企業インタビュー
2017年02月06日
大阪で2003年に開業以来、地元でもさらにローカルフードに分類される「油かす」を使ったメニューが話題を呼んでいる「龍の巣」。この油かすを作り出すため、牛一頭分のホルモンを丸ごと購入し、店で切り分けしている。切り分けられた様々な部位はバラエティ豊かなホルモン焼きとしても提供され、こちらも看板メニューの一翼を担っている。
ホルモン焼きは、鮮度と値ごろ感が命。そのため徹底した仕入れ管理やムダを生まない厳しい食材管理を行っているという。今回は「龍の巣」の運営元である有限会社龍ノ巣、代表取締役社長の畑博貴さんに、同社の取り組みについてお話を伺った。
「油かす」が具材として使われているかすうどんは、もともと大阪でも南大阪限定で食べられている地元めしだった。少し離れた大阪市内でも目にすることは珍しく、畑社長がかすうどんとの出会ったのは、偶然によるものだったという。
有限会社龍ノ巣
代表取締役 畑博貴氏
「たまたま友人から油かすを使った『かすうどん』が旨いと聞いて、食べに行きました。その美味しさに感動し、『これを、ぜひ大阪市内で販売したい』と、そのままの勢いで、かすうどん屋を開業したのです。しかし開業してすぐに課題が出てきました。『かすうどん』の味の決め手となる油かす、この品質が安定しませんでした」(畑社長、以下同)
当時の「油かす」は、脂(ラード)を採る目的で牛の小腸を揚げ煮した時に生まれてくる、単なる副産物だった。専用に調理されていないため、揚げムラやコゲなどが多く、味が安定しなかったという。
自家製油かすを使った「かすうどん」
「今後、かすうどんを中心にした業態を伸ばすためには、まず、油かすの味や品質を向上させる必要がありました。そこで油かすを、専門に作るための工場を作ったのです」
製造した油かすは、いまや自社への安定的な供給だけでなく、他社へも販売されており、同社の中心的な事業のひとつになっている。
「龍の巣」は大阪に5店舗、奈良に1店舗、博多に3店舗、そして2016年には東京初進出を果たし、各地で行列を生んでいる。人気の秘訣は、名物のかすうどんの他、ホルモン焼きや、油かすを用いたオリジナルのかすもつ鍋など、肉の鮮度を活かしたメニューにある。
「週1回、ホルモンをまとめて仕入れ、切り分けて各店に配送します。しかし地域や日によっても人気のメニューが変わるため、徐々に店舗ごとに在庫の偏りが出てきます。
ホルモンは鮮度が大切ですから、在庫の多い部位を瞬時に見極め、店舗間で入れ替えるといった素早い調整が必要です。しかし以前は、店舗間の食材の出庫・入庫などを全て手書きで管理していたため、食材の振替に時間が掛かっていました」
この課題を解決したのは食材管理のシステム化だという。同社が導入しているのは「BtoBプラットフォーム受発注」。食材の情報がオンライン上でデータ化され、出庫・入庫がリアルタイムで分かるようになった。
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