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テイクアウトの売れ残りを売上に。食品ロス対策アプリが飲食店と客をむすぶ

2020年08月17日

テイクアウトの売れ残りを売上に。食品ロス対策アプリが飲食店と客をむすぶ

飲食業の経費で多くの割合を占める食材費。過剰に仕入れて期限切れにしたり、歩留まりが多かったり売れ残ったりすると、ロスとなって利益を圧迫してしまう。 また、本来は食べられるはずのものを捨ててしまう「食品ロス」は世界的な環境問題として、消費者の関心も高まっている。無頓着な事業者は社会に問題意識がないと見なされ、顧客や従業員からマイナスのイメージを抱かれかねない。

食品ロスの削減には仕入れや調理工程の改善が求められるが、廃棄するのではなく売上にするという発想の転換もある。まだ美味しく食べられる料理をアプリで告知して売上に変える、株式会社コークッキングの取り組みとともに飲食店の食品ロス対策を考える。

食品ロス対策をする飲食店は、顧客と信頼が生まれる

売れ残りや食べ残し、期限切れの食材など、飲食店では日々食品ロスが生まれている。本来なら売上になるはずだったのにムダにすると、不必要な経費が発生し利益を圧迫することになる。

また、食品ロス削減は国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられ、日本でも2019年10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行されるなど、社会問題として注目されている。もはや食品ロスに何の対策もとっていない飲食店は、感度の高い顧客にとっては問題意識が低く魅力のない店として選択肢から外れてしまう時代だ。

逆の言い方をすると、食品ロス削減に取り組めば損失を抑えられるだけでなく、店舗の信頼性が高まり新たな顧客を呼び込める可能性もある。

確実な在庫管理と調理工程の見直しでロスを削減

飲食店が食品ロスを削減するには、まず日頃どれだけのロスが発生しているかを可視化する必要がある。過剰な仕入れを行っていないか、使用期限が近い食材がないか、定期的な棚卸で確認しておきたい。確実な在庫管理は、従業員の食材持ち帰りなどの不正を抑止する効果もある。日次で実原価と理論原価の差異を把握して過剰なロスの早期発見につなげるなら、ITツールによる発注管理が有効だ。相場変動が激しい生鮮品の単価も自動的に更新され、棚卸が効率的に行える利点もある。

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また、スタッフによって決まった使用量を守らずオーバーポーションで提供していたり、歩留まりが予想より悪かったりと、調理の過程でもロスは発生する。

使用する食材の規定量を定めた調理マニュアルを作り、手順を守らなければならない理由とともに、従業員に徹底させておきたい。調理工程を本部が一元管理し、メニューごとの原価率が自動で算出できるシステムもある。

それでも、客数予想の読み間違えで過剰に仕込んで余らせてしまう場合もあるだろう。特に、コロナ禍で新たにはじめたテイクアウトやデリバリーなど、慣れない総菜・弁当類の販売は試行錯誤だ。そんな企業向けに、まだ美味しく食べることができるのに廃棄せざるをえない商品を再利用して売上につなげるサービスも登場している。

食品ロスを売上につなげるアプリ「TABETE」の試み

フードシェアリングサービスのひとつ「TABETE(タべテ)」は、飲食店で廃棄の危機にある料理を消費者に告知し、販売につなげるアプリだ。店舗側は余剰分の商品の価格と引取期限をアプリ上に掲載。ユーザーは位置情報で近くの店の商品を探し、Web決済で購入して引き取りにいく。

2018年のサービス開始以来約30万人が利用している。ユーザーの約7割が女性でそのうち半数が30~40代の働く女性だという。登録店舗数は約1300店舗、これまで累計4万7千食以上の余剰食品を売上に変えている。

TABETEアプリの店舗一覧画面・店舗詳細画面

TABETEアプリの店舗一覧画面・店舗詳細画面

「TABETE」を提供している株式会社コークッキング取締役COO 篠田沙織氏によると、ユーザーは食品ロスといった環境問題に関心が高い特徴があるという。

「ユーザーにとってTABETEは、1品からお得に購入しつつ社会貢献できるメリットがあります。店舗側が掲示する出品理由を読んで、応援したいと思えばそこから絆が生まれます。最近は新型コロナウイルスの影響を受けた飲食店の申込も急増し、支援として購入されるユーザーも多くなっています」

これまではターミナル周辺の立地の店舗がよく購入されていた。だが、新型コロナウイルスの影響により自宅で過ごす人が増え、住宅街エリアの店舗も有利になっているという。

「店舗側の利用方法はさまざまで、最も多いのがランチ営業のロスを夜に売るケースです。よく売れる時間帯は、仕事帰りの女性が立ち寄るのにちょうどよい17時~20時で、売れ筋も丼モノなどの一品料理や弁当類ですね。コロナ禍でテイクアウトを始めた飲食店が、リスクヘッジとして出品する例や、試作品のトライアルに利用する店舗もあります」

飲食店がTABETEを利用する場合、初期費用や導入費用、出品料などは一切かからず、無料で始められる。料金体系は1食あたり手数料150円の完全成功報酬型だ。また、販売価格は250~680円の下限と上限が設けられている。あまりにも高値にして「ロス商品なのに高い」とユーザーが感じてしまうのを防ぐためという。あくまで食品ロスの商品として価格にあった量に調節したり、端材を使いまかないのようなメニューにしてバランスをとるといった店舗も多いようだ。

「食品ロスになりそうなテイクアウト商品をお得に買うことがコミュニケーションとなり、これまで獲得できていなかった客層を新たにイートインに誘導するお店もあります。ユーザーはお気に入りの店を登録して、出品があればプッシュ通知を受けられます。コンスタントに出品している店舗はお気に入り登録数を伸ばしてファンを獲得しているようです」

食品ロス対策を売上獲得のビジネスモデルにするために

2020年8月時点で、新型コロナウイルス感染の拡大で、東京都が居酒屋などに再び営業時間短縮を要請するなど、依然外食産業は苦しい状況にある。一方で、消費者も長引く自粛生活による抑圧の反動で、飲食店とのつながりを求めている。

新たな時代に求められるのは、ただ安い、流行の業態といった飲食店ではない。経営に確固とした理念があり、消費者が応援に値すると認識できる店舗だけが生き残っていくだろう。

「TABETEをリリースした2018年ごろは、“ロスを出すのは経営が甘いからだ”“売れ残りとして掲載するのは恥だ”という考え方もありました。しかし、社会的にも意識の変容がみられ、最近では食品ロスに対して何も対策していない方が心配だと考える経営者も増えています。特に大手法人ほどCSR(社会的責任)としてSDGsへの意識を持った取り組みを行うようになりました。

企業の規模に関係なく、食品ロスに取り組んでいるという姿勢を見せることはブランドイメージの向上にもつながります。ロス削減の取り組みに、仕入れを抑える、見直すといった手段に加え、廃棄するのではなく売上にする発想の転換を持っていただきたいです。

TABETEも今後、登録店舗のエリアを全国に拡大していきますし、新規事業として農家など生産者のレスキューにも取り組んでいく予定です。常に食の2次流通をテーマに中食・外食のロスを解決しながら、捨てられていたものが売上につながる市場をつくっていきたいです」


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株式会社コークッキング

お話:取締役COO(TABETE事業部)篠田沙織氏
小学校2年生で白血病になり、食事制限を受けた経験から、食の重要性について身をもって実感。そこから人生を「食」に捧げると決意。新卒で大手グルメサイトに入社後、飲食店営業並びにwebディレクターを経験。ビジネス側とプロダクト側の両面からサービスの運営を経験する。その後、TABETEにジョイン、取締役COOに就任。現在は「TABETE」の心臓として、営業企画からマーケティングまで幅広く活躍している。
公式サイト:https://www.cocooking.co.jp/

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