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第4回外食SX勉強会レポート〜人材不足対策は「採用するな。育てろ!」(カンテラ神田社長)

2022年09月13日

第4回外食SX勉強会レポート~人材不足対策は「採用するな。育てろ!」

外食企業の若手経営者が集う会員制サークル、外食SX。CSV経営の普及と研究をテーマに飲食店経営者をゲストに招いて、講演や座学などの研修を毎月1回開催している。

第4回目が7月に開催され、第1部のゲスト講演では株式会社カンテラ 代表取締役 神田俊勝氏と株式会社LEAD LIVE COMPANY 取締役福社長 遠山啓之氏が登壇し、それぞれ独自の立場からCSV経営について解説した。つづく第2部では、外食SXの代表幹事である株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏が座学形式の講師を務めた。それぞれの内容を紹介する。

第1部ゲスト講演~飲食業界の人手不足に、どう対応するか~カンテラ 神田俊勝氏

株式会社カンテラの神田社長は大卒後の2001年に株式会社大地に入社し、同社が運営する牛角 西院店 店長を皮切りに店舗展開に従事。2006年には専務取締役に就任して、20年間で20業態60店舗の出店を果たし、毎年10名以上にのぼるアルバイトから社員化する仕組みを構築した。以来、10年以上にわたって「社員の採用費0円」を実現している。2020年に独立してカンテラを設立し、採用課題解決を行う採用支援コンサルティング事業に取り組んでいる。

人材不足解消の妙手「採用するな。育てろ!」

第4回外食SX勉強会レポート~人材不足対策は「採用するな。育てろ!」

株式会社カンテラ
代表取締役 神田俊勝氏

神田:私がCSV経営を知って社会課題を解決していく必要性を理解したとき、飲食業界で古くから問題となっていた人材不足こそ、その社会課題であると捉えるようになりました。そこで得た結論は「採用するな。育てろ!」です。

人手不足といっても社員になる人材が少ないだけで、従業員の85%を占めるアルバイトはいます。そのアルバイトたちが社員になるような会社を作ろう、というのが私の提案です。

アルバイトを社員登用するカンテラ方式と採用メリット

神田:アルバイトから社員へ採用する形式を、私は「カンテラ方式」と呼んでいます。サッカーのスペインリーグでは、球団が下部組織を作り、人材を幼い頃から育成しています。その下部組織をカンテラといいます。飲食業界でもこの方式を適用できないかと考えました。

カンテラ方式のメリットはいくつかあります。ひとつは、1人当たり50~100万円といわれている採用費をゼロに抑えられること。次に、社風に馴染んでいるから簡単には辞めないので、離職率が抑えられること。そして、スキルをイチから教える必要がないため新入社員研修もわずか1日で済んでしまうこと。

カンテラ方式が稼働すれば、採用の自走化が始まるはずです。アルバイトを育てることが、すなわち採用活動であり、社員教育であり、組織の風土醸成につながっていくのです。

導入のための3つのフロー~労務環境、店舗教育、制度の構築

神田:カンテラ方式を実現するための第1ステップは、労務環境の整備です。いまの世代のアルバイトの子に話を聞くと、彼らは仕事に対して楽しさ、やりがいや成長、給与を求めているのが分かります。この3つのポイントを押さえることが大事だと考えています。

働くことへのモチベーションを高めてあげる工夫や、対人スキルが上がった、夢を持つことができたなど、やりがいや成長につながる仕掛けも必要でしょう。給与について私は時給相場+100円という条件を提示するようにしています。その他にも交通費や賞与など、他にはない“売り”を明確にすることが大事です。

第2ステップは、店舗教育の構築です。アルバイト教育のための社内トレーナーを育成するのです。社員だけでなく、アルバイトがアルバイトを教えるようになれば、強い組織になります。人に教えることで、教える当人も成長するからです。特定の社員だけでなく、スタッフすべてが人事部であるという意識を持つことにもなります。

第3ステップは、会社制度の構築です。ここでいう会社制度とは、横と斜めの関係を作ることを指します。たとえば新宿店と池袋店のアルバイト同士の関係が横の関係です。新宿店のアルバイトと池袋店の店長との関係は「斜め」となります。斜めの関係が持てるようになれば、所属する店舗だけでなく会社全体の状態を見るようになるので、視野が広がり、モチベーションが向上し、大きな自信になります。

定期的な料理コンテストでもいいし、接客についての勉強会でも構いません。そうしたイベントの年間計画を作り、異なる店舗と交流する制度を構築することが必要なのです。

そして最終段階が、社長や幹部社員によるクロージングです。食事会などで社長や幹部社員がアルバイトと接する場を作り、ワクワクする未来を見せてあげることが重要なのです。アルバイトにとって社長に知ってもらうことはうれしいことですし、社長からビジョンを示されることは何より仕事に自信を持つことに繋がるはずです。

新規採用するのではなく、いまいるアルバイトに未来を見せてあげること。それこそが飲食業界が抱える恒常的な人材不足を解消するための、何よりの近道になるのではないでしょうか。

第1部:ゲスト講演2. いま問われる「新サービスの力」とは~LEAD LIVE COMPANY遠山啓之氏

第4回外食SX勉強会レポート~人材不足対策は「採用するな。育てろ!」

株式会社LEAD LIVE COMPANY
取締役副社長 遠山啓之氏

遠山氏は、20年以上にわたって飲食業の接客と教育に携わり、2020年11月に株式会社LEAD LIVE COMPANYを立ち上げた。「接客の見える化」「接客力の重要性」をテーマにしたセミナーや自著を手がけるほか、学校の臨時講師や企業の接客研修を務めるなど、その活動範囲は幅広い。

「サービスの力」を図る接客マップ

遠山:飲食経営の最も重要な性質のひとつに、接客力があります。その接客力を上げるために「接客力マップ」というものを作りました。無形の接客スキルを、有形化、理論化するためのツールです。このマップでは接客を「コミュニケーション」「知識」「技術」「ユーモア」4つのカテゴリーに分けています。

接客力の向上を目指す場合、多くは「知識」と「技術」から着手しますが、どちらも経験に基づくもので、日々の積み重ねで身につけるしかありません。まずは「コミュニケーション」を伸ばすことから始めたほうが、効果は早く出てきます。

アイコンタクトを意識しなさい、といわれれば、今日からでも意識できますよね。お客様の目を見ようとするし、アイコンタクトを受けたお客様からも「自分の話を聞いてくれそうだ」と好感の笑顔を引き出しやすくなります。

接客力は人間力、そしてセールス力

遠山:あくまでも接客力のベースには人間力があります。誰かに喜んでほしい、誰かの悩みを解決したい、世の中に貢献したい、他人に対する感謝の気持ちをもっていたい、そういう思いを持っているだけでは不十分で、それを表現する力をもってこそ、人としての魅力、つまり人間力に繋がるのです。

その人間力も、最終的にはセールス力に繋がらなければなりません。私は「売上をあげろ」とはいわずに「ファンを作りなさい」と言っていますが、人間性から滲み出る笑顔がファンを作り、結果として売上に繋がります。これが接客力、サービスの力です。

コロナ禍を経て見えてきた「接客イノベーション」

遠山:いまの飲食業界では、接客がテクノロジーに置き換わりかねないインパクトが起こっています。配膳ロボットやモバイルオーダーなど、スタッフ不足による省力化を目的としたテクノロジーの発展がそれです。

接客があまりにマニュアルに偏りすぎていたために、テクノロジーの導入によって接客力の低下が起こることが懸念されますが、いまはむしろ、テクノロジーと共存することで接客が変革する時期に来ている、と捉えるべきではないでしょうか。

接客の変革期に求められる「新サービスの力」とは

遠山:今後あるべきサービスについて、私は「新サービスの力」を提唱しています。その新サービスには7つの「シン」があります。

ひとつは「進化」です。DXが進み、いまはあらゆる事務的な業務がデジタル化されています。単純作業の多くをテクノロジーが代行してくれれば、その分、より人間的な接客に時間をかけられます。店舗としての顧客から、スタッフそれぞれの個客を獲得していく好機なのです。

「深化」は、サービスを深掘りしてアップグレードさせていくこと。例えば辛い食べ物を提供するとき「どんな辛さか」をより的確に説明できればお客様の笑顔に近づけます。「舌のしびれるような」「汗が噴き出るような」「焼けるような」など、辛さの程度が想像できる表現は様々です。ワードチョイス一つにしても深化させることができるのです。

7つの真~「新」「進」「新」「真」「芯」「神」「心」を意識する

遠山:そして「温故知新」の「新」。お客様の新たなニーズを見抜いて、きちんと対応することです。コロナ禍以降、外食に楽しさを求める傾向があるといわれています。だからこそお客様とコミュニケーションをとることで一緒に楽しむ方向にシフトしてもいいでしょう。

次に「天真爛漫」であることの「真」。人としてチャーミングであることが求められていて、そのためにはニーズに即応できる瞬発力や、気の利いた一言を口にできる発信力なども不可欠です。そして「芯」を捉えること。水が欲しいといわれて、その人に水を持っていくのはグッドサービス。何人分必要かを確認して人数分もっていくのがベストサービス。動きをみて水が欲しいと声がかかる前にもっていくのをジャストサービスと表現するならば、この“ジャスト”が大事だということです。

「神髄」の「神(シン)」も重要です。これは物事の本質を見極めること。ここではコミュニケーションの本質を考えてみましょう。人が情報を受け取る際に、目からのインプットが全体の55%、耳からの情報が38%、残りの7%が言語によるのだそうです。表情、アイコンタクト、アクションという目からの非言語情報はもちろん、耳障りのいい声や話し方で耳からの非言語情報もブラッシュアップできます。そして気の利いた一言、ウィットに富んだ切り返しなど、言語によるコミュニケーションも努力次第で磨くことができます。

最後の「心」は、お客様の心を震わせること。それには感動のレベルを知ることです。きちんとした言葉遣いができていれば「感心」されます。相手に言われる前にニーズを提供できれば「感激」されます。想像を超えたサプライズがあれば「感服」され、忘れられないほど心に刻まれる対応ができれば「感銘」を与えられます。狙ってできるわけではありませんが、少なくとも感動のレベルには段階があることを知れば、それが努力目標になるはずです。

コロナによる価値観のシフトが余儀なくされている中、新たなサービス力を獲得するために、7つの「シン」を意識してみてください。

【第2部:座学】パーパス、ビジョン、ミッションの整合性~和音人 狩野高光氏

第2部の座学では、毎回恒例となっている狩野氏による連続講義の第4回目が披露された。今回も、前回までの復習の後に、CSV経営における「パーパス、ビジョン、ミッションの整合性」をテーマにした講義が繰り広げられた。

実例紹介~変化するパーパス、ビジョン、ミッション

第3回外食SX勉強会レポート 株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏

株式会社和音人
代表取締役 狩野高光氏

狩野:株式会社スマイルリンクルの代表取締役である須藤剛さんは、CSV経営を実践することで自社の理念が変わったといいます。株式会社カオカオカオ代表取締役の新井勇佑さんもCSV経営を目指すことで視野が広がり、理念やミッションを変更せざるを得なかったというのです。お二方に実例を伺っていきます。

須藤:当社は創業29年を数えますが、多少の変更はあったにせよ、一貫して一つの理念を掲げていました。「全員が豊かな笑顔であり続けるため、優しい人、強い人、愛嬌のある人を育てます」というシンプルなものでした。しかしCSV経営を意識したときに、理念のなかでいう「笑顔」が誰に向けたものなのかと考えてしまったのです。これは内向きの笑顔ではなかったか、もっと外を向くべきではないかと考えて理念を変更しました。ミッションとビジョンを変更し、従来の理念をバリューとして盛り込みました。

新井:自分が初めてタイ料理に遭遇したときの驚きと感動を日本に持ち込みたくて、わが社の理念は「タイ屋台のワクワクを通して日本を笑顔にする」としました。しかしCSV経営を意識したときに、生産農家や流通業者、製造業者にまで視点が広がり、これまでの理念が現実に沿っていないと感じたのです。今は「タイカルチャーのワクワクを通じて…」とビジョンが変わりました。あわせてミッションも変える必要がありそうです。

狩野:新しい経営の手法を取り入れたら理念が変わるのは当然です。必然的にパーパスもビジョンもミッションも変化しますが、これは変化というよりグレードアップしたと考えるべきでしょう。

実例紹介その2~株式会社和音人の場合

狩野:わが社のパーパスは「子どもたちに選べるミライを。大人たちに選べるチカラを」。スローガンには「全ては次の世代のために」とうたい、その下に企業理念やビジョン、ミッション、行動基準などを定めています。

店舗でお客様に評判を聞くことがあるのですが、「食育の会社だよね」とか「職人集団でしょ」とか「食へのこだわりが強い」などと評価されています。これらの評価は、不思議なことにいずれもわが社のパーパス・ビジョン・ミッションからずれていません。その理由は、出発点がしっかりとしていたからだと考えています。

そもそも会社を起こす際に、外食企業は食育をテーマにすべきだという強い思いがありました。その理由はいくつかあって、父親が癌になったことをきっかけに、日本では延命治療はトップクラスでも予防医学への意識が低いと感じられたこと。その過程で、日本の食品の安全性が担保されていないことに気づきました。私の子供の世代の発達障害の割合が高いことや自殺大国であることも、食品問題と切っても切れないと思っています。自分自身がバセドウ病であることも食育と真剣に取り組む下敷きになっていました。食育の必要性を強く感じていたからこそ、確固たる理念が打ち立てられたのかも知れません。

マーケティングマトリックスの活用を

新たな課題に取り組むことでCSV経営への視点が広がり、理念が変わる場合がある。その際、パーパス・ビジョン・ミッションが、それぞれに整合性がとれていること重要だと狩野氏はいう。

狩野:常に整合性を保つ必要があり、有力なツールになり得るのが「CSVマーケティングマトリックス」です。その際、自社の視点やスタンスに留意して「社会、お客様、パートナー、自社それぞれの価値を生みながら、社会、お客様、パートナー、自社それぞれの経済価値に繋がっているかどうか」を見ていくこと。つまり8つの視点でみるスタンスが重要になってきます

CSV経営におけるパーパスの設定方法を学び、時代の変化に応じた理念のブラッシュアップが必要であることと、その方法までが指導され、CSV経営を学ぶ研修は、今後ますます内容を深くしていくようだ。

外食第5世代 未来型会員制サークル 外食SX(エスエックス)
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