レポート

ロイヤルHD菊地会長ほか外食企業リーダーが説く、今こそDX経営をすべき理由~FOODCROSSレポート

2020年11月18日

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コロナ禍による厳しい社会情勢のなか、飲食業界は変化を求められている。感染症対策はもちろんのこと、デリバリー、テイクアウトへの参入、非接触接客、コスト削減、業態転換、店舗の出退店の判断など、やらなければならない事柄は多い。しかし、何をどこまですればよいかはいまだ手探り状態という企業も多いだろう。

飲食店はどのような方針で何をすべきか。今必要なのは、不確定な未来を見通すための、データや実績に基づいた経営判断だ。飲食業の経営にDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れた経営者が事例を紹介するカンファレンス『FOODCROSS(インフォマート主催)』を11月9日に開催した。その講演内容をお伝えしよう。

【基調講演】いますべき外食産業のDX化とは~コロナ禍で学んだこと

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ロイヤルホールディングス株式会社
代表取締役会長 菊地唯夫氏

ロイヤルホールディングスの事業は、ロイヤルホストの他に、てんや、シズラーなど様々な業態を全国で560店舗ほど展開する外食事業、高速道路、空港施設や病院等で飲食サービスを提供するコントラクト事業、機内食事業、リッチモンドホテルのホテル事業の4つで成り立っている。どの事業もコロナショックの影響を受けているという。

「飲食業界の皆さんは、今ほんとうにご苦労をされていると思います。この現状をどう考えるべきか、私は二つの視点があると思います。ひとつ目は、以前は問題なかったのに、コロナ禍で問題が起きたことです。これはコロナ禍が終わってしまえば解決する話でしょう。

もう一方は、以前からあった問題が、コロナ禍で表面化してしまったことで苦労していることです。わたしは基本的に後者の立場に立っていて、ポストコロナをにらんで、いかに変革をすべきかが問われているのではと思います」

コロナ禍が起きる前の飲食店の成功モデルでは、利便性の高い立地、大型店舗やチェーン展開の投資、店舗稼働の維持に必要な一定数以上の人員確保などを前提としていた。こういったものはすべて固定費の増加につながり、ポストコロナとなった今では悩みの種となっている。

「これから人口が減少していく日本において、キーワードとなるのが生産性です。生産性とは、従業員数を分母、売上総利益を分子として求められます。

生産性を上げるのに、一番わかりやすいのは、分母である従業員数を減らすことです。一瞬は生産性が上がりますが、サービスと消費の同時性が働き、サービスの劣化は避けられず、お客様が不満を感じて、結果的に分子も小さくなってしまいます。

一方、分子を上げる取り組み、つまり付加価値を上げて単価を上げていくという方法でも生産性を高めることができます。

お客様が付加価値を感じ、対価を支払っていただくものを考えると、健康やコト消費、贅沢なひと時、手作り、国産など、その言葉の後に「〜のためだったら多少高くてもいい」という言葉が繋がるものが考えられます。

外食であれば、国産食材を使用した商品、マニュアルを超えたサービスなどで、この2つには規模と相反するという共通点があります。規模が大きくなれば国産品の調達が難しくなりますし、サービスはマニュアルに依存せざるを得なくなります。逆に規模を圧縮することで、よりお客様が付加価値を感じて対価を払っていただけるものを提供できるでしょう。

逆に規模を圧縮することで、よりお客様が付加価値を感じて対価を払っていただけるものを提供できると考えられます。

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私たちのグループでも戦略的な規模の圧縮を実践しています。例えば、ロイヤルホストでいえば、店舗数は減りましたが、そのおかげで国産食材を使用したフェアを行い、単価も毎年のように上がってきています。サービスも営業時間の短縮や、24時間営業の廃止をしていますが、売上は増えています。規模を圧縮して価値を最大化するということです。

ところが価値を最大化しても、現代の人手不足問題によってさらに規模の圧縮が求められます。ふたたび規模を圧縮していけば縮小均衡が起きて持続性がなくなってしまいます。そうならないためには、わたしはテクノロジーの力が必要だと考えています。(菊地会長)

感情労働のストレスをテクノロジーで軽減

一昨年、ロイヤルグループは「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリング・テーブル・パントリー)」というITツールなどのテクノロジーを活用した店舗を作った。店長やスタッフの業務内容をどれだけ変えられるかを実験するためだ。

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「この店で何をしたのかというと、人が行うことで直接的に価値を生み出す仕事に人は集中してもらい、作業としてやらなければいけない仕事は、テクノロジーに任せていこうということです。

ここで労働について考えたいと思います。労働には3つの形態があります。肉体労働、頭脳労働、それから感情労働です。感情労働とは、顧客の満足を得るために自分の感情をコントロールする労働で、接客や医師、教師などがそれにあたります。

テクノロジーの進化により、肉体労働はロボットになり、頭脳労働はAIが担うようになります。その中で感情労働はとても重要な要素になっていきます。

ただし、感情労働には、自分の感情をコントロールしなければいけないというストレスがかかるという弱点があります。この問題をどう解決すべきか。店舗のスタッフに聞くと、接客や調理にストレスを感じる方はほとんどいませんでした。

発注業務や棚卸し、本部への報告、問合せ、清掃といった単純作業にストレスを感じていたのです。こういったものは、人がやることで価値が生み出される領域ではありません。この業務をAIやロボットに変えることで、人が価値を生み出す領域に集中できると考えました。つまり、“人による労働withテクノロジー”によって顧客満足度を上げることにつながるということです」

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飲食業界はコロナ禍によってテイクアウトやデリバリー、事前注文、キャッシュレス決済、調理機器の見直しなどが進んだ。

これにより、これまで飲食店が抱えていた、満席で利用できない、長時間のウェイティング、注文したメニューの品切れ、遠方で来店できないなどのさまざまな制約が緩和され、消費者や従業員が“しょうがない”であきらめていた課題が大きく解決されようとしている。

「デジタル化によって外食・中食・内食の垣根がなくなることで、お客様は好きな時間に、好きな場所で、好きなスタイルで“食の選択”をすることができます。時間と場所から開放され、これまでは店に行かなければ食べられなかった料理が家でも食べられます。

つまり飲食店にはお客様にわざわざ店に足を運んでいただくことの価値が問われてくるのです。立地だけに依存し、接客・調理をおろそかにしている企業は生き残れない時代にきているでしょう。

また、お客様のデジタルの選択肢が常態化することで、外食はモノ消費としての価値は下がる一方、コト消費としての価値が高まります。その場でしか体験できない食体験やその空間でしか得られない共感体験をいかに発信していくかが、これからの外食にとって大事なキーワードだと思います」

データ経営とDXで飲食業のオペレーションをデザイン

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有限会社ゑびや・株式会社EBILAB
代表取締役社長/EBILABファウンダー
小田島春樹氏

有限会社ゑびやは伊勢神宮の参道で150年ほど前から5代続く食堂を経営している。ゑびやで開発した来客予測システムの販売を行う会社として「株式会社EBILAB」が誕生し、同社ではPOSの分析や店頭の通行量の測定、混雑状況の可視化、来客予想、コミュニケーションツール、データベースの導入支援といった、サービス業に関わるデータを可視化・予測するサービスを提供している。

「私がお伝えしたいことは3つ。1つは、商売は事実やデータに基づいたアクションを行うということ。2つ目に飲食業の方はノンコア業務から解放されるべきであること。3つ目が時代認識を持ち、戦い方、組織のあり方を変えていくことです。

1について、最も有効な経営の方法は事実に基づいて色々なアクションを起こすことです。私たちが提供している「TOUCH POINT BI」は、POSデータを分析するサービスで、店舗のヘルススコアを「見える化」する健康診断のようなものです。

売上情報と天候などの外部要因や通行量との比較、お客様のアンケートの自動解析、原価を分析し、どんな商品を売れば利益率が一番上がるかといったことを一元管理できる仕組みです。

2つ目として、飲食業におけるノンコア業務、例えば人事、経理、総務といった売上を生み出す業務以外は極力なくすことを進めています。基本的にノンコア業務の人は採用せずに、デジタル化やアウトソーシングで身軽にすることで利益率を上げる本業に集中することができます。

3つ目の時代認識を持った戦い方、組織のあり方ですが、これからの中小企業にとって重要なのは、データ分析とIT化だと思います。事実やデータに基づいて意思決定をすれば間違いは少なくなります。さらに今社内にいる人で対応することを考える。

その際、ノンコア業務をアウトソーシングやデジタル化して、新しい事業を作っていくことがベストだと考えます。確度の高い投資をデータから判断し、経営を最適化して美しく回るようにデザインすることが、これからの時代に求められていくと思います。

オンラインデリバリー事業により、イートインに売上200万円上乗せのノウハウ

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株式会社Globridge
代表取締役
大塚誠氏

Globridgeは現在、約70業態、国内で直営店70店舗ほどの飲食店を展開。インターネットを使ったマーケティング手法をもとに業態開発してきたこともあり、直営店事業のほかインターネットによる集客支援事業を手掛けている。

「この度、新たな事業としてオンラインデリバリー事業、いわゆるバーチャルレストラン事業を3つ目の柱としてスタートしました。

現在、デリバリーで20ブランドを立ち上げていますが、メインとなる唐揚げ専門店「あげたて」では、既存店の居酒屋でデリバリー事業をはじめ、コロナ前の実績ですが平均して200万円ほどの売上が上乗せできました。コロナ後でも直営店では、対前年比で130〜140%の売上を出しています。

デリバリー事業を成功させるためにどのようなネット集客をすればいいのか。ポイントは2つあります。1つはデリバリーマーケットに基づいた業態開発をすることです。デリバリーではキッチンからお客様のテーブルに乗るまでに15〜20分かかります。その時間を見越した料理のクオリティが求められます。

2つ目のポイントは、デリバリーはオンラインの戦いということ。オンラインの集客にはそれなりのノウハウが必要となります。でも、店舗でやることは本当にたくさんあります。最も大切なのは、お店に来たお客様に喜んでいただくことです。ネット集客にも色々な媒体があり、その全てを手掛けるとなると店舗の接客に集中できません。

そこでご提案している事業モデルが、デリバリーの集客を請け負う私たちの事業本部と、商品を作る店舗、デリバリーはUberという三社分業の仕組みです。

デリバリーマーケットは今までのイートインとは違うまったく新しいマーケットです。お客様はどちらかというと中食やコンビニで食品を買う感覚で利用されているため、コロナが収束しても市場も縮小しないと考えています。いまから売上を積み上げる手法として、オンラインデリバリー事業をご検討いただければと思います。」

ITベンチャーが経営するサブスク飲食店の顧客データ活用術

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株式会社favy
執行役員COO 山口順也氏

favyはグルメメディアの運用、サブスクリプションツールの提供のほか、動画制作、DXのコンサルなど様々な事業を展開しているITのベンチャー企業だ。また、自らが飲食店を経営し、現在は都内に寿司、焼肉、コーヒースタンド、アイス屋など5業態、10店舗を経営している。

「弊社が運営するサブスク飲食店を例に顧客データの活用術をご紹介します。データはサブスク会員券の購入時や予約時に名前、連絡先を取得し、そのデータを来店促進のためのお知らせ配信に活用しています。

メールアドレスがわかる会員には、月数回のメール配信を行い、サブスク会員には、会員限定のお知らせ配信をしています。

焼肉業態の「29ON(ニクオン)」では通販のお知らせも定期的に送っています。結果としてメール配信した月は、売上が数十万円高くなりました。お客様の名前とメールアドレスを活用することで売上に繋がるということです。

私たちが重要視しているデータとして、お客様の接客時に取得する食の好みなどのデータがあります。接客時間が長めの「29ON」では、会員ごとに顧客管理をしており、好きなお酒、嫌いな食材、さらにお話の流れで見えてくる性格や職業なども顧客台帳にまとめます。

そういったデータは系列店舗でも共有します。細かな記載があることで、系列店への初来店でもお客様としては、いつも行っている店舗と同じ接客を受けられるという満足度につながります。

さらにDX的な施策として、各店舗はホームページを持っており、訪問時のオンライン上のユーザー行動をデータ化しています。活用方法として、ユーザーの行動データを再来店促進、サブスク会員獲得のためのリターゲティング広告に使っています。

通常の広告に比べて、自社に興味がある、実際に来店したことがある人に対して、ダイレクトに配信できるので、安く新規会員の獲得ができたり、再来店の予約が取れるようになるのです。

顧客データは特別なことをしなくても様々なタイミングで取得しています。まずは、お店が持っているデータの現状把握をして、そのデータをどう使えるかを考えるということからはじめてみてはいかがでしょうか」

業界初の完全フルオーダー回転寿司が取り組むデータ経営とは

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株式会社大山
取締役 浦江芳征氏

大山は、メイン事業として「若竹丸」というブランドの回転寿司業態をフランチャイズ店含め17店舗運営している。完全フルオーダーで安くて美味しい握りたての寿司を提供するのが特徴だ。

「回転寿司では職人の業務量が多く、体力勝負であることが課題です。理想として、店舗には遅く来て、早く帰れる環境を作ることを目指しています。理想の実現には、人がやらなくていい事はシステムにやってもらうことが重要になります。

そのための方法として、フルオーダーの回転寿司としました。2010年10月から取り組みを始め、2018年1月に17店舗で改修を終えています。

フルオーダーのデータは、発注業務にも活用できます。寿司をシャリとネタ、わさびといったようにレシピに分解することで、お客様の注文データを発注業務に活用し、自動発注の試みを行っています。

具体的な自動発注のデータの流れは、POSからオーダー数とロスのデータを弊社の販売管理システムに入れると、インフォマートのシステム上でロスや在庫データを元に発注数量を試算します。

その後、弊社のサーバーに発注データをアップロードしてもらえば、発注先から配送されるという流れです。とてもシンプルですが、こうしたデータの活用の効果はかなり大きいと感じています。

まずお客様満足度があがります。ピーク時に忙しそうな職人にオーダーできないストレスがタブレット注文により一切なくなりました。ロスの低下もあります。作り間違えやお客様のオーダーミスが多少ありますが、理論上はゼロです。

また、オペレーションコストも、ホールでは下げ膳とレジ業務のみに削減。厨房では調理に専念できるようになりました。

大きな変化はとても怖いことですし、躊躇してしまいますが、それ自体は一瞬だったり、一過性のもの。まずは、お店としてなりたい姿を明確に持って、やってみることが大切ではないかと私たちは考えています」

外食向けのDXサービスで、変わる飲食業

いま世の中には外食企業向けのDXサービスが数多くある。各社の取り組みの例を紹介したとおり、今ある顧客データの活用や、営業力を強化するための店舗のヘルススコアの見える化など、すでに多くの企業が活用し、一定の効果を上げていることも事実だろう。

ピンチの時を自らの変化の時と捉え、ぜひ自社の経営や運営に合った取り組みを考え、できるところから始めていっていただきたい。


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