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第3回外食SX勉強会レポート〜令和の時代に選ばれる飲食店になるために(Elevation山崎聡社長)

2022年09月06日

第3回外食SX勉強会レポート~令和の時代に選ばれる飲食店になるために

外食企業の若手経営者が集う会員制サークル「外食SX」は、経営者をゲストに招いた講演や座学などの研修を毎月1回開催している。

2022年6月に開催された第3回目では、第1部のゲスト講演に株式会社Elevation の代表取締役で、NPO法人居酒屋甲子園の7代目理事長でもある山崎聡氏が登壇。第2部の座学では、外食SXの代表幹事を務める株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏が講師としてグループワークを中心とする勉強会を展開した。第1部、第2部の内容をお伝えする。

第1部ゲスト講演~令和の時代に選ばれる店・会社になるために(Elevation 山崎聡氏)

山崎氏は、2002年に新潟市万代エリアで居酒屋Soiをオープンし、現在は3店舗を展開している。地域に密着した経営スタンスと人材育成術が評価され、2018年の第13回居酒屋甲子園全国大会では日本一を獲得した。

ところが同氏は、「店を出すことが夢だったので、その後に店をどうしていきたいのか、何のために店を続けていくのかが見えなくなって、2008年には売り上げもどん底まで落ちた」という。やがて居酒屋甲子園に出会い理念経営の必要性を感じ、外食5G(現・外食SX)でCSV経営(共通価値の創造)について学んだと話す。

そうした経験を踏まえて、今回の講演では「令和の時代に選ばれる店・会社になるために」をテーマに、理念経営やCSV経営の必要性を説いた。

世界的な価値観の転換期

山崎 私は会社や店を経営していくにあたり、何よりも経営理念や目的を持つことが重要だと考えています。短期的な目標を持っても、実現してしまえば次に続くモチベーションにつながりません。永続的なテーマを持つことが必要です。

理念や目的をもつための第一歩として、まずは世界の変化を知る必要があります。西洋占星術の世界では、200年周期で、地球規模で価値観が変わるとされ、2020年12月から新たな時代に突入すると説かれていました。まさにCOVID-19のパンデミックをきっかけに、価値観が一気に21世紀型にシフトしたことを指しているのではないでしょうか。

では、何が変わったのか。物質やお金を大事にしようという考え方から、知識・情報体験を優位に捉える考え方もそうでしょう。所有から共有、性別や国籍特性からボーダーレス、組織からフリーランス、個による実績から協働による成果など。様々な局面でいま世界が変わりつつあり、また変化が余儀なくされています。まずはそれを認識することが重要です。

他人軸から自分軸

第3回外食SX勉強会レポート 株式会社Elevation 代表取締役 山崎 聡 氏

株式会社Elevation
代表取締役 山崎 聡 氏

山崎 なかでも大事な変化は、他人軸から自分軸へのチェンジだと思います。日産のカルロス・ゴーン氏は、就任したとき幹部を前に「3つの質問」を投げかけたそうです。1つ目の質問は「まず日産の何が問題なのか」。幹部たちは、先を争うようにあれが問題だ、これが問題だと話し出しました。続いて2つめの質問「それらの問題に対する解決策は何か」。やはり幹部たちはわれ先に手を挙げて発言し、よくぞ聞いてくれた、問題点と解決策がわかればもう安心だ、などと話し始めました。

そこに最後の質問が飛んだそうです。「では誰だれがそれをやりますか」。その瞬間に居並ぶ幹部たちは一気に黙ってしまったそうです。そしてゴーン氏が言いました。「これこそが今いまの日産の問題なんだ」と。問題も対策も分かっているのに業績が振るわないのは、誰もアクションを起こさないからだというわけです。転換期を迎えた中で大事なのは、「誰かがやる」ではなく「自分がやる」という主体性、自分軸が重要なのです。

日本人の価値観はどう変化したのか

山崎 一方で、日本はどうだったでしょうか。戦後に巻き返しを図って猛烈に働くことで高度成長期を迎え、やがて世界に冠たる経済大国を自負する日本も、1990年代半ばになってバブルが弾けると、今度は一気にしぼんでしまう。平成年間は失われた30年などといわれてしまいます。

それは、20世紀から21世紀へとパラダイムがシフトしたにもかかわらず、日本人が適応できなかったからと考えられます。経済が右肩上がりだった世代の日本人が、20世紀の成功意識をもったまま平成を担う子供たちを教育していたわけです。一流大学に入って一流企業に勤めれば一生安泰に過ごせると。そんなものはもう幻です。そのことに気付かないと意識の変化など起きるはずもなく、ましてや主体性が育まれることはあり得ません。

経営理念と自分理念

山崎 個人が主体性を発揮しても、方向性がバラバラでは組織は動きません。ここで必要なのが経営理念です。会社の創業者は、自分のやりたいことを経営の形で表現しています。つまり創業者にとって自分の理念と会社の理念は、当然ながら一致しています。ところがスタッフ一人ひとりはどうかといえば、何もしなければ同じ方向を向くわけがありません。

だから経営サイドはアルバイトを含むすべでのスタッフに、経営理念を落とし込まなければならないのです。経営理念が浸透していけば、全社員の自分理念と会社理念が近しい距離に置かれることになります。こうなれば目指す方向を共有でき、自分の役割に沿った協働が可能になります。

組織から滲み出る理念、それこそがCSV経営

山崎 そもそも理念とは何か。それは「社会の中で自分が何のために存在するか」を示すものと捉えられます。社会に対して自分が何をしたいのか、何を目的とするのか、どうすれば充足を感じられるのか。それが理念になっていきます。

私は採用現場で、あるシートを活用しています。シートの左側に、尊敬する人、憧れる人を複数書いてもらいます。右側には、なぜ憧れるのか、なぜ尊敬するのか、理由を書いてもらいます。最後に右側の理由だけを並べてみると、そこには「なりたい自分」が浮き彫りになっているはずです。それこそが理念なのではないでしょうか。

自分を客観的に、いわゆる3人称の視点で見つめ直すことで「自分理念」が明確になります。スタッフの一人ひとりがこの視点をもっていれば、組織全体から理念がにじみ出ているような、そんな会社が出来上がると思いませんか。そうなれば、末端まで理念が浸透した組織になるでしょう。

組織から滲み出る理念があってこそ、CSV経営が成り立っていくのです。時代の変化を理解し取り入れ、そしてCSV経営をしっかりと進めていくこと。それこそ「令和の時代に選ばれる店・会社になる」ための近道であると信じています。

第2部座学~マクロ分析の実践(和音人 狩野高光氏)

第2部の座学では、株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏による過去の講座の復習とマクロ分析についてのグループワークが行われた。狩野氏はこの勉強会を主催する外食SXの代表幹事として、過去3回の座学の講師を任じてきた。その第1回目講義ではCSR経営とCSV経営の違いについてと、CSV経営の必要性を解説した。

第1回講義復習 CSV経営をもっと身近なところから

第1回の講義後に、参加者から「たとえばSDGs含め、社会的課題を担うのは1企業として荷が重すぎる」という声が出たと狩野氏は明かす。

第3回外食SX勉強会レポート 株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏

株式会社和音人
代表取締役 狩野高光氏

狩野 たしかに社会課題の解決というと大層なテーマのように思えてきます。ましてやCSVをSDGsと一緒にして考えてしまえば尚更です。ただし、あくまでもCSVとSDGsは別物です。SDGsとはあくまでもCSV経営を継続実施していくなかで達成できる副産物に過ぎません。とはいえ、CSV経営の立案から計画策定、実施までを考えると、やはり重荷に感じてしまうのは無理もないところです。

これにはもっと身近な社会課題から取り組めばいいと思います。たとえば飲食店における『食領域』に関することから考えてみてはいかがでしょうか。最近食材が値上がりしています。それは物流費が上がっているからで、原因は石油高騰にあり、その原因はロシア起こした戦争ではないか。こう考えていくことで、物流費削減のためにはこんな方法があるという目標が見えてくるかもしれません。まずは社会課題を分析し、少なくとも考えてみて、CSVマインドを育てていくことから始めることが大事なのです。

第2回講義復習 目的に応じた各種分析方法を駆使する

続けて狩野氏は第2回講義を振り返る。社会課題を捉えた後、これをどのようにCSV経営に活かしていくのかを解説した。

狩野 CSV経営を可能にしていくためには分析が必要ですが、一口に分析といっても、様々な手法があります。前回講義では各種分析方法とその手法について勉強しました。

市場環境を分析する3C分析、業界の魅力度を測る5フォース分析、自社とそれを取り巻く環境について分析するSWOT分析。そのSWOT分析で利用した4項目を掛け合わせることで取るべき戦略を明確にするクロスSWOT分析があります。

各種の分析手法によって、定性的なデータを数字に置き換えて把握しやすくします。これこそ分析の最終的なゴールです。その数字をもとに社内で生み出した戦略があれば、あとは全力で目標達成に動けるはずです。

こうした分析を通じて、情報やデータ同士の関係を見抜く力、ばらつきに気づいて例外を見抜く力、時系列で捉えて規則性・等質性などを捉える力、組み合わせて新たな発見を見出す力、構造化して全体から見た構図を把握する力がつきます。この力がCSV経営をうまく機能させていくことになるのです。

参考記事:第2回外食SX勉強会レポート~CSV経営に必要な分析手段と方法~

第3回講義~その場で実践できるマクロ分析(和音人 狩野高光氏)

ここから第3回講義に進んでいく。ここで狩野氏は、大きな市場を捉えるための分析手法を紹介する。

狩野 市場を捉えるためには、事業を取り巻く外部環境をみていく必要があります。このときに使うのがマクロ分析です。具体的には、政治的(Political)環境、経済的(Economic)環境、社会的(Social)環境、技術的(Technological)環境を分析します。それぞれの頭文字を取ってPEST分析ともいわれています。

政治、経済、社会、技術に関するグループディスカッション

ここから参加者が2~3人ずつのグループに分かれ、ディスカッションが行われた。最初のテーマは、現在の政治について。特に、経営に関わってくる政治的環境についてだ。数分のディスカッションで出た話題の一部は下記になる。

「自民党は出資金倍増政策へと舵を切り始めたが…」
「雇用調整助成金が打ち切られた後の飲食店への影響について」
「岸田政権になって移民受け入れを拡大するというが…」

狩野 出資金が倍増されれば、飲食店も新たな補助金が受けられるかもしれません。雇用調整助成金が打ち切られることを想定して、早めに手を打つことも可能です。移民枠が増えれば、外国人労働者にも会社理念を理解してもらう工夫が必要です。

続けて経済的環境、社会的環境、技術的環境について、それぞれディスカッションの機会が設けられた。グループごとにディスカッションされたテーマは、新聞の片隅に載った見出しや、経済誌の特集記事、またはネットニュースから引用した内容となった。情報を収集し、他者と話し合うことで、論点が整理され、意見が集約していき、分析されていった。

狩野 これこそが分析の第一歩です。いま皆さんがディスカッションしていく中で、不明な点はスマホを開けば調べられます。やろうと思えばその場でできるでしょう。ごく身近なテーマを見つけ、様々な手法を駆使して分析します。

そして自社の強み・弱み、取り巻く環境がわかってきたら、失敗の少ない戦略が立てられます。自分たちの力を最大限発揮できる事業だとわかれば、そこに投資していくこともできます。これがCSV経営の実践に繋がっていくのです。

変化する時代こそ、経営理念で方向を照らすべき

価値観が大きく転換する時代では、企業経営はいかに主体性をもって物事を考え実践するかが重要だ。経営者は主体性の方向を定めるために経営理念を模索しなくてはならない。その際に自分の置かれた環境を分析することで、おのずと進むべき道が見えてくる。そのためにはまずは身近なものを、CSVマインドをもって観察し、分析する力を養うことが重要になってくる。

CSV経営というと難解なイメージがあるが、今回の勉強会では身の回りの気付きから実践できることが語られており、研修後の参加者たちの興奮は、なかなか冷め切らない様子だった。

外食第5世代 未来型会員制サークル 外食SX(エスエックス)
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公式ホームページ:https://sx-terroir.com/


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