食の研究所

意外な要素、「重さ」が食べ物の味を左右していた~食器の重さも影響する人間の感覚の不思議~

漆原 次郎(フリーランス記者)  2020年01月24日

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食べているものについて、良い印象を抱くか抱かないかは、どう決まるのだろう。風味が自分の嗜好に向いているか。温度は適しているか。そのとき空腹か。これらは重要だろう。

では、「重いか」はどうだろうか。意外なほど、この「重いか」という尺度も、食べものへの印象に影響するという。「重い」といっても「脂っこい」などの味のことではない。物理的な「重量」のことだ。

食器が「重い」と、味が「濃く」感じる

料理を、同じ量、同じ盛りつけで、同じ形をした2つの食器に分けて出されたとしよう。ただし、食器の重さだけは違っていて、1つは重く、もう1つは軽い。この2つの食器をそれぞれ手にして料理を食べたとき、あなたはどう感じるだろうか。

「料理の内容はまったく同じなのだから、食べたときの感じ方は同じになる」というのは予想される1つの答えだ。だが、食器の重さが異なることで、その料理の「濃さ」の感じ方が変わってくるかもしれない。

2012年、スペインのベニータ・ピケーラス-フィズマンと米国のチャールズ・スペンスのチームは、「容器の重さは期待される満腹感、知覚される濃さ、そして後の満足感に影響する」といった主題の論文を発表した*1

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重さの違うボウルでヨーグルトを食べたときの、
ヨーグルトの「濃さ」の評価。重いほうの
ボウルを持って食べたときのほうが
「濃さ」の値は高くなった。評価には、
「まったくそうでない」から「完全にそう」を
両端とする10cm長の視覚的アナログスケールが
使われた。(出所:*1のグラフをもとに筆者作成)

この研究の実験で研究チームは、25g75gという重さだけが違うボウルを用意し、同じヨーグルト製品を同じ量だけ入れた。そして、約半数の被験者たちにはまず軽いほうのボウルを片手に持ってもらい、残りの約半数の被験者たちには重いほうのボウルを片手に持ってもらった。そして、ヨーグルトを食べてもらう。

食べ終えたら、今度は軽いボウルで食べていた被験者たちには重いボウルで、重いボウルで食べていた被験者たちには軽いボウルで、同じ量のヨーグルトを食べてもらう。そして、食べたヨーグルトの「濃さ」について10段階で評価してもらった。

すると、重い皿で食べたときのヨーグルトは、軽い皿で食べたときのヨーグルトより、有意に「濃い」と感じられたという。まったく同一のヨーグルトであるにもかかわらずだ。容器の重さという要素が、ヨーグルトの「濃さ」という味の要素に影響を与えたものととれる。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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