企業インタビュー

非来店時のコミュニケーションで、自店舗のファンを作る~ムゲン食堂(Glidge谷村昌樹)

2021年05月13日

自店舗のファンの作りには、非来店時のコミュニケーションが不可欠~ムゲン食堂(Glidge 谷村昌樹)

飲食業界では新型コロナウイルスの影響が続く。今後、国民へのワクチン接種が進み感染拡大が抑制されたとしても、テレワークなどの新生活スタイルの定着で外食市場の規模は元に戻らないとの推測もある。外食産業にとっては、アフターコロナを見据えた体質改善が急がれる状況だ。

その改善策のひとつとして、いかに来店客をファン化させるかが飲食店経営の焦点となっている。今年2月に開催されたオンラインセミナー「テクノロジーによる飲食店リピーターとの繋がり方(一般社団法人レストランテック協会主催)」で登壇した株式会社Glidge 谷村昌樹社長は、自店舗のファンを増やすには非来店時の繋がりを持つことが必要だと語った。

コロナ禍の真っ只中に飲食店を開業

京都・河原町の一等立地にある「ムゲン食堂」を経営する株式会社Glidge。代表・谷村氏の前職は、140店舗を展開する株式会社ゴリップの専務取締役。店舗開発や企画、広報、デザインなど本部運営を担当した後に独立し、32歳で1号店をオープンした。

ムゲン食堂運営企業 株式会社Glidge 代表取締役社長 谷村昌樹

株式会社Glidge
代表取締役社長 谷村昌樹氏

「ムゲン食堂のオープンは2020年にあった1回目の緊急事態宣言のあとで、開店後しばらくは『Go To Eatキャンペーン』によるちょっとしたバブルの恩恵に預かりはしました。

しかし時短営業のためにガマンの年末を強いられ、2021年1月には2度目の緊急事態宣言、さらにその延長もあり、じつに苦しいスタートを切ることになりました」

当初、ムゲン食堂は店内飲食のみの営業形態だったが、顧客の定着どころか、店の運営方針さえ落ち着く間もなく時短営業を余儀なくされた。もちろんそんな中にあっても、事態に即応して打てる手は打ってきた。

「2020年10月からは、店内飲食に加えてテイクアウトをはじめ、12月にはデリバリーもスタートしました。この3つを動かしつつ、それぞれの販路を広げ、それなりにお客様との関係性を築いてきました」

活路を開いたのは、LINEを使った非来店時の情報提供

ムゲン食堂は夜でも客単価1300円前後と庶民的なだけに、一定の客数を確保することが必須なのだが、コロナ禍での営業自粛中では客の絶対数が望めない。そんな事態を打破するためにはじめたのが、LINEとモバイルオーダーアプリを利用した顧客分析からの販促だったという。

ムゲン食堂メニュー「肉シューマイ」

ムゲン食堂「手包みシュウマイ(肉)」

「飲食業をする上で課題に感じていたのは、顧客情報が蓄積されてないことと、お客様とのコミュニケーションが店内でしかできないことでした。

それまでにもTwitterやInstagramで、新メニューの告知や仕込みの風景などの店舗ウラの小ネタを配信してはいたのですが、より本格的にLINE公式アカウントを活用することにしました。同時にモバイルオーダーシステムのdinii(ダイニー)を導入して、顧客情報の蓄積と非来店時の販促をシステマティックにすすめていこうと考えたのです」

LINE公式アカウントでは店舗のアカウントを作成し、友だち登録をした顧客に対して、メッセージやクーポンの配信などが1to1で送信可能となる。同時に、モバイルオーダーシステム『dinii』に顧客の購買行動や性別、年齢などがデータとして蓄積されるので、客層分析や販促にも利便性があるという。

「店舗に来られたお客様に、スマホでQRコードを読み込んでいただいて、オーダーアプリ『dinii』で注文していただきます。すると自動でLINE公式アカウントの方に『友だち』として登録されます。こうして顧客データが蓄積されていくのです」

ムゲン食堂のセルフオーダーシステムdiniiとLINE活用による顧客データ収集・管理フロー

実際、LINE公式アカウントを使ったことで、開業後6ヶ月ほどで成果が出たという。

「運用をはじめてから約半年になりますが、当初はクーポン発行などの営業活動をせずともLINEの友だち登録数がひと月1000名ほど増えていきました。

普段通りに店舗運営しているだけでこの登録数になるのですから、これには驚かされました」

さらにセルフオーダーシステム『dinii』から抽出した顧客の喫食情報もあわせて、メッセージ配信のさらなるセグメント化を図ったという。

「例えば、開業時は女性客の割合が30%ほどでしたが、女性向けのメニューを告知したり、女性限定のメッセージを配信したりなどを繰り返したことで、いまでは40%を超えています。同様に30代中心だった顧客層も、いまは20代が増えています。もちろん狙った施策が効果を発揮することばかりではありませんが、時系列で推移が見えるので、過去の施策の是非について分析することができます。失敗もデータになるというのが、強みといえるでしょう」

最大の効果は顧客動向の「見える化」

多くの飲食店では、実店舗で顧客の属性や注文データを把握しようにも、わずか数パーセントのハードユーザーの好みを把握するのが精一杯で、来店1~2回の顧客情報は、なかなか把握しきれないのが実情だ。ITツールを使うことで、顧客の購買行動がデータとして見えてくるのだと谷村代表は話す。

「たとえばこんなデータがあります。2020年11月に新メニューの告知メッセージを、1900名のLINEの友だち登録者に向けて配信しました。その開封率が76%。クリック率8.2%、『大人の大学芋』3個プレゼントのクーポンを同時に配布して、ご利用いただいた方は1日1~2件、45名でした」

ムゲン食堂によるLINE公式アカウントのメッセージ配信結果

ムゲン食堂のLINE公式アカウントで配信されたお客様向けニュース

その後、12月には2800名に送信し、1900名ほどがメッセージを開封。そこからURLをクリックしたのが10%弱。190人ほどが興味を持ったことが分かった。

「このときのメッセージはデリバリーを打ち出した内容で、告知当日に6件ほどご注文をいただきました。平均より10件ほど多いときもあり、まさに目に見えて効果があったわけです」

以降、LINEの友だち登録数は着実に数を伸ばし、また週ごとに売上更新が続いているという。

「コロナ禍でテイクアウト、デリバリーを始めていく中で、オンラインでお客様とつながりを持てたことは有効だったと思います。お店にご来店いただくだけでなく、非来店時に情報をお伝えしたことで、時短営業のあとにテイクアウトなどをご注文いただくことに繋がりました。リピーターの中には27回ご来店いただいている方もいらっしゃいます。

どのくらいの頻度でご来店いただけばよいかを考えてメニューを変更していこうと思いますが、そもそもITツールがなければ、こういった数字は分かりません。今後は、さらにセグメントされた情報を的確なターゲットに発信することで、よりクリック率や開封率を上げていく工夫をしていきたいですね」

リピーターとのつながりは、飲食店経営の生命線

そうはいうものの、谷村氏はオープン当初、こうしたモバイルオーダーの利用について懐疑的だったそうだ。新メニューの案内やクーポンの発行も、安易に使えば情報の一方通行になってしまうのではないか。顧客を数字で管理することが、温かみの感じられるサービスにつながるのか。いま谷村氏は、顧客とのオンラインでのつながりをこう捉えている。

ムゲン食堂メニュー「五目炒飯デラックス定食」

ムゲン食堂「五目炒飯デラックス定食」

「新規顧客開拓やリピーター確保というより、ファンを増やしたいという意識が強くあります。数字を上げることが目的ではなく、あくまでもお客様に喜んでいただくことを追求すべきです。

LINEもdiniiも素晴らしいツールですが、お客様が望まれているのは、飲食店のデジタル化ではありません。より便利で楽しい飲食体験を求めていると思っています」

可視化されたデータは、すなわち顧客の思いであり顔であることを忘れてはならないと、谷村代表は考える。飲食業界がアフターコロナに向けたあり方を模索する中、顧客との新しいコミュニケーションを構築するには、このスタンスを忘れてはいけないのかも知れない。SNSによる新たな顧客とのつながり方は、今後のニューノーマルを迎える飲食事業者にとって期待されるところだ。


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ムゲン食堂 京都河原町店(株式会社Glidge)

所在地:京都市中京区裏寺町595-11
URL:https://www.instagram.com/mugenshokudo/


一般社団法人レストランテック協会
URL:https://rtmeetup.net/

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