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FOODCROSS 2022プロローグ~カフェ・カンパニー楠本社長らが語るフード業界の未来と課題、価値の共創

2022年09月15日

FOODCROSS 2022プロローグ~カフェ・カンパニー楠本社長らが語るフード業界の未来と課題、価値の共創

9月22日に東京天王洲で行われる「FOODCROSS conference 2022」。変化する時代の中で、改めて "食" への向き合い方を見つめ直し、フード業界が他業界とともに発展していくための交流展示会だ。

これに先立ち、8月23日に「FOODCROSS conference~プロローグ~」が行われた。フード業界を知り尽くす6名が登壇し、それぞれからみる外食の価値、コロナ禍で起きた変化、ポジティブな未来へと活かす方策をディスカッションした。今回はその内容をお伝えする。

第一部 「外食業界を取り巻く環境・時代背景~未来予測~」 竹田 クニ氏
第二部 「日本の外食文化、食文化の価値と可能性 ~おいしい未来戦略~」 楠本 修二郎氏
第三部 高橋英樹氏×狩野高光氏 対談

第一部「外食業界を取り巻く環境・時代背景~未来予測~」株式会社ケイノーツ 代表取締役 竹田クニ氏

コロナ禍により「未来が加速してやってきた」

FOODCROSSprologue2022 株式会社ケイノーツ 代表取締役 竹田クニ 氏

株式会社ケイノーツ
代表取締役 竹田クニ 氏

コロナ禍では、消費者の行動にさまざまな変化が起きた。ステイホームでテレワークが普及し、接待や宴会需要の減少、さらに時短営業やオンライン購買の増加など例をあげればきりがない。竹田氏によると、これらの変化はコロナ禍に特有の現象ではなく「世の中の大きな変化が加速してやってきた」と考えるべきだという。

コロナ禍以前から外食産業にとって働き方改革やダイバーシティの推進、少子高齢化などへの対応は急務だった。その意味では新型コロナウイルスの流行で、10年後の未来が一気に近づいてきたという考え方をすべきだ。実際に、20世紀と現在を比較すると、すべての要素が逆になっていることが分かる。

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参照:竹田クニ氏登壇資料より(以下同様)

コロナ禍をきっかけに、20世紀の成功体験にとらわれず新しいビジネスの形を考えていくべきなのだ。

消費の主役世代が変化

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よく知られている通り、2008年を境に日本の人口は減少傾向にある。特に労働人口は80年代の3分の2に、18歳人口は団塊世代の約半分まで減っている。また人口の3割が高齢者で、大都市圏以外では人口がどんどん減っている。これが今の日本の現実だ。

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さらに2022年からは、団塊世代という人口のボリュームゾーンが後期高齢者となり、現在35歳~50歳の氷河期世代と呼ばれる約2千万人が大きな影響力をもつようになってくる。この約2千万人で日本の労働人口の約3分の1を占めるため、彼らが消費に与える影響は非常に大きい。氷河期世代の考え方は、それ以前の世代とは大きく違う。

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団塊世代からバブル世代までは、多くの人が信じる「良いもの」「成功モデル」がはっきりしていた。有名大学や大企業、ブランドなどに消費が集中し、好景気で明るい未来を信じることができた。

一方で、景気後退とともに社会に出た氷河期世代は、それまでの成功モデルが通用しなくなり、低成長で不安な時代を社会人として生きていくことになった。時代は多様性を重んじ、個を尊重する機運が生まれ、ブログやSNSといった個人の情報発信手段の普及も大きく影響し、時代は「個が分散する」時代に変化した。

また、氷河次世代、その下のZ世代と若年になるにつれて「ソーシャルグッド」に関する意識・感度が高くなる傾向があることも注目だ。

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竹田「若い世代ではソーシャルグッド=社会正義を重んじる考え方が強くなっています。各世代の著名人をみても、例えばZ世代では大坂なおみやグレタ・トゥーンベリさんなど、社会的な発言が目立つ人が多い。それだけ若い世代は、社会問題や世情の不安を自分のこととして考えているのです。外食産業側も、こうした消費者の価値観の変化に合わせたアップデートが必要です」

収入の二極化も見逃せない

一方、氷河期世代のうち団塊ジュニア世代(40代後半~50歳)の年収分布をみると、年収600万円以上は19%、中央値は400万円台、年収300万円を下回っている人が42%にのぼる。コロナ禍によって就業機会の減少、雇用不安が増えていると考えられる。

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竹田「よく『日本の外食は安くなってしまった。もっと価値を上げよう』といわれます。価値にふさわしい対価をいただくことは重要なテーマではありますが、一方、収入が低い人たちが大きく増える中で、汎用的な商品を工業的なアプローチで“安くて安心な食”として提供していくことも外食産業には求められているのです」

イートイン「7割市場」を前提としたビジネスモデルを

現在の外食市場データを見ると、イートインの外食市場規模はコロナ禍前となる2019年度の7割前後で推移している。コロナ禍による生活習慣の変化に加え、外食・中食・内食(小売)事業者のボーダーレス競争(例 外食の通販や中食のイートインなどそれぞれの領域へ進出する)が加速したことも変化に影響していると考えられる。竹田氏は「今後もこの傾向が続く」と指摘する。

竹田「イートイン市場はコロナ禍前の2019年比の 7割で推移しています。今後もこの傾向が続く中では、来客が7~8割でも利益が出せる体質に変わっていく必要があります。たとえばテイクアウトやデリバリー、通販など、いろいろな提供の仕方を組み合わせて前年比をクリアしていくような考え方が重要となるでしょう」

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外食産業を取り巻く環境変化は、

① 需要の減少
イートイン市場7割、会社宴会の減少、若年の飲酒思考現象
② 消費者の価値観変化
消費の主役世代交代、働き方、生活習慣変化、ソーシャルグッド
③ 供給コストの上昇
コロナ禍、ウクライナ危機による食材、エネルギー高騰、人件費の上昇

こうした“三重”の構造的な変化が重なっており、その変化は産業史上最も大きいといっても過言ではない。

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個別の単一の対応策・打ち手だけではこの大きな変化に抗することは難しく、外食産業は“産業モデル”のレベルで変化することが求められるのではないか。そのために必須といえるのがデジタル技術による業務革新=DXだ。

デジタル技術の活用によって、人が人にしかできない仕事に集中すべき

外食産業は20世紀に大きく発展を遂げ、その中でPOSレジやセントラルキッチンの設置、外注化、マニュアル化などによって効率を高め、店舗拡大、価格競争力の保持を進めてきた。しかしながら“失われた20年”と呼ばれる厳しい景況の中、こうした効率化・合理化の努力が「付加価値を削ってしまったのでは?」と多くの有識者も指摘している。

竹田「厳しい景況の中での競争・業績の追求が、偽装問題や異物混入、マニュアル化による没個性化、労働者への高い負荷を生んでしまった側面もあります。これからの時代は、デジタル技術によって、労働集約的な仕事を劇的にイノベーションすることが可能になってきました。機械でできることは機械に任せて、人は人でなければ生み出せない価値に集中することで、顧客にとっての“価値”を高めていくという考え方が重要と考えています」

外食産業こそ、人に投資を

テクノロジー活用と同時に、従業員の体験価値を上げていくことも非常に重要だという。

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図の左側は飲食店における“顧客にとっての価値”を表している。それは基本的に、商品サービスの品質やQSC、価格の妥当性によっておおむね決定されるが、“付加的な価値”=さらに上位の満足度は、ホスピタリティ、柔軟でパーソナルな対応などで向上する。その上位の満足度を実現するのが「人」だ。

一方、図の右側の従業員 にとっての “働く価値”は、基礎的に給与や職場環境にあり、さらに上位の“付加的な価値”は、その仕事を通じて成長を感じたり、自分の仕事に対するお客様の評価、店の組織での評価によって得られる自己肯定感、自己効力感にある。

顧客側、従業員側とも、付加価値は「人」によって実現されるものであり、人の創造力、意欲を高める仕組みや体制、マネジメントがあって成り立つ。価値創造に人の介在が大きい外食産業だからこそ、これからの外食産業では「HRM=ヒューマンリソースマネジメント」の重要性が高まる。

竹田「20世紀の飲食店は従業員が辞めてもそれを埋める新たな労働者が潤沢でしたから、労働集約的な仕事の見直しや教育投資を考える必要性が薄かったと思われます。しかしこれからの時代は、労働力市場はたいへん厳しく、日本人だけでなく外国人、シニア、主婦、超短時間労働者など、さまざまな労働条件、価値観の人々がひとつのチームで戦っていく時代です」

これからの外食産業は、テクノロジーで労働集約的な業務を減らしながら、多様な人材の能力を活かす新しい産業モデルを創っていくべきなのだ。

竹田「ある人は現場のスペシャリストとして輝き続けてもいいし、ある人は経営者としてステップアップするのもよいでしょう。様々な働き方、多様な価値観の従業員が、ひとつの理念・ビジョンのもとでチームを作っていくモデルが必要です。そのためにも、HRMで人の力を引き出し、対価性を上げていくことがますます重要になるのです」

外食の未来を創るキーワード

(1)食サ分離
食事とサービスの概念を分離すること。料理とサービスへの概念を分けることで、サービスの対価を含んだプライシングをする≒対価性を向上させる可能性がある。例えば、花火大会の日には、眺めの良い窓辺の席がアップチャージになるレストラン、創業者の大将が握る席はアップチャージになる寿司屋があってもよい。

ホテルや航空業界では既に繁閑や時季・曜日などによって価格が異なる「ダイナミックプライシング」は当たり前として消費者に認識されている。飲食店でも、時間帯で価格を変える「ダイナミックプ ライシング」の取り組みはできるはずで、意欲的な取り組みも生まれてきている。

(2)パーソナライズ テーラーメイド化
デジタル技術の進化によって、顧客1人ひとりの好みに合わせたチョイスが可能になる。「焼鳥IPPON」では、個人ごとに焼鳥の味つけ、ドリンクのアルコール度数、サラダの具材、トッピング、ドレッシングがアレンジ可能になっている。海外では唾液から摂取するDNAで個人に合った食材のリコメンドや、食事後の血糖値を測定するサービスなども登場している。

(3)アルコール・ダイバーシティ
厚労省の調査によると、日本人の成人の55.1%がお酒を「ほとんど飲まない」と回答し、若い人ほど「飲まない」比率が高くなっている。これからは単に「お酒が飲める・飲めない」という二軸で見るのではなく、「今日は飲みたくない」「運転があるから飲めない」「お酒が好き・嫌い」など多様なニーズに合わせたドリンクスタイルを提供していくべきだ。

オーガニックのソーダ類。ノンアルコールカクテル、ノンアルコールワイン、スタイリッシュなお茶など、お酒を飲まない人が楽しく過ごせるラインナップを飲食店が持つことが重要だ。

(4)イミ消費
世界的に全世代でSDGsの考え方は浸透してきており、特にミレニアル世代からZ世代は、未来を左右する社会問題への意識が高い。彼らに向けて、地球市民として大切な健康維持や環境保全、地域活性化、他者支援、歴史や文化への共感など、ソーシャルグッドにつながる価値を提供していくことが重要だ。

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竹田「SDGsはトレンドでも流行でもなく、これからの時代の価値における重要なキーワードです。若い経営者を中心に、SDGs的な新たな価値創造に熱心に取り組む人が増えています。これからの消費の主役世代「氷河期世代」「Z世代」はソーシャルグッドに対する感度・意識が高く、“イミ消費”的な飲食店の価値づくりは重要になってくるでしょう」

(5)ジャパンプライド
日本が持っている素晴らしい食文化を見つめ直し、価値を磨いていくこと。日本回帰、昭和回帰、地方創生など、こうした取り組みには共感が集まりやすい。近年、クラウドファンディングでの取り組み成功例も増えている。

竹田「外食産業は、①需要の減少、➁消費者のニーズウォンツ変化、③供給コスト上昇という三重の構造的な変化にさらされています。それは、外食産業の歴史上、かつてない大きな変化であります。外食産業は20世紀の成功体験から脱却し、DXを前提とした産業モデルレベルの進化が問われています。顧客そして働く従業員にとって魅力的な産業となるために、官民をあげてイノベーションを進めていくことが必要でしょう」


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