業界動向

飲食店の深夜営業再開による長時間労働問題。労働環境の改善と対策方法

2022年08月08日

飲食店の深夜営業再開による長時間労働問題。労働環境の改善と対策方法

コロナ禍による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令された時は、飲食店に時短営業の要請があり、夜8時で閉店するところが多くあった。しかし最近では発令がなくなったことで、夜遅くまで営業時間を延長している店舗も増えている。

ただ、時短営業の影響で人員が減っている状態での通常営業の再開は従業員の負担が増え、長時間労働が起こりやすくなる。経営者や店長はどのような対応を行えばよいだろうか。今回は営業時間の延長で発生しがちな、従業員の労働時間増加への対応策について解説していく。

深夜営業再開に伴う課題・対策

コロナ禍の影響で特に居酒屋業態などは客足が遠のき、早急に店舗の売上を回復させたいと思っているところも多いだろう。営業時間の延長はその対策のひとつに思い浮かぶが、当然のことながら人員の採用やシフト調整などを見直す必要がある。

しかし現状の従業員数のまま、労働環境の整備をしないままで営業時間を延ばすと、今いる従業員の労働時間が超過し、結果として授業員満足度の低下による離職やサービス品質の悪化、リピーターの減少につながる恐れもある。これを防ぐためには、組織体制を底上げする他に近道はない。特に外食企業にとって従業員が定着しやすくなる3つのポイントを挙げる。

(1)人事評価制度・福利厚生制度・教育プログラムを充実させる
(2)単純作業は従業員でなくIT化して人為的作業時間を減らす
(3)求人サイトでは、求人票の検索条件(福利厚生など)を増やす

営業時間を延長する前に見直しや整備をすべき項目だ。ひとつずつ解説していこう。

(1)人事評価制度・福利厚生制度・教育プログラムを充実させる

飲食含めたサービス業全般において、社員・アルバイトの評価制度や賃金体系といった人事面の制度や福利厚生制度、教育体制がうまく機能している例は少ない。ES(従業員満足)が上がらなければ、CS(顧客満足)も上げられない。ESを上げるには、しっかり従業員を評価することが大切となる。

そのためには、飲食店の経営者は『飲食店に就職させる』というよりも『飲食企業に就職させる』という感覚を持つことが大切だ。例えば何をどれほど頑張ったら給料が上がるか、店長になれるかを示す評価制度を提示することだ。従業員が将来的なキャリア形成を理解し、昇給・昇格あるいは昇進するメリットを把握しながら、日々の業務に取り組める環境を示すことができている企業は、順調に成長している。

また、教育プログラムを作ることも重要だ。キャリアや役職などの階層ごとに、教育プログラムが整備されており、ステップアップを望む従業員に道のりを明確に示せているかどうかが、人材定着のポイントとなる。

その中でも特に重要となるのが初期教育プログラムだ。実際、本部で受けた研修と現場の実情とのギャップに戸惑いや不安を感じ、1週間内に辞めるケースは多くあるので注意が必要だ。社員(新卒・中途)、アルバイトに関わらず、人材が定着するか否かは、初期教育を適切に受けているかどうかにかかっている。従業員教育は現場の店長任せにせず、経営者や本部がきちんと教育プログラムを整備して従業員に学びの機会を与えることが重要だ。

(2)単純作業は従業員でなくIT化して人為的作業時間を減らす

教育や評価の制度を確立させると同時に、労働環境の改善を仕組み化することも重要である。実際に居酒屋の離職理由の上位は、体力的にきついこと、仕事量が多いこと、休日が少なく残業が多いことなどが挙がっている。

飲食店の深夜営業再開による長時間労働問題。労働環境の改善と対策方法

出典:リクルートジョブズ「【業界別レポート】働く人と職場2018-居酒屋編-」

まずは少人数でも運営できるオペレーションを考えることが重要だ。全国に居酒屋を出店しているワタミでは、2021年12月に首都圏の店舗で客席案内ロボット「KettyBot」を導入した。来店客を席まで案内し、着席後、ロボットに搭載された画面から店舗説明やファーストオーダーを取るなどしている。

また、フレンチやイタリアンなどを出店する「俺の株式会社」では、2020年末から全社的にテーブルオーダーシステム「O:der Table」を導入している。来店客が自身のスマートフォンで卓上のQRコードを読み取り、店員を呼ばずにオーダーできる仕組みだ。コロナ禍で感染リスクが懸念される中、安心・安全を担保しつつ効率のよい店舗運営を実現できるようになったという。

伝票集計や勤怠管理などの煩雑なうえに売上に直結しないバックヤード業務は、なるべく従業員でなくITツールなどで半自動化するなどで補いたい。串カツ田中や、がブリチキン。を出店するブルームダイニングサービス、叙々苑などは仕入れの伝票計算を自動化するために受発注システムを利用している。

ITを導入するにも費用面で懸念がある場合は、まず無料で使えるものを導入してみる、IT導入補助金を活用するなども有効だろう。継続した雇用を行うためにも、従業員への負担を増やさず生産性の向上を実施できないか検討することをおすすめする。

参考記事:飲食店DXの第一歩を踏み出そう。無料で始められるITツールまとめ

(3)求人サイトでは、求人票の検索条件(福利厚生など)を増やす

求人サイトに求人票を出しても募集がないという飲食店は多いのではないだろうか。コロナ禍以前から慢性的な人手不足の状態が続いている飲食業界だが、現在は求職者が求める条件に変化が見られ、ポイントを押さえた人材採用ができていない飲食店には人が集まりにくい傾向にある。一般的に求職者が企業に求める要件は次の5つが挙げられる。

● 給与(エリアでの給与相場と比較)
● 月8日休み(年間休日110~120日)
● 残業時間の削減
● 福利厚生の充実
● 昇給・賞与(年2回以上/支給月も明記)

さらに大手の飲食店の求人サイトでは、求人の検索条件に家族手当や住宅手当、休日が年間110日以上、社員旅行や健康診断などの条件指定ができる。外食企業の人事業務を専門にコンサルティングする株式会社ラフテルズの道下隆氏によると、多くの外食企業がこうした検索条件に当てはまらないため、募集要項すら見られないという。

参考記事:飲食店の人材採用に欠かせない、組織作りと募集のポイント

助成金を活用して労働環境改善の設備を導入する

教育プログラムや福利厚生、ITツールの整備などでは初期投資の面で難しい場合がある。中小企業が労働環境を改善することで活用できる助成金制度があるので、うまく活用して、まずは現場の環境を整えよう。

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」

飲食店の労働環境は、以前から問題視されている部分も多い。従業員の長時間労働や、ワンオペによる過酷な労働環境は、サービス品質の低下、従業員の離職率上昇などの悪循環を招くことになる。営業時間と売上、従業員数のバランスを見極めならが、徐々に時間の延長や人員の確保をしていくことが重要だ。


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