業界動向

止まらない飲食店の値上げ。売上と客数を落とさない食材高騰対策方法

2022年08月25日

止まらない飲食店の値上げ。売上と客数を落とさない食材高騰対策方法

原材料やエネルギーの高騰が相次ぎ、頭を悩ませている飲食店のオーナーも多いだろう。大手チェーン店が続々と値上げに踏み切る中、「値上げすると客足が遠のくのではないか」と不安視する声も少なくない。

今回は、値上げをしても飲食店の売上や客足を落とさないためのポイントを大手外食企業の価格改定事例をもとに解説する。

あらゆる食材の価格が高騰

2021年頃からコロナ禍による影響で、あらゆる食材の価格が高騰している。帝国データバンクが食品メーカーを対象におこなった「食品主要 105 社 価格改定動向調査」では、飲食料品メーカーの7割超が1年以内に値上げすると回答し、今年中に6,000品目以上が値上がりする見込みだという。値上げとなった品目の中で最も多いのはハムや水産物の加工品だった。

関連記事:帝国データバンク「食品主要 105社 価格改定動向調査」

輸入食品やエネルギー価格も高騰

他にも、ロシアウクライナ情勢の影響で、小麦やカニ、サケといった水産物や、牛の飼料となるトウモロコシが価格高騰し、食肉が急激に値上がりする「ミートショック」が起こっている。農林水産省の調査では8月の輸入牛肉(冷蔵ロース)の全国平均小売価格は100gあたり327円で、前年を1割上回った。さらに円安などで原油高の高騰が進んだことから輸送コストや電気代も値上がりし、飲食店の経営をひっ迫させている。

品目輸入牛肉
(冷蔵ロース)
国産牛肉
(冷蔵ロース)
豚肉
(ロース)
鶏肉
(もも肉)
鶏卵
(サイズ混合・10個入り)
令和4年8月
(8/1~8/3)
価格 327円 832円 265円 125円 220円
平年比 111% 104% 101% 99% 103%
(単位:円/100g、鶏卵は円/1パック)
参考:農林水産省「食品価格動向調査

吉野家によるメニューの値上げを最小限に抑える事例

急激な輸入牛肉の価格高騰や原油の価格高騰の影響を受け、飲食店では値上げラッシュが止まらない。牛丼チェーンの吉野家を例に見ていこう。

吉野家ホールディングスは、2021年から2022年にかけて、牛丼や豚丼などの定番メニューを値上げした。牛肉を使った牛丼の並盛(+39円)や、牛皿定食 並盛(+55円)は、40〜50円前後の値上げとなった。

 改定前価格改定後価格
牛丼 並盛 352円 388円(36円値上げ)
豚丼 並盛 352円 358円(6円値上げ)
牛皿定食 並盛 498円 548円(50円値上げ)
牛鮭定食 548円 598円(50円値上げ)
牛皿 並盛 302円 318円(16円値上げ)
豚皿 並盛 302円 308円(6円値上げ)
牛カルビ皿 並盛 458円 498円(40円値上げ)
(価格はすべて本体価格)
参考:吉野家「一部商品 価格改定のご案内 (2021年10月分)」一部抜粋
参考:吉野家「一部商品 価格改定のご案内 (2022年1月分)」一部抜粋

メニューの値上げの算出方法

食材の高騰が進む中、メニューの値上げに踏み切れない飲食店が一番危惧しているのが、価格改正により客離れを招くことだろう。

価格改定をせざるを得ない状況下で、いかに顧客満足度を落とさずに飲食店経営をしていくべきか。大手回転寿司チェーン店の事例を参考に、価格改定の際の工夫やポイントを紹介する。

原価が安いメニューを増やし、価格が上昇する食材を減らす

<くら寿司の値上げ事例>

・1皿110円のメニューを約70種類⇒約60種類に変更
・1皿220円のメニューを19種類追加
・「エビアボカド」の値段を110円⇒220円に変更し、スライスしたアボカドの枚数を2枚から4枚に増量
・「あぶりチーズサーモン」の値段を110円から220円に変更し、チーズを増量して「【炙りたて】Wチーズサーモン」と変更

2022年7月、回転寿司チェーン大手のくら寿司はこれまで原則すべて1皿110円で提供していたメニューの一部を減らし、1皿220円のメニューを追加した。また、値段の改正とともにトッピングの増量やメニューの見直しを行い、イメージアップも図っている。

<スシローの値上げ事例>

・価格高騰している食材を使用したメニューはレーンに流す量を減らす
・郊外型店舗において、一番安い価格帯の黄皿は1皿110円から120円へ、赤皿は1皿165円から180円へ、黒皿は330円から360円へと価格を改定

大手回転寿司チェーンのスシローでは、材料の価格高騰について「2022年2月期 決算短信では下半期の原価は大きく変動しない」と想定しつつ、「海外から輸入する食材は為替の関係で価格が上昇する。 一部の食材は下半期に契約更新の時期を迎えるものがあり、これらの食材については価格の上昇は避けられない」とした。

くら寿司やスシローは、人気メニューを含め全体的に値上げする方法を取っているが、看板商品を値上げすると消費者の足が遠のいてしまうケースもある。その場合は、出数の少ないメニューやトッピングの価格を上げて総合的な利益を底上げすることで、客単価アップにつなげている。

原価が安いものと高いものをセットにして販売

マクドナルドなどのハンバーガーチェーンのセットメニューは、原価が安いポテトやドリンクを、原価が高いハンバーガーとセットで販売することで利益を保っている。

一方、円安や原材料高の影響を受け、マクドナルドは今年3月から一部品目の店頭価格を10円~20円値上げした。価格改正した翌月の4月の客数は、前年同月比より3.9%増、5月は4.8%増、6月は7.7%増といずれも値上げの影響は受けていないようだ。

売上を伸ばした要因として、一部メニューは値上げしたが、看板商品を手ごろな価格で販売するキャンペーンなどを行い、売り上げ増加に寄与したと同社は説明している。

値上げ時の価格設定の考え方

原材料の高騰などの影響により対策を講じる必要があるが、その際の価格設定方法について考えてみよう。

まず、原価率を維持するための価格設定を計算し、値上げの幅を決定しよう。また、競合店やよく似た規模の店舗での値上げ率を参考にするのも良いだろう。

別の方法として、価格は変えずに商品の分量や質を下げてコストダウンすることで実質的に価格改正する手法もある。ただし、これまで提供していた量・品質と異なることに消費者が不満を抱くデメリットもある。

メニュー自体の値上げをするにも、内容量や質を下げて価格を維持する実質値上げをするにも、顧客によって賛否両論だ。競合店やよく似た規模の店舗での値上げ率を参考にするのも良いだろう。

関連記事:わかりやすいメニューの原価率計算方法と飲食店の利益率改善策

価格改定を知らせるタイミングと方法

グルメサイトを運営する株式会社ぐるなびは、6月に20代~60代のぐるなび会員1,000人に向けて「外食の値上げ」に関する調査を実施した。その結果、約7割の人は飲食店の値上げを実感したと回答。その一方で「外食の値上げは仕方ない」(55%)、「値上げは当然」(18%)と7割以上の人が値上げに対して理解を示している。

値上げする際は、店頭掲示やSNSなどで事前に告知をしよう。値上げの理由、開始時期、どれくらいの値上げするのかなどを価格改正前に告知することで、お店の誠実性や顧客からの信頼度がより高まる。また、値上げに関してだけでなく、価格改正による商品の質の向上があれば、その付加価値を伝えることも効果的だ。

関連記事:【ぐるなびリサーチ部】外食の値上げに関する調査

価格改定の際には、顧客満足度の向上の考慮を

先にも挙げたように、市場調査の結果によると、原材料が高騰する中での飲食店の価格改正に対して多くの人が理解を示している。

しかし単純に値上げするのではなく、価格改正に伴いメニューをリニューアルして質を高めたり、看板メニュー以外の商品の価格を値上げしたりして、顧客満足度を高めることが重要だろう。

引き続き厳しい状況は続くが、まずは原価率やメニューの見直しを行い、顧客満足度の向上を図り売り上げアップにつながる経営方法を工夫していこう。

すぐできる!飲食店の食材高騰対策~仕入れ・メニューの見直しポイント~

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