ヒット商品の舞台裏

月桂冠がプライドをかけて挑む「生酒」づくりと販売戦略~月桂冠株式会社

2015年04月14日

蒸し暑い日本の夏に涼をもたらす酒として、真っ先に思い浮かぶのはキンキンに冷えた生ビールだろう。一方で、暖をとる冬の酒というイメージが強かった日本酒においても、生酒や生貯蔵酒、スパークリングなど、冷やして楽しむ様々な商品が販売され人気を集めている。

なかでも、加熱処理(火入れ)を行っていない「生酒」は、フレッシュかつフルーティーな風味が特徴で、料理とともに味わう食中酒として飲食店からの引き合いも強い。

大手日本酒メーカー、月桂冠が近年このジャンルでシェアを伸ばしている。調査資料によれば、生酒類の飲用傾向が高まる中、売上2位の同社は2013年に前年比115%と、上位20社中トップの伸び率だ。

チルド流通が当たり前だった生酒の常識を覆し、月桂冠が常温流通可能な生酒を開発したのが今から30年前。ここ数年は大胆なイメージ戦略とテコ入れを行い、それが実を結びつつある。その舞台裏を探るべく、同社総合研究所製品開発課の石田博樹さん、広報課の田中伸治さん、藤田愛里さんにお話を伺った。

火入れを行わない生きた酒であるが故の、魅力と難しさ

一般的な日本酒は、火落菌という菌による腐敗を防ぐために、製造工程で2度「火入れ」と呼ばれる加熱処理を施す。「生酒」はその火入れを一切行わない文字通りの「生きた酒」のこと。他にも生酒類として、「生詰め」や「生貯蔵」といった“生”と名がつく酒があり混同しやすいが、これらは生酒と違って1度の火入れが行われている。生貯蔵酒や生詰めのパッケージに大きく書かれた「生」の字を見て、生酒だと勘違いしている人も少なくないはずだ。

通常の酒 = 搾った後と瓶詰め時の2回火入れを行う、最も一般的な日本酒。
生貯蔵酒 = 搾ったままの状態で冷蔵貯蔵し、瓶詰め時に1回火入れを行う。
生詰め = 搾った後の貯蔵前に1回火入れを行う。ここ数年で広まっている「ひやおろし」がこのタイプ。
生酒 = 搾った後も瓶詰め時も火入れは一切行わない。「本生」「生々」とも呼ばれる。

 

もろみを搾ったままの生酒は、酵母や酵素の働きで時間の経過とともに酒質が変化してしまう。火入れはその酒質の変化を防ぐ重要な工程だが、引き換えにしぼりたての酒ならではの風味や香りは失われる。

一方、生酒の魅力は何といっても蔵と同じ搾りたての味が楽しめることにある。しかし、厳しい温度管理が必要で冷蔵保存が基本となるため、流通にとっても店にとっても手のかかる酒だった。

同社が生酒を本格的に商品化したのは1981年。もちろん、当時は運送も保存も冷蔵が必要なチルド商品だった。しかし、3年後の1984年には業界初となる常温流通を可能にし、冷蔵が必須だった生酒の常識を大きく覆したのである。

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