利益を出す飲食店経営

原価率3%の違いで年間100万円損失?利益につながるメニューの原価率コントロール方法

2021年04月19日

原価率3%の違いで年間100万円損失?利益につながるメニューの原価率コントロール方法

飲食店のメニューにおいて、食材のオーバーポーションや廃棄などで原価率が数%悪化すると、積もり積もって利益を圧迫する要因になる。例えば原価率30%のメニューが複数ある場合、33%になれば年間100万円の損失につながることもありえる。原価率を想定内に収めることは、利益に直結する重要な要素だ。特にコロナ禍の影響で経費削減を徹底する場合、食材の原価は優先的に見直すべき項目になるだろう。

本稿では原価率の下げ方やコントロール方法、高い原価率でも利益を生み出す仕組みづくりについて解説していく。

メニューの原価率をコントロールする方法

原価率とは、料理に使用した食材費の割合のこと。計算式にすると、以下になる。

原価額  × 100 = 原価率(%)
───────
売上高

 

飲食店では提供するメニューが複数あるので、利益確保をするためには単品のほかメニュー構成全体で原価率を設定することが重要だ。一般的に平均的な原価率の目安は30%とされているが、業態によって異なる。カフェでは約24〜35%、居酒屋で約28〜35%、レストランで約37〜45%ほどといわれている。

例えばあるメニューの販売価格を1000円、1日10品提供する場合、理論原価率30%としたものが実際は33%になれば、どれほど変わるかを考えると、

販売価格原価率原価1日販売数1日分原価月間原価年間原価
1,000円 30% 300円 10品 3,000円 90,000円 1,080,000円
1,000円 33% 330円 10品 3,300円 99,000円 1,188,000円

 

1年間で約10万円、メニューが10種あると100万円の差になる。3店舗展開していれば300万円にのぼる。原価率が意図せず高まってしまっては問題だ。では、メニューの原価率を調整するにはどんな方法があるだろうか。詳しく見ていこう。

棚卸で食材原価を知ることが第一歩

原価率をコントロールするには、まずメニューに使われる食材の原価(理論原価)を知ることが必要になる。特に飲食店では、青果や水産物など生鮮品の価格は変動しやすい。適当な計算をしていては、どんどんズレが生じてしまう。

そこで、毎月棚卸しを行い在庫の量を把握することで、原価の変動に対応していく作業が重要になる。例えば食材費が上がっていたり、在庫が想定以上に減っていたりすれば、原価率も高まってしまう。手を打たないままだと利益率が下がった状況が続くが、状況を把握していればメニュー価格の見直しや仕入れの改善などを検討しやすい。

また在庫の量を把握していると、次の仕入れも調節しやすくなる。過剰在庫になりやすい食材を知ることもできるため、食材ロスの削減にもつながるだろう。

しかし店舗運営で手一杯だったり、食材ごとの仕入れ数量や価格の集計に時間がかかる、仕入れ単価の確認で納品書を見返すのに手間がかかる、納品伝票が見つからないなどで、しっかり実施できていない場合もあるだろう。そういった場合には、仕入れ業務のシステム化で棚卸しが実現できるのでおすすめしたい。

食材ロスを削減

調理工程に発生する食材ロスを減らせられれば、それだけで無駄な出費を抑えられる。もちろん、新メニューの開発や新人スタッフの練習用などに必要な食材もあるため、できる限り不必要なロスを削減することを心がけるとよいだろう。

食材ロスの主な理由は、消費期限切れや作業時の歩留まり、雑な取り扱いによる食材の傷み、料理への過剰な盛り付け(オーバーポーション)などが挙げられる。

対策としては、過剰な仕入れを無くす、先入れ先出しを守らせる、食材の端材を有効活用する、秤で正確な分量を求めるなどがある。お客が多い時間帯は忙しくなるので、食材の取り扱いが雑になりがちだ。そういった状況でも、いつも通りの手順で作業するようにスタッフへ教育することが大切となる。

食材ロスの管理は、長い目で見るほど効果が出るものだ。少し試しただけでは、あまり削減できていないと感じる部分もあるかもしれないが、継続して実行することで原価率、利益率に影響があるはずだ。

販売価格・仕入れコストを見直す

原価率を下げる最も直接的な方法は、メニューの販売価格や仕入れコストの見直しだ。価格設定やメニューを構成する食材の変更などを行うことで、目標の原価率に近づくことができる。

そして適切な見直しを行うためには、メニューに使う食材毎の仕入れコストを把握しておかねばならない。しかし飲食店ではメニューひとつをとっても多くの食材が使われており、価格変動が日々発生するので、食材費をエクセルなどに打ち込んで原価計算するのは現実的ではない。

店舗数や仕入れ数がある程度ある企業であれば、業務改善をする以前に、伝票の集計作業をする時間や手間が膨大になってしまうため、実現が難しいことが多いだろう。この課題を解決できる手段は、業務システムを導入するのが最短の道といえる。

多くの外食企業が導入しているインフォマートのメニュー管理サービス「メニューPlus」は、日々の発注や仕入れた食材をデータとして記録し、リアルタイムでメニューごとの原価・原価率を自動計算できる。これまで時間の掛かっていた受発注や棚卸しに発生する付帯業務を短縮できるため、本来の改善業務に時間を割きやすくなるだろう。

利益効率のよいメニューを開発・販売する

販売価格の見直しや食材ロスの削減には、仕入れの交渉や従業員教育などが必要となるため、短期間で実行できない場合がある。そうした際にはあまり難しく考えるのではなく、シンプルに利益効率のよいメニューを開発して売り出すことで店舗の利益を高める方法もある。

例えば、販売価格600円で原価率40%のメニューAと、同じ販売価格600円でも原価率20%のメニューBがあれば、当然メニューBの方が粗利は出やすい。

メニュー販売価格原価率原価粗利
メニューA 600円 40% 240円 360円
メニューB 600円 20% 120円 480円

 

原価率だけに固執するとデメリットも発生

原価率を下げるということは、メニューの販売価格を値上げする、原食材をより安価にする、ポーションの量を減らすことになる。現場への説明が不十分だと、ロスを減らそうとして痛んだ食材も利用してしまうケースも起こり得る。これは消費者目線にすると、よいことにはならない。

特に店の顔となるメニューの値段が上がれば、お客は離れてしまうこともあるだろう。料理の質や量が変わる場合も同様に、不満に直結する。時には信頼を失うリスクがあるため、原価率を下げるのは慎重に行うべきといえる。まずは店舗にとって何が一番大事かを考え、選択肢のひとつとして原価率を下げることを視野に入れるとよいだろう。

原価率30%以上でも利益を出すには

メニューの価格変更は、消費者にあまりよい印象を与えない。リピーターのためにも、できるだけ価格は据え置いて提供したいという店舗は多いだろう。原価率を変えない場合、それ以外のコストに手を加えることを検討すべきだ。具体的な方法を見ていこう。

FL比率を落とす

FL比率とは、Food(食材費)とLabor(人件費)を合計した割合のこと。飲食店の経営では、FL比率は60%以内に収めるのが一般的といわれている。原価率が高くても、人件費を調節できれば全体的なコストを抑え、利益が出やすくなる。

例えば、ファーストフード店では原価率は高いものの、業務の機械化・マニュアルによる従業員教育の徹底で、正社員よりパートやアルバイトの勤務割合を高くしている。およそF:40%、L:20%というFL比率となり、ある程度の利益を確保できているのだ。

一方で高級料亭やレストランでは、質の高い料理や接客サービスを提供するために熟練のスタッフを揃えなければならない。そうなるとファーストフード業態より人件費の割合が高くなる。自店舗の業態や経営方針を考え、FL比率のバランスを調整し、利益が出るポイントを見極めよう。

しかし、飲食店が原価率を調整するのは、実際は難しい課題である。その最大の理由は、食材の仕入れ価格は仕入れ先から送られる毎月1度の請求書からしか把握できず、どの程度悪化しているのか知りたいときに知るすべがないからだ。その解決策は、仕入れ状況を専用のITツールで管理することが有効だ。店舗ごと、食材ごと、仕入れ先ごとの取引状況が分かり、原価集計なども自動で行える。売上管理システムや店舗管理システムと連携させれば、日次でFLコストを可視化することもできるので、検討してみていいだろう。

以下にITツールを使って食材の原価を管理したことで、店舗の利益アップや業務改善などの効果を得た外食企業の事例を挙げる。 

業態店舗名(企業名)地域原価改善・その他の効果
ビストロ アガリコ(Big Belly) 東京 利益拠出、不正対策
唐揚げ・居酒屋 がブリチキン。(ブルームダイニングサービス) 名古屋 利益拠出、多店舗展開
天ぷら・居酒屋 KITSUNE(GB) 名古屋 利益率20%
焼肉 近江焼肉ホルモンすだく(総合近江牛商社) 滋賀 利益率20%、業務改善
沖縄料理 リトル沖縄(リトル沖縄オーバーシーズ) 東京 従業員の意識改革
ラーメン AFURI(AFURI) 東京 価格改定、待遇改善
ベーカリー クックハウス(ダイヤ) 大阪 年間120万円コスト削減

 

販促費を削減

飲食店の固定費には、家賃や水道光熱費、広告宣伝費やその他の雑費などがある。細かい部分ではあるが、削れるところは削る努力も必要となる。

家賃は、食材費や人件費に加えて飲食店の3大コスト(FLRコスト)といわれており、売上の10%以内に抑えることが目安とされている。コロナ禍による影響で経済的な打撃を受けているなら、家主に家賃交渉を持ち掛けてみるのもよいだろう。しかし物件自体の変更は容易にできるものではない。

まずは、家賃以外の経費では、電気代やガス代のプラン変更、自治体によっては水道事業の民営化も推し進められている。最近では電気とガスのセットプランなども提供されているため、検討する余地はあるはずだ。

また、加入している保険やリース契約(設備や備品の長期レンタル)も、店舗の規模や売上に合ったものか見直してもよいだろう。こうした固定費は、事業開始時と状況が変わっていてもそのまま放置しているケースがありえる。無駄な出費を抑えるためにも、売上や原価率だけでなく様々な費用に注目してみるとよいだろう。

原価率の調整は、利益確保の手段のひとつ

飲食店が利益を確保する際、一律にすべてのメニューの原価率を下げることは有効ではない。原価率の高いメニューも集客やお客の満足度を維持するためには必要となるので、メニュー構成の全体を見てバランスをとるべきである。

加えて飲食店の原価率は、お店の業態や経営方針によってもまったく異なるものだ。あくまで売上アップや経営改善につなげる選択肢のひとつとして、原価率の調整を行うとよいだろう。


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