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高校生との商品共同開発、そのメリットは!?佃煮メーカーのジュレ佃煮誕生秘話

2014年05月23日

平松代表取締役(左端)と生徒たち

近年、企業と学生・生徒による共同開発商品が話題となっている。なかでも大きな反響を呼んでいるのが、農業、水産、商業などの高校で学ぶ生徒たちが開発に携わった食品だ。コンビニに並ぶおにぎりや弁当、パン、スイーツをはじめ、観光地のお土産、地元の特産品など、一度は目にしたことがあるという人も多いだろう。今回は、2014年度モンドセレクション金賞を受賞した愛知県の食品会社と高校生のコラボ商品を取り上げ、共同開発の現場を紹介したい。

愛知県豊川市にある株式会社平松食品は、1922年(大正11)に創業した佃煮の老舗。魚介類の佃煮や甘露煮など伝統と時代を調和させた商品で、モンドセレクションをはじめ数々の食品コンクールで賞を獲得し続けている。そんな佃煮メーカーが、地元の愛知県立三谷水産高校から商品開発の相談をもちかけられたのは2010年のことだった。

「三谷水産高校の校長先生から『生徒たちが実習で釣ったカツオを何とかして地元に流通させたい』と相談を受けたのがきっかけでした。校長先生の熱い思いにグッときて、地元企業として力になりたいと思ったのです」と、平松食品代表取締役の平松賢介さんは共同開発に至った経緯を振り返る。

三谷水産高校では、実習船「愛知丸」でカツオの一本釣りの実習が行われている。実習で釣られたカツオは、サイズも数量も不安定。船内で冷凍されることや高校の実習生が釣ったという理由から、相場のほぼ半値しかつかず、これまでは静岡の焼津港で水揚げされ缶詰用に使われるのが関の山だった。生徒たちが釣ったカツオが地元で日の目を見ることはなかったのだ。

実習船で高校生が釣り上げたカツオを使い、今までにない新たな佃煮を作る共同開発プロジェクト。平松社長は、商品コンセプトの策定に向けて生徒たちの声に耳を傾けた。「生徒さんからは『海の上は揺れるので落ち着いて食事ができない。実習船でも食べられるものにしたい』というとても具体的な意見が上がりました。そこで考案したのが、ジュレ状の佃煮です。ご飯と別々に食べるのではなくご飯の上にかけて食べるジュレ状の佃煮なら、揺れる船の上でも食べやすいんじゃないかと」

佃煮の概念を覆す斬新な形状と生徒たちの希望を兼ね備えた“ジュレ状の佃煮”というアイデアに、学校側も大満足。商品の方向性が決まると、佃煮を通じて平松食品のモノづくりを認知してもらうために試食会や工場見学を開催した。これにより、両者の相互理解が深まってゆく。

その後、打合せを重ねながら、売場ターゲットを量販店に絞り込み、商品規格や価格を設定。試作の段階では味が濃すぎるという声が多く、味に丸みを出すために椎茸を入れるなど高校生の口に合うよう改良を重ねた。そして、スタートから2年の歳月を経て新商品のジュレ佃煮「愛知丸ごはん」が誕生し、2012年2月に販売を開始。生徒たちの釣ったカツオが、ついに日の目を見たのである。

各地で高評価、売上げも好調

ジュレ状の佃煮「愛知丸が釣った
かつおとしょうがのごはんじゅれ」

4種類ある「愛知丸ごはん」シリーズの中でも、一番人気は「愛知丸が釣ったかつおとしょうがのごはんじゅれ」。2014年度モンドセレクション金賞、ふるさと食品中央コンクール農林水産省食料産業局長賞、観光庁主催世界に通用する究極のお土産ノミネートなど、高い評価を受けている。

地元のスーパーや名古屋市内の県アンテナショップなど小売店での売れ行きが好調なばかりでなく、業務用流通業者からの受注も多い。海外市場での取り扱いもスタートしたという。年間売り上げは、シリーズ計4万本で約1,000万円に達している。

メディア露出、新規市場の開拓等、産学共同での商品開発によるメリットは大きい。「高校生と共同での商品開発を通じて、柔軟な発想や貴重な意見、ヒントをもらいました。我々も新しい世代へ情報発信ができ、地元の水産資源を活用した地域貢献につなげられています。県知事や市長をはじめ、地元の方々の応援も心強い限りです」という平松社長の言葉通り、企業と地域とのつながりを再認識するという点においても、大きな意義があることだといえよう。

本例は、地域の声に企業が応え、相互理解を深めながら明確で具体的な目的に向かってともに歩んだプロジェクトだ。話題性が先行したキャンペーン的な共同開発戦略ではない。企業は伝統のモノづくりを若い世代に伝え、高校生は自らの手で地元の産業を切り開いてゆく。地域の特性にマッチした、共同開発の好例だといえるだろう。

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