも、一部では関税を撤廃したり、低関税輸入枠を設ける

 

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執筆者プロフィール

進藤勇治(産業評論家) 

1951年愛媛県生まれ、東大卒、同大学院修了後、通産省入省。
マサチューセッツ工科大学客員研究員、通産省国際研究協力企画官、東京大学特任教授等を歴任。TPPや経済・産業問題、エネルギー問題に関する講演・執筆を行う他、企業の経営・技術指導やテレビに出演して解説等を行っている。

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