業界動向
2020年04月20日
新型コロナウイルスの感染防止に向けて、2020年4月16日に緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大した。すでに対象地域となっている東京都では営業を取りやめる飲食店が続出し、4月の既存店売上が1割を切るような事態も多く発生している。
感染症や補助金・助成金などの情報は日毎に目まぐるしく変化しており、現時点で助成金や補助金はいつどれくらい振り込まれるかはっきりしない。
外食上場・中堅企業への豊富なコンサルティング実績をもつ株式会社タナベ経営の食品・フードサービスコンサルティングチームは、「あくまで助成金や補助金は後で入金されたらプラスのバッファにする程度にしておき、満額そのままを資金繰りに算入するべきではない」と指摘。多店舗展開する外食企業の、補償頼みにならない傾いた経営の再建メソッドを解説する。
2020年4月20日現在、国や都道府県知事との間で、緊急事態宣言の内容や休業要請の対象業種そして補償に至るまで足並みがそろっているとは言い難い。この混乱は今後も続くだろう。
このような場合、国や第三者をあてにするより、飲食店経営者は自分たちでコントロールできる行動にフォーカスすべきだ。金融機関との交渉やテナントオーナーとの家賃交渉も、自ら行動を起こすことが必要なのだ。つまり自助努力である。
では具体的に、どういった工夫が考えられるだろうか。タナベ経営のクライアント企業の取組の例をあげると、
・テイクアウトの取り扱いスタート(酒販免許取得検討も含む)
・宅配への対応 店舗の味をそのままご家庭で味わえるD2C※商品の開発
※Direct to Consumer:消費者に商品を直接販売すること
・新規メニュー開発
・高単価居酒屋業態からより日常の食への業態開発
などが挙げられる。市中の様子からも、こうした取り組みはすでにかなりの飲食店が行っているように見受けられる。ただ、多くの店舗は外出自粛が求められる中、大きな売上にはならないとわかっていても顧客関係をつなぐためにテイクアウトに取り組んでいる。単純に「他店よりも美味しい弁当を作ろう」などと考えても従来の商品開発と何一つ変わらず、業績を変えることは難しいだろう。
このような潮目が変わるときには、経営のやり方を変えるのが原理原則である。タナベ経営では、長年にわたる外食企業へのコンサルティングを通じて赤字飲食店再建のメソッドを型決めしている。
何か魔法のようなメニューがあってそれを導入するのではない。要点は正しい現状分析をもとに赤字の真因を掴み、スピード感のある確実な手立てを実行してゆくもので、8つのステップにわかれる。新型コロナウイルスの影響で運営を大きく変えねばならない現状でポイントとなるのは、「コンセプトの再定義とメニュー・価格・サービスをすべて見直す」(ステップ7)だ。
参考:タナベ経営 赤字飲食店再建の8ステップ
ステップ | 支援内容 |
---|---|
STEP1 |
正しい現状認識の実施で赤字の正体をつかみ、 撤退シミュレーションを行った上で期限を設定する |
STEP2 |
責任者候補の全員と面談し、担当人材を選ぶ |
STEP3 |
再建計画は責任者を交えて作成し、経営陣と合意する |
STEP4 |
キックオフミーティングを全員で行う |
STEP5 |
現場でPDCAを、本部はCAHFを回し、水平展開する |
STEP6 |
小さな成功を早期に体験させる |
STEP7 |
現場の障害になっているものを半年以内に改善していく 並行してコンセプトを再定義し、メニュー・価格・サービスを すべて見直す |
STEP8 |
惰性に気を付け、3カ月ごとに業績監査を実施する |
まず、前提とすべき重要な認識は、店舗型ビジネスとは、いわゆるメーカーの営業と違って日次決算であるという点だ。もと言えば1時間ごとの売上をいかに変化させていくかである。
例えばコンサルタントに依頼し、どんなに現状を分析して、よい「新コンセプト」をつくったとしても、その効果を得るまでに時間をかけすぎてはその間に環境が変化する。せっかくの分厚い報告書もただ重いだけのファイルになってしまう。
経営の立て直しには現状認識と並行して、手元のキャッシュを最大化させるために現状で分かる範囲内での最適化が必要だ。
ポイントとしてメニューや営業時間帯を限定する、運営スタッフを最小化するという工夫はもちろんだ。この時のルールは、「理論的に6割がた正しいものはすべて手を打つこと=Try All!」である。うまくいっていないにも関わらず、漫然と変化しない日々を繰り返している余裕がないのは言うまでもない。
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