食の研究所

意外な要素、「重さ」が食べ物の味を左右していた~食器の重さも影響する人間の感覚の不思議~

漆原 次郎(フリーランス記者)  2020年01月24日

スプーンの実験では反対の結果に

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重さのないスプーンやフォークで食べたときの
食べものの味は、どう感じられるだろうか
(画像はイメージ)。

「重さ」と「濃さ」に正の相関性を感じられなくもない。ところが、一筋縄ではいかないことを思わせる結果が、別の研究チームにより2013年に発表された*2

英国のバネッサ・ハーラーとチャールズ・スペンスの研究チームは、上記のヨーグルト・ボウル実験と似た内容の実験を、ボウルでなくスプーンの重さを変えて行った。ティースプーン大のプラスチック製スプーンで2.35gのものと6.57gのもの、また、ひとまわり大きいテーブルスプーン大のプラスチック製スプーンで3.73gのものと10.84gのものなどを用意し、被験者たちにヨーグルトを食べてもらった。ちなみに、1gは1円玉1枚の重さに等しい。

重いスプーンで食べたときと軽いスプーンで食べたときで、感じ方にどのような違いが生じただろうか。

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重さの違うスプーンで食べたときの、知覚された
ヨーグルトの「濃さ」。軽いほうのスプーンで
食べたときのほうが「濃さ」の値は高くなった。
(出所:*2のグラフをもとに筆者作成)

結果は、上記のヨーグルト・ボウル実験とは反対のものとなった。軽いほうのスプーンで食べたときのほうが「濃さ」の度合いが高くなったのである。また、「高価さ」の度合いも、軽いほうのスプーンで食べたときのほうが高くなった。

一見、ヨーグルト・ボウル実験と相容れないような結果にも思える。この研究を伝える記事によると、スプーン実験を行った研究者たちは、プラスチック製スプーンはもともと軽いものであるため、重いスプーンは予想と対立するものであり、その精神的不連続性が食べものの味覚そのものに影響したと見ているという。

あなたは、重いカトラリーで食べるときと、軽いカトラリーで食べるとき、どのような感覚を抱くだろうか。

“おもみ調味料”でチョコの量が増えた感覚に

日本でも、食器に仕掛けをして、知覚される「重さ」を制御することにより、いつもと違った味わいを制御するといった試みがされている。

2014年、慶應義塾大学の研究室から「グラビトミン酸」とよぶ“おもみ調味料”のシステムが生まれた3。このシステムは、バーチャルな重さを提示するタイミングを決める調味料入れと、重心を制御するしくみを把持部に実装したフォークという2つのインターフェイスから構成される。把持部の内部にある重りが移動することで、手に持ったときに知覚する重みを変化させることができる。

被験者は、バーチャルな重さが加わっていない状態と、加わっている状態でフォークを使い、チョコシューに詰まっているチョコレート量の知覚を評価した。すると、バーチャルな重さがあると、被験者はチョコシューの中のチョコの量が増えたように知覚するという結果が得られたという。ただし、バーチャルな重さが最大のときは、被験者はチョコの量が多いとは感じられなかったともいう。研究者たちは、被験者が重さの提示に気づいてしまったことが原因と考察している。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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