業界動向

飲食店が食品ロス対策をする方法・メリット・成功事例

2022年03月02日

飲食店が食品ロス対策をする方法・メリット・成功事例

2015年に国連加盟国により始まったSDGs、そして2000年に日本で制定された「食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)」などにより、食品ロス対策に力を入れる外食企業が多くなっている。

本記事では食品ロスの現状と、対策をすることで得られるメリット、そして削減に取り組む企業の事例を紹介する。

SDGsにおける食品ロスのあり方

全世界の人々が、安全で幸福な暮らしを続けられることを目標にしたSDGs。しかし現状は、食料があふれている国もあれば、飢餓にあえぐ国もある。この不平等をなくすために飲食業界ができる方法のひとつが、大量に廃棄されている食料、つまり食品ロスを減らすことだ。

◇SDGsとは

SDGsとは、2030年の到達を目指した全国連加盟国による世界的な取り組みで、「持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals」を意味する。目標として掲げている17のゴールと169のターゲットには、①社会(未解決の貧困、飢餓、教育などの問題)、②経済(エネルギーや資源の有効活用、働き方や不平等の問題など)、③環境(地球環境、気候変動などの問題)の3つの側面からの課題が含まれている。

◇「つくる責任 つかう責任」

SDGsの目標のひとつに「つくる責任 つかう責任」がある。この目標では、“持続可能な消費と生産の確保”に触れており、その中のターゲットのひとつが「小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」と掲げられている。

日本の省庁では、「食品ロス」を「本来、食べられるにもかかわらず捨てられる食品」と定義しており、生産から消費に至るまでのすべての食品を指す。ちなみに日本では食品ロスと同義に使われる「フードロス」は、厳密には小売の前の段階で廃棄される食品だけを意味する。

飲食業は「食品ロスの削減」に近い立場にいる産業のひとつだ。今後は飲食業だからこそできる“持続可能な取り組み”を行ない、問題解決に貢献することが求められる。

参考:外務省「パンフレット:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組(PDF)」

外食業の食品ロスは減少傾向。それでも年間100万トン以上!

農林水産省の統計によると、2015年度の食品ロスの総量は646万トンだった。しかしさまざまな取り組みの成果もあり、2018年度には600万トンにまで減っている。

外食産業による食品廃棄も毎年減少しているが、それでも全体の約5分の1に当たる116万トンの食品ロスを出しており、事業系の中ではワースト2位に位置する。その内訳は、「食べ残し」がいちばん多く、「仕込み過ぎ」が次に続く。いずれも店側の行動次第で対処できる問題である。

それでは、食品ロスを減らすために飲食店は何ができるのか?次に、その具体的な案について解説していく。

食品ロスを減らすために外食産業ができること

平成27年度の農林水産省の調査によると、食品ロス量は646万トン、そのうち事業系(製造、卸、小売事業者、外食産業)から出る廃棄量は357万トンある。このうち、外食産業における食べ残し量の割合でいちばん多いのは宴会(14.2%)で、披露宴(12.2%)、食堂・レストラン(3.6%)と続く。これを減らすために、飲食店が取り組むことができる方法は難しいものではない。ちょっとした工夫次第で、客と店の双方にとって無理のない食品ロス解決を実現できる。

参考:消費者庁「食品ロスとは」

◇料理を出すタイミングや客層に応じた工夫

料理は、出来立てがいちばんおいしいとされている。例えば、複数の料理の注文を受けた場合、一度にまとめて提供してしまうと冷めてしまうだけでなく、風味も落ちる。また見た目の量の多さから、満腹感が先に生まれてしまうかもしれない。そのため、タイミングを考えながら料理を提供するだけで、食べ残しを減らすことが可能になる。

このほか、客が食べきりやすいように、年齢や性別などに合わせて味付けや調理法を調整するのも有効な方法だ。

◇食事量の選択ができるメニューの採用

消費する側は、空腹具合や体調に合わせて食欲が変わる。そのため、料理の量(小盛り、普通、大盛りなど)やサイズ(Sサイズ、Mサイズ、Lサイズなど)、1品料理など、メニューのバリエーションを増やすことで、食べ残しを減らすことができる。

さらに食べ残しが多い/不人気メニューをはずす、大皿料理提供の廃止、提供数量限定、客の要望を取り入れるなど、メニューの見直しを検討すれば、材料を余分に仕入れる必要もなくなる。

◇注文量の相談

料理のボリューム量の視覚化(メニューに写真を掲示、食品サンプルの展示など)・情報の提供、客の人数に対してオーダー数が多いと感じたときに、減らすようアドバイスをすることも、食品ロスの低下につながる。

また宴会などの予約を受けた際、先方の年齢層、男女比、食の好みなどの情報をメニューづくりに反映するのもいいかもしれない。さらに、集中して料理を食べる時間を設けてもらう、食べ残しをしないように参加者に呼び掛けてもらうなど、幹事に協力を仰ぐのも有効な手段のひとつだ。

◇インセンティブの提供

消費者にとってメリットとなる以下のようなサービスを提供することで、食品ロスを減らす方法もある。

・完食した客へのクーポン配布(割引券、キャッシュクーポンなど)
・完食した客へのポイント付与
・閉店時間前や消費期限間際の商品・メニューの割引
・テイクアウトした再利用可能な容器を店に返却してもらい、見返り(クーポン、割引など)を提供
・小サイズメニューへの割引料金適用 など

◇食材ロスを減らす工夫の採用

【その他の食材ロス削減の例】
・仕入れ食材は真空包装や冷凍し、長期間の使用を可能にする
・冷凍による品質劣化が少ない下処理済みの冷凍食材を購入・利用
・適量使用ができるよう、下処理済後の食材は小分けして真空包装・冷凍保存
・状況に応じたこまめな炊飯
・普段、廃棄されてしまう食材部分を別メニューに有効利用
・野菜くずなどの堆肥への利用
・煮詰まりによる食材廃棄防止のため、湯煎などへの調理方法変更
・冷凍庫を開ける頻度を減らし、食材の品質劣化を防止 など

◇持ち帰りについては慎重な対応が必要

食べ残した料理をドギーバッグ(持ち帰り用容器)で持ち帰ることは、「食品リサイクル法」でも提案されている。食品ロスの観点からは好ましい手段のひとつではあるが、すぐに食することができる場合を除き、調理後は時間が経過するほど食中毒のリスクが高まる。そのため、店側は以下の点について充分に注意しておかなければならない。

【飲食店側が注意すべき持ち帰りの注意点】
・食中毒のリスク、食品の取り扱い方法、衛生に関する注意事項の客への充分な説明
・生ものや半生調理の食品は避け、充分に加熱調理したものだけを持ち帰り対象とする
・可能な限り水分を切り、熱による菌の増殖を避けるために冷めやすい容器に小分けして入れる
・清潔な容器を使用し、移し入れる際には清潔な箸などを使用する
・湿気や気温が高い時は、持ち帰りの休止、保冷剤の提供などの対応を行なう など

持ち帰りに際しては、店側からの推奨や提案は避け、食中毒など衛生上のリスクがあることをしっかりと伝えた上で、客の自己責任で行なってもらうのがいいかもしれない。飲食・保存方法、衛生上の注意事項などに加え、食中毒のリスクがある旨を書いた印刷物などを一緒に入れておけば、店側のリスクを最低限に抑えることもできる。

参考:消費者庁、農林水産省、環境省、厚生労働省「飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項」

食品ロスが与える影響と削減で生まれるメリット

飲食店レベルでの食品ロスの削減は、食材に関するコストを大幅に下げることが期待できる。また、調理した料理を客が残さずに食べてくれることは、モチベーションやサービスの向上につながる。

個々で行なう食品ロス削減の対応は、世界規模で考えた場合にどのようなメリットがあるのだろうか。

◇廃棄コスト削減

世界における1年の食料品廃棄は、約13憶トンと試算されている。また農林水産省「一般廃棄物の排出及び処理状況等について」によると、一般廃棄物の処理に要する経費は20年以上にわたり年間約2兆円におよんでおり、この費用は税金から出ている。

一人ひとりの取り組みにより得られる結果は小さくとも、全体で考えると大きな廃棄コスト削減につながる。

◇ゴミ問題の緩和

ゴミ廃棄の問題はコストだけではない。ゴミの焼却にはCO2(二酸化炭素)の発生が伴い、地球全体に温室効果をもたらして温暖化の原因となる。CO2排出量の減少は、世界全体の課題である。食品ロスを減らすことは、結果的に地球環境にも貢献する。

食品ロス削減の取り組み事例

外食業をけん引する企業では、実際どんな取り組みを行なっているのだろうか。以下に食品ロスに前向きに取り組んでいる代表的な企業を紹介する。これらを参考にし、取り入れられる要素は積極的に採用してみてはいかがだろうか。

ロイヤルフードサービス(ロイヤルホスト、てんや、シェーキーズ、シズラー) 2020年6月から「ロイヤル食品ロス削減タスクフォース」を実施。グループ店舗で余剰食材を出さないための活動を行なう。
株式会社吉野家(吉野家) 製造・物流・店舗の各段階で、食品ロス削減を目指した取り組みを積極的に実施。
ワタミ株式会社(ワタミ) 食べきれない料理の持ち帰り推進。バイオマスプラスチック製の持ち帰り容器を採用し、環境にも配慮。
モスフードサービス(モスバーガー) リユース食器の使用、調理くず・廃食油などのリサイクル、フードバンク支援活動などの実施。
くら寿司株式会社(くら寿司) 仕入れた魚やその部位の100パーセント活用、再生利用素材を使用した持ち帰り用袋、マイ箸持参による料金割引キャンペーンなど。

ロイヤルフードサービス:ロイヤルホスト、てんや、シェーキーズ、シズラー

ロイヤルホスト、てんや、シェーキーズ、シズラーなどのチェーン店を展開するロイヤルフードサービスは、2020年6月から「ロイヤル食品ロス削減タスクフォース」と称した食品ロスへの取り組みを開始。例えば、ロイヤルホストでは、他グループのデニーズともども植物由来素材の容器を使用した持ち帰りの普及を推進、また「てんや」では季節限定メニュー終了後の余剰食材の単品販売、シズラーでは時間帯に応じてサラダバーでのサラダやドレッシングを入れる容器のサイズを変更するなどして、食材が余らない工夫をしている。

株式会社吉野家:吉野家

自社工場から出た規格外の牛肉や玉ねぎはハンバーグなどに再利用、野菜くずは飼料に使用する以外に、配送センターを一元化することで食材の期限切れを防止。店舗においては、天候や周辺のイベントなどの情報に基づく食材の発注、1時間ごとの販売予測に応じた仕込みに加え、選択可能なメニューサイズ、牛脂のリサイクル、食べ残しは残渣を計測して商品開発のデータにするなどの取り組みを実施。これにより、リサイクル率は工場で100%、店舗では約80%を実現。

ワタミ株式会社:ワタミ

2010年に環境省「エコー・ファースト企業」認定を受けたのを機に、食品ロス削減運動を本格的に稼働。2030年までに50パーセントの削減を目指す。具体的には、環境に配慮したバイオマスプラスチック(土に還るプラスチック)製の容器による持ち帰りの推進、宴会などでは最初の30分と終わりの10分は食べることに集中し、客に食べきるようお願いする「3010運動」の実践などを行なっている。

株式会社モスフードサービス:モスバーガー

創業当初から、つくり置きをしない方式を採用し、店内飲食ではリユース食器(マグカップなど)を使用したごみ削減を実施。以降、調理くずや廃食油の飼料・堆肥・工業原料へのリサイクル、賞味期限の短い食材のフードバンクへの無償提供、食材配送の際の段ボールの廃止のほか、持ち帰り用容器・袋には環境に配慮した素材を使用するなど、多方面での取り組みを行なっている。

くら寿司株式会社:くら寿司

「一船買い」により仕入れた魚のうち、骨、アラなどの不可食部分や市場価値のない魚は、ほかの料理への二次使用や養殖魚のエサとして活用。また商品として提供ができない未成魚は成魚まで養殖した後に出荷するなど、魚は100パーセント使い切る。食品ロス削減以外では、オリジナルゲームの「ビッくらポン!(ガチャ玉に入った景品プレゼント)」のカプセルをプラスチックから紙に変更、再生利用素材使用の持ち帰り袋、マイ箸持参で料金を割引するキャンペーンの実施などでSDGsに貢献している。

今からすぐに始められる食品ロス削減対策

食品ロス削減への対策は、思っているほど難しくはない。食品を廃棄する理由は何か?それを考えれば、各自がやるべきことは容易に推測できる。

また自店から出る食品ロスを減らすことは、コストの削減だけでなく、新規顧客の開拓や店のイメージアップにもつながることもある。そして地球全体や環境の問題の改善にも貢献できる。

まずはできることから食品ロス削減を始めることが大切だ。


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