掲載日: 2018年11月07日 /提供:グロービート・ジャパン株式会社
ラーメン店チェーンの「らあめん花月嵐」(以下、花月嵐)を展開しているグロービート・ジャパン株式会社(本社/東京都杉並区、代表/北条晋一)では、「新・社員独立制度」(グローアップ・システム)を設けて、2018年11月5日から2019年3月31日までを第一期生の募集期間とし、中途社員の募集・採用を開始する。また、この新・社員独立制度は既存の社員にも適用される。
この最大の特徴は、独立のための準備金として「300万円」を支給するということだ。
花月嵐を含むグロービート・ジャパン㈱の総店舗数は277店舗(国内直営57、国内FC175、海外45/2018年10月末現在)という規模になっているが、国内での店舗展開に際して、同社の経営理念が浸透した社員が独立して展開することで、クオリティの高いチェーン体質を築くことと、店舗数の増加を想定して、この制度の実施に踏み切った。
社員独立の資格を高度にして精度を高める
ここで、花月嵐の標準的投資額を除いた、一般的な加盟店に向けた加盟契約内容と、旧・社員独立制度(リービングシステム)、新・社員独立制度の違いを紹介しよう(図表参照)。
花月嵐のFC加盟期間は5年間で、一般的な加盟店に向けた契約内容は「審査依頼料20万円」「保証金100万円」「加盟金108万円」「研修費32.4万円」「広告費54万円」で314.4万円となる。営業に入ってからのロイヤルティは5%である。
それに対し、旧・社員独立制度では「加盟金免除」「研修費免除」「ロイヤルティ1%減免」という特典があり、費用としては「加盟金なし」「保証金100万円」「研修費なし」「広告費54万円」となっている。
これが新・社員独立制度では、特典として「準備金300万円支給」を設けた。一方で、加盟金を免除にしていたものを、「加盟金108万円」とした。そして、ロイヤルティを1%減免していたものを一般の加盟店と同様に5%とした。
このほか、社員独立の資格について新・社員独立制度では旧・社員独立制度に対して、「OMランク設定」と「GBYランク設定」という2項目が加わっているが、これはこれまでの社員独立を認めていた条件をより高度にするということだ。この「OM」と「GBY」については後述する。
「準備金300万円」でスタートダッシュができる
「準備金300万円支給」はとてもインパクトがあるが、この原資は新たに調達したものではない。旧・社員独立制度で「加盟金なし」を、新・社員独立制度で一般の加盟店と同様に「加盟金108万円」としたこと。そして、減免されていたロイヤルティ1%の5年分に相当する。つまり、これまで一般の加盟店と比べて優遇していた部分を集約して「準備金300万円」をつくり上げた。
この「300万円」の存在によって、社員の独立する動機を生み出すと同時に、自己資金を増やして銀行からの融資を受けやすい状態となる。つまり、スタートダッシュが切れる状態をつくるということだ。
同社FC開発本部FC開発部長の石井孝典氏がこのように解説してくれた。
「同社で独立を希望する社員に対して、自己資金200万~300万円を貯蓄しておく必要があると指導をしてきましたが、それを達成できずに独立に際して二の足を踏む人もいました。そこでこれに相当する金額が独立準備金として支給される制度があると、独立を志す人にとって入社する動機をもたらし、既存の社員にとっても独立を決断するきっかけとなるのではと考えました。さらに、独立を考えていなかった人も触発されるのではと考えました」
ちなみに同社では店舗に勤務する社員が約120人在籍していて、概ね20人が独立志望を表明している。社員独立に際しては、直営の既存店を選ぶことが可能で(SC内など、特別な条件のある店舗を除く)、売上・利益の実績が分かり、コストも新規に出店する場合と比べて抑えることができる。さらに、アルバイトスタッフも直営店当時の人材を引き継ぐことができる(これらは一般の加盟店も同様)。
技能レベルを見える化し、ビジネスパーソンを育てる
ここで、新旧の社員独立の資格にある「OM取得者」と新・社員独立制度に加わった「OMランク設定」と「GBYランク設定」について解説しよう。
「OM」とは「Operation Meister」を省略したのもので、同社が独自に設けた社員の技能レベルを示している。全部で9段階あり、スタートは「トレーニー」で最上位は「0M-1」。昇進するためには実技の試験を受ける。これは社員の実技に試験官1人がチェックする。このレベルが上がることによって、昇給する仕組みになっている。
お客さまの前でラーメンをつくることを許されるのは「OM-5」の段階で、それ以上のレベルは、ラーメンをつくるスピードと精度によって昇格していく。
旧・社員独立制度では「OM-5」の資格取得が条件とされたが、新・社員独立制度ではそのランクを高めることになる。
新・社員独立制度の資格として新たに加わった「GBYランク設定」とは、同社が運営するビジネススクールの「GLOBEAT YOUniversity(GBY)」取得したランクを意味する。
同社の経営理念の中に「ラーメン店従業員をビジネスパーソンとしていく」というものがあり、GBYはこれを元に設立された。
GBYの講座の内容は、基礎的な「GBY初期講座」(21講座)、店舗運営の在り方を学ぶ「GBY中期講座」(17講座)、経営者の心構えを学ぶ「GBY後期講座」(16講座)に分かれており、これらの講師は同社の社員が行う。社員は受講するが義務化されているが、アルバイトや一般の加盟店の人は希望があれば、どの講座も受講できる。各講義は毎月1回開催、1日で4講座ほど行われ、最後に試験が行われる。
「GBYランク設定」も「OMランク設定」と同様に、これから精査していくという。
ブランディングを高め、課題解決に挑戦する仕組み
花月嵐のラーメンは創作性に富んでいることが大きな特徴だ。創業時は「中華そば」のみのシンプルなものからスタートしたが、「ニンニクとんこつラーメン」「油そば」「和風つけ麺」と人気メニューの源流をつくり、そして年間10作品を投入する「期間限定ラーメン」が花月嵐のファンを生み出している。これまで「ブラック」「モンスター」「一番星」といったシリーズがファンとの結び付きを強くしている。このような花月嵐のブランディングはチェーン全体のクオリティが高まることによって新規のお客さまをさらに開拓していることになるであろう。
新・社員独立制度の第1期生の募集期間は前述したとおり、中途社員の採用人数を5人としている。「準備金300万円支給」とはとても分かりやすい打ち出し方である。これまで同社が試みてきたラーメン店チェーンとしての斬新な取り組みと共に、「人材採用対策」「社員独立の制度改革」「強いFCの在り方」に挑戦するものとして注目される。(フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸)
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