食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2020年03月24日
「ポリフェノールは体によい」とよく聞く。だが、ポリフェノールとはいったいどんな物質で、どんな効果があるのだろうか。
コーヒーにもポリフェノールが含まれている。かつては、コーヒーの飲み過ぎは体に悪いとか、がんになるといわれていたのに、近ごろは「コーヒーは体によい」というのだから、時代が変われば考え方も変わるものだ。
思えば、これまで数々の食べもののポリフェノールが体によいと話題になってきた。赤ワイン、ココア、緑茶、ウーロン茶などの飲料に、チョコレートやゴマなどの食品。それにタマネギやブロッコリーなどの野菜、リンゴやブルーベリーなどの果物。挙げるときりがない。
ここに挙げた食品に共通なのは、「植物もしくは植物が材料である」ということだ。多くの植物は、さまざまな種類のポリフェノールを合成する。科学者にとってその生理機能は興味深く、古くから研究されてきた。
しかし、食品の成分としてはポリフェノールはあまり好ましいものではなかった。たとえば、緑茶の渋みはポリフェノールによるものだが渋すぎは避けられたし、リンゴのポリフェノールは、果肉を茶色に変化させる。
それが、1990年代に赤ワインに含まれるポリフェノールの動脈硬化予防の可能性が知られると、以降さまざまな食品のポリフェノールの健康機能が注目されるようになった。それとともに、健康によい成分として広く認識されるようになったのである。
そもそもポリフェノールとは何なのだろうか。
「ポリフェノール」とは「たくさんのフェノール」という意味だ。少し難しいかもしれないが、ベンゼン環などの芳香環にヒドロキシ基(-OH)が結合した化合物を「フェノール」といい、2つ以上のヒドロキシ基が結合した化合物を「ポリフェノール」という。
お茶に含まれるカテキンやタンニン、ブルーベリーのアントシアニン、蕎麦のルチン、大豆のイソフラボンのように、個々の成分名で出されることもある。紛らわしいが、これらはみな構造からポリフェノールに分類される。種類は多く、すでに1万種以上が見つかっている。
動けない植物にとって、ポリフェノールは紫外線や害虫などの外敵から身を守る大事な物質であると考えられている。タンニンの渋味は虫や動物に食べられないようにするため、アントシアニンは紫外線をブロックするためと、植物によって種類や機能はさまざまである。
以下で経緯を追うが、その機能がヒトにとっては有益ではないかと考えられるようになったのだ。これまで、漢方薬や民間療法などで利用してきた植物の有効成分としてポリフェノールの研究が進んでいる。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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