食の研究所

科学が進んだ未来、人の食生活はどうなっているのか 『「食べること」の進化史』で食の未来を予想する

漆原 次郎(フリーランス記者)  2019年07月22日

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世界ではすでに1900種類以上の昆虫が
伝統的に食べられているという。

こうした状況の中、今後、人類にとっての新たな日常的食材は生まれるだろうか。本書で取り上げているのが「昆虫」だ。資源として得る上で効率性が高く、栄養面でも高タンパク。2013年には、国連食糧農業機関(FAO)が、動物性タンパク質の代替食品として推奨した。海外ではレシピ本も出始めたという。

では、昆虫がいまより数段、ヒトが頼りにする食材になる日はくるだろうか。その必要性があるかが大きな鍵となりそうだが、筆者(私)にはやや疑念がある。

『成長の限界』を共著書にもつヨルゲン・ランダースの予測では、食糧生産量の増加により、少なくとも2052年までは食糧は十分あるという。また、本書では直接的に触れていないが、ゲノム編集技術の台頭で、ヒトがよく食べてきた食肉や魚類などの個体を大きくすることは可能となろう。昆虫食が必要に迫られる状況は限定的ではないか。

著者も「未来の食材としてある程度生産・消費されるには、何らかの仕掛けが必要」と述べている。

3Dフードプリンターと個人データで「個別化食」が進みそう

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3Dフードプリンターは未来の主力「調理器具」と
なるだろうか。
(写真提供:www.hollandfoto.net / Shutterstock.com)

人類史の過去における調理器具といえば、火を用いて加熱するための鍋などの道具が挙げられる。エネルギー摂取の効率性を高めた点で貢献してきた。調理器具にはどのような進歩があるだろうか。テクノロジーの進み方には、突然変異的な要素も多分に含まれるため予想は難しいだろうが、それでも著者はテクノロジーの現況から敷衍(ふえん)して、未来の調理器具を描く。

本書で大きく取り上げているのが、「3Dフードプリンター」だ。インクカートリッジにタンパク質や脂肪などをセットし、3次元に“プリントアウト”することで「誰でもどこでも作ることができる」。単独で使うのではなく、利用者の健康状態や嗜好などの個人データと組み合わせれば、3Dフードプリンターの技術を中心に、個人に最適な食をもたらす「個別化食」への潮流も強まってこよう。

より筆者(私)が興味を持ったのが「録食」の実現化についてだ。録音や録画するように、録食する。料理の見た目、味や香りの成分、構造などの情報を「料理スキャナー」で取り込んだり、人間による調理をロボットやマシンが再現できるようになれば、レシピよりも詳細に料理を後世に遺すことができる。

すでに英国で「モリー」という自動調理キッチン(ロボット)が開発されている。録食が普及するかどうかも、社会がどこまでそれを必要とするかによるだろう。技術的には遠い未来の話ではない。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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