企業インタビュー
2015年07月17日
おつかいものとしてだけでなく、自宅用としても高い人気を誇るガトーフェスタ ハラダのラスク『グーテ・デ・ロワ』。2000年代半ばのラスクブームを牽引しつつ、自らはブランド力を高めて売上げを伸ばしてきた。現在では年間売上高が170億円を超え、全国20店舗のお店は今もラスクを求める人で行列が絶えない人気店だ。
この大ヒット商品を製造・販売するのは、群馬県の老舗菓子メーカー・株式会社原田。同社はなぜラスクを作り、急成長の背景にはどのような戦略があったのか。『グーテ・デ・ロワ』の生みの親であり、現在も現場の最前線で活躍する原田節子専務取締役にお話を聞いた。
ルーツは1901年創業の老舗和菓子店
ガトーフェスタ ハラダの創業は今から110年余り前の1901年。和菓子店松雪堂として創業し、その後洋菓子や学校給食用のパンなども手がけてきた。
しかし、バブル崩壊による経済的な打撃と消費低迷、さらに大型スーパーやコンビニの進出も追い打ちをかけ、90年代後半には地元の人に愛される“町のお菓子屋さん”として経営を続けていくことに限界が見えていたという。
何か手を打たなければならない。ところが、群馬県高崎市新町は全国区の観光資源に乏しく、観光土産としての商品開発は難しかった。
「観光土産としての位置付けができないのならば、地方の枠を乗り越えて全国展開しないと生きていけないと思いました。ただ、和菓子は夏場に弱いので、一年を通じて売れる商材が必要だったのです。そこで、ラスクなら全国展開できるのではないかと考えました。夏場でも日持ちがしますし、元々パンを焼く設備はありましたので」
専用のラインで焼き上げられるラスク
そうして誕生したのが、『グーテ・デ・ロワ』だ。
ラスク用に開発したフランスパンならではのサクサクとした食感、芳醇なバターの香りと上品な甘さ。さらに、女性でも食べやすい大きさと、小分けのパッケージ。構想から販売開始まで、3年以上の月日が流れていた。
「全国に商品を広めるためには、感動を通じて拡散するしかないと考えていました。人は感動すると、その感動を大切な人にも伝えたいと思うものです。私たちはそれを『感動のコミュニケーション』と呼んでいます。しかし、人を感動させるのは簡単ではありません。感動させるには、まずどれだけ材料や製法にこだわって美味しいものを作り上げるかが大切ですが、これは感動させるために必要な半分の要素です。残りの半分は、コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング、物語やテーマ、さらに我々の哲学や美学です」
「感動」とはまさに商品の付加価値ということだろう。感動をどのようにして作っていくのか、この悩みの中からひとつひとつ積み上げられて構築されていくのが「ブランド」でもある。
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