食の研究所

意外な要素、「重さ」が食べ物の味を左右していた~食器の重さも影響する人間の感覚の不思議~

漆原 次郎(フリーランス記者)  2020年01月24日

「食べる」という作業では、食べものを見て、においを嗅いで、味を感じて、舌触りを覚えてといったように、いくつもの種類の感覚が関わる。そして、これらの感覚は互いに影響を及ぼしあっているという。これは「クロスモダリティ現象」とよばれている。

刺激を複数の感覚器が同時に受けるとき、どちらかの感覚が優先され、その優先されたほうの感覚が、脳に貯められている記憶などと結びついて、実際とは異なる感じ方をもたらす場合があるのだ。

「重要さ」と「重さ」に関わりあり

21世紀に発展してきた企業マーケティングの1つに「感覚マーケティング」がある。マーケティング研究者のアラドナ・クリシュナによると、「消費者の感覚に強く影響を与え、消費者の知覚、判断、行動に影響を与えるマーケティング」のことを指す。

従来から、企業は商品の特長を「五感に訴える」ことをしてきたが、感覚マーケティングでは、単純な因果関係でなく、複数の感覚が関わる関係性を探ったり、消費者行動とは無関係に思えるような刺激にも目をつけたりするという。「重要であること」と「重さがあること」は、深く関わっているのだ。

食品を対象とした研究ではないが、物理的な重さを伴う広告写真を提示された人は、その広告内容の記憶想起が高まったり、その広告製品への信頼性を高く知覚したりするといった実験結果も、千葉商科大学と成蹊大学の研究チームにより報告されている*4

風味そのもののよさを追求してその成果を料理として提供することだけでなく、食を体験する環境要因もまた大切であることを、こうした「重さ」をめぐる研究は伝えてくれる。

*1:Betina Piqueras-Fiszman, Charles Spence “The Weight of the container influences expected satiety, perceived density, and subsequent expected fullness.”Appetite58(2) 559-562 (2012)
*2:Vanessa Harrar, Charles Spence “The taste of cutlery: how the taste of food is affected by the weight, size, shape, and colour of the cutlery used to eat it.” Flavour2, 21 (2013)
*3:廣瀬雅治、岩崎花梨、野尻梢、武田港、杉浦裕太、稲見昌彦 「おもみ調味料グラビトミン酸:食材のバーチャルな重さの制御を利用した知覚変化システム」 日本バーチャルリアリティ学会論文誌 19(4) 541-550 (2014)
*4:外川拓、石井裕明、朴宰佑 「『硬さ』『重さ』の感覚と消費者の意思決定─身体化認知理論に基づく考察─」 マーケティングジャーナル35(4) 72-89. (2016)

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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